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心不全の病態

心不全とは?

心不全は、疾患名と言うよりも、原因疾患を起因として心臓の働きが著しく低下した状態をいう。
そのため、心不全に至るまでには、必ず原因疾患がある。

心臓のポンプ機能

心不全の病態を理解するためには、心臓の働きをきちんと理解することがポイントとなるので、まずは心臓の働きを詳しく見ていく。

心臓は、全身に血液を送り出すポンプとして働いて、生命活動に必要なエネルギーを供給している。
このポンプの1回拍出量は約70mlなので、心拍数が70回/分とすると1分間の心拍出量は4900mlとなる。成人では4L~8Lの心拍出量があるとされている。

ちなみに心拍数が70回/分とすると、1日で100,800回心臓は収縮していて、約7,500Lの血液を送りだしているのだから、心臓は相当な運動量なのがわかる。

心拍出量は何で決まり、何で変化するのか?

心拍出量を左右するのは、前負荷・収縮力・後負荷・心拍数の4つで、これらに異常があると心拍出量が低下する。
前負荷・収縮力・後負荷・心拍数は心不全の病態や治療方法、薬剤の作用を知るために、とても重要となるのでまずこの4つについて詳しく見ていく。

1、前負荷

前負荷とは、難しい言葉では『拡張終期圧』といい、心室が拡張したときに心臓にかかる圧のこと。これは、『心臓に入ってくる血液量』で決まるので、『前負荷=心臓に入ってくる血液量』と考えられる。

前負荷

心臓に入ってくる血液量(前負荷)が多すぎても、心臓はその分収縮力を大きくして血液を送り出すよう働くので、心臓に負荷がかかるし、また前負荷が少なすぎる場合も、心拍数を増やして出来るだけ血液を拍出しようと心臓は働くため負荷がかかってしまう。

そのため、適度な前負荷を維持するために、前負荷が大きいときには、利尿剤で血液を体外に出すか、血管拡張薬(硝酸薬)を使って、末梢に分布する血液量を増やすことで、前負荷を小さくする。
一方で、脱水や出血で前負荷が小さくなった場合には、前負荷を増やすために輸液や輸血を行う。

2、心臓の収縮力

心臓の収縮力は、前負荷で少し説明したように、心臓に入ってくる血液量が多くなると、その分心臓は血液をたくさん拍出するため、収縮力を大きくするように働く潜在能力がある。しかし、心機能が低下すると、例え心臓に入ってくる血液量が増えても、この潜在能力をあまり発揮できないため、心拍出量は増加しない。
これをスターリングの法則と言い、下の図であらわされる。

スターリングの法則

3、後負荷

後負荷とは、末梢血管抵抗により心筋にかかる圧負荷のこと。
ピンと来ない人が多いと思うので心臓をポンプ、血管をホースとして考えてみる。ポンプである心臓は、血液を送り出すホースが細くなると血液を送り出しづらくなるし、ホースが太くなると、血液を送り出しやすい状態となる。

このホースが細くなる状態というのは、具体的には動脈硬化や血管収縮薬を使用した場合で、心臓はいつも通りの収縮しても、末梢血管抵抗が強く、いつも通りの血液を拍出できないため、この抵抗に打ち勝つ力で収縮しなければならず、心臓の負荷が増大する。

後負荷

4、心拍数

前負荷・後負荷・収縮力に異常がなくても、SSS(洞不全症候群)を代表するように、電気刺激系の異常により、過度な徐脈になると必然的に心拍出量は低下する。

急性心不全と慢性心不全

急性心不全

急激に心機能が低下した状態。
代償機能が働かないため、全身への血液灌流ができずさまざまな徴候が出現する。急性心不全を引き起こす疾患としては、心筋梗塞や心タンポナーデ、大動脈解離などが上げられる。

慢性心不全

高血圧などの慢性の心疾患により、徐々に心臓に負荷がかかり、代償機能は働くものの、それではまかない切れずに心臓のポンプ機能が低下した状態。

心不全の症状

心臓は肺循環を担う右心系と、体循環を担う左心系があり、それぞれの機能が障害されることで心不全の症状が現れる。
右心不全の症状、左心不全の症状として分けて考えると、症状が出現する理由がわかりやすいので、分けてそれぞれを症状を見てみるが、右心不全・左心不全単独で現れることは少なく、たいていは合併している。

右心不全の症状

右心不全

右心機能が低下すると、右室の収縮力が低下するため右心室から肺へ送られる血液が減少する。そうすると、血液をためている右心房の圧が上昇し、中心静脈の血液もうっ滞するため、中心静脈圧が上昇する。
中心静脈圧が上昇するということは、全身の静脈も心臓に戻りづらくなるため、全身の静脈圧も上昇し、体循環にうっ血を来たした状態となる。
体循環にうっ血を来たすと、主に次の症状が現れる。

頸静脈の怒張
中心静脈圧上昇による
肝胆道系酵素の上昇、肝肥大
下大静脈のうっ滞によって、肝臓の血液がうまく流れないため
右季肋部痛
肝肥大により、肝臓の表面を多く被膜が伸展するために生じる痛み
浮腫・腹部膨満(腹水)・体重増加
静脈圧上昇により、血管外へ水分が漏れだすため
悪心・嘔吐
消化管うっ血による

左心不全の症状

左心不全

左心機能が低下すると、左室から全身に送られる心拍出量が低下する。そうすると、左心房に貯められた血液がうまく送り出せなくなるため、左心房圧が上昇し、肺から左心房に入る血液がうっ滞して肺静脈圧が上昇する。
肺の血液もうまく送り出せなくなり、肺うっ血から肺水腫を来たすと、右心系から肺へ戻るはずの血液も戻りづらくなるため、右心不全を合併する。
左心不全で、問題となるのが、心拍出量の低下と肺水腫で、これらによって次の症状が出現する。

低血圧・頻脈、冷汗、チアノーゼ、意識障害
循環血液量減少によるショック症状
乏尿
腎虚血による
呼吸困難、頻呼吸、喘鳴・咳
肺水腫による
起坐呼吸
座位の方が、静脈還流量(心臓に戻ってくる静脈のことで、前負荷を指す)が減るため肺うっ血が軽減し、呼吸がしやすい。
夜間呼吸困難
仰臥位になることで、静脈還流量が増える他、入眠による交感神経刺激の減少により心機能・呼吸中枢が抑制され、入眠後2~3時間で突然苦しくなる症状。

心機能低下時の代償機能

慢性腎不全と急性腎不全のところで、少し触れた代償機能について。
心臓に負荷がかかったり、心拍出量が減ったりすると、体はそれを感知して、そのままじゃいけない!と何らかの対策をとる。これを代償機能という。
急性心不全では、突然のことで代償機能は働かないのだが、高血圧などで、慢性的に心臓に負担がかかっている時には、心臓や腎臓が心機能を保とうとして働く。

心臓自らの対策

心臓に負荷が加わると、自分の仕事を楽にするために
①利尿効果を高めて前負荷を減らす作用と、②血管を広げて後負荷を減らす作用のあるホルモンを、自ら放出する。

このホルモンは、心房から放出される心房ナトリウム利尿ホルモン(hANP)と、心室から放出される脳性ナトリウム利尿ホルモン(BNP)がある。

BNPは心室に存在し、心室の機能が低下する心不全で分泌されるため、心不全の指標の値となる。

腎臓の対策

腎臓は、普段から血液量を調整している大事な臓器。
そのため、心拍出量が減少すると、糸球体細胞が腎血流の減少を感知して、尿量を減らして血液をこれ以上外に出ないよう働く他、血管を収縮して血圧を上げようと働く。

この働きは、RAA系(レニン・アンジオテンシン系)と呼ばれるホルモンが行っている。RAA系の働きは、だいぶややこしいので、下の図から見てみる。

RAA系

血中には、アンギオテンシノーゲンという物質があり、腎臓の傍糸球体細胞というところが血圧の低下を感知すると、レニンというたんぱく質分解酵素が分泌される。このレニンは、アンギオテンシノーゲンをアンギオテンシンⅠに変えて、さらにアンギオテンシン変換酵素(ACE)がアンギオテンシンⅠからアンギオテンシンⅡに変換する。
アンギオテンシンⅡ自体、血管平滑筋を収縮させて血圧を上昇させる働きがあるのだが、他に副腎皮質からアルドステロンを分泌させる働きがある。
アルドステロンは、腎臓でのNa再吸収を促進させ、循環血液量を増やすため、このホルモンの働きでも、血圧が上昇する。

心臓と腎臓の思惑の違い

ここで、思い出して欲しいのが、心臓で行う代償機能。
心臓は、利尿を促し、血管を拡張させて、前負荷・後負荷を減らすよう働いているのに対し、腎臓は利尿を抑制し、血管を収縮して、前負荷と後負荷を増やそうとして、まったく逆の働きをしている。
心不全が進行すると、心臓への負担はお構いなしに、血圧の低下をなんとか補おうとするため、腎臓のRAA系の働きが有利となる。
しかし、そうすると心臓の負担はさらに大きくなり、RAA系は、心不全を増悪させる要因となる。そのため、心不全の時には、RAA系を抑制する薬がよく用いられる。

RAA系は、なんだか難しい働きなのだが、心不全や血圧の薬として、このRAA系に作用するものが多いので、アンギオテンシンやアンギオテンシン変換酵素(ACE)という言葉が出て来たら、腎臓に作用して血圧を調整するものであることは覚えておく。

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