深部静脈血栓症(DVT)の病態と予防

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深部静脈血栓症(DVT)とは?

深部静脈血栓症(DVT: Deep Vein Thromboss)は、足の奥深くに位置する深部静脈に血栓が形成される病態。

深部静脈は、表在静脈(採血する表面上の静脈)と違い、筋肉に取り囲まれており、筋ポンプの作用により血液は押し上げられて心臓に送られる。

深部静脈血栓症について
筋ポンプのイメージ

この病態で注意すべきなのは、足でできた血栓が肺の動脈に飛ぶと『肺血栓塞栓症(PTE)』を合併すること!!呼吸困難・胸痛・突然死を引き起こし、治療されない場合の致死率は30%程度に及ぶため、DVTは、予防と早期発見、早期治療が重要となる!

深部静脈血栓症の原因

血栓形成のリスクを高める3つの条件を『ウィルヒョウ(Virchow)の3徴』といい、深部静脈血栓症(DVT)の発症メカニズムを理解する上で重要となる。

1,血液の停滞

  • 長時間臥床
  • 旅行(長時間の飛行機)
  • 妊婦

2,静脈壁の障害

  • 手術(特に骨盤腔手術)
  • 外傷
  • 中心静脈カテーテル留置

3,血液凝固能の亢進

  • 妊娠
  • 脱水
  • 悪性腫瘍
  • 経口避妊薬を内服中
  • 膠原病など

深部静脈血栓症の症状

局所的な症状

患肢の腫脹熱感疼痛を認める。
皮膚色は、うっ血により、はじめは蒼白になり、血栓が広がると青紫色、さらに進行すると赤紫色になり、最悪の場合壊死する。

解剖的に、左下肢の静脈(左腸骨静脈)が、動脈(右腸骨動脈)と仙骨の間に挟まれて圧迫されやすい位置にあるため、DVTは左下肢に発生しやすい

ホーマンズ(Homans)徴候

ホーマンズ徴候

DVTに特徴的な検査所見で、膝を伸ばして足部を背屈させたときに腓腹部に疼痛が出現する症状。

肺血管塞栓症(PTE) による症状

  • 急激な呼吸困難(SPO2低下)
  • 頻脈(100回/分以上)
  • 胸痛
  • 血圧低下
  • 意識障害やめまい

深部静脈血栓症の検査

血液検査

Dダイマーが0.5㎍/ml以上になるとDVTや肺血栓塞栓症(PTE)が疑われる。Dダイマーは血栓が溶解するときの物質のひとつで、高値の場合、どこかに血栓があることを示唆する。

下肢静脈エコー

静脈壁は薄いためプローブを圧迫すると静脈はつぶれて、動脈のみがつぶれずに描出される。

しかし、DVTでは血栓があるため静脈がつぶれず、円形のまま描出される。

ちなみに、CVカテーテル挿入の時、Drがエコーを当てるのも、プローブで圧迫しながらつぶれる静脈と、圧迫してもつぶれない動脈を確認し、動脈に誤穿刺しないように位置を確認している。

造影CT

通常の造影CTと同じく、末梢ルートから造影剤を流し、下肢~骨盤にかけて撮影する。

血流のある血管は造影剤が流れて白く描出されるが、血栓がある部位は造影されないため、黒い影のように描出される。

深部静脈血栓症の治療

抗凝固療法

  • ワーファリン
  • ヘパリン
  • 経口抗凝固薬

などの抗凝固薬の投与は、特別な禁忌をみとめない限り全例で行う。
抗凝固療法を行わないと、30%で再発し、死亡率も上昇すると言われている。

通常、ヘパリン5000単位または80単位/㎏を静注後、持続静注が開始される。

血栓溶解療法

  • tーPA
  • ウロキナーゼ

以上の抗血小板薬を投与し、血栓を溶解する。しかし、消化管出血や脳出血のリスクがあり、広範囲なDVTであったり、バイタルが不安定な患者のみが適応となり、慎重に使用される。

使用する場合も、全身投与(静脈内投与)ではなく、カテーテルを使用して、血栓部に直接血栓溶解剤を注入する方法が推奨されている。

下大静脈フィルター

下大静脈フィルター

DVTから肺血栓塞栓症(PTE)の合併を予防するデバイスで、カテーテルを挿入して、下大静脈に留置される。

血栓が飛んだとしても、このフィルターでキャッチすることで、肺動脈まで運ばれるのを阻止することができる。

この治療は、出血リスクが高く抗凝固療法を行えない場合や可動性のある血栓に適応となる。

深部静脈血栓症の予防

早期離床

筋ポンプを働かせて静脈血のうっ滞を防ぐことが重要。

弾性ストッキングor 弾性包帯の装着

臥床状態の患者のDVTを予防するのに有用。

下肢の表在静脈を圧迫して、①深部静脈の血液を集めること、②静脈を圧迫し細くすることで血流を早くすることで、血栓形成を予防できる。

▶看護技術弾性ストッキングの目的と着用時の看護を詳しく見る。

フットポンプの使用

筋ポンプのわかりにフットポンプ機器で間欠的に下肢を圧迫し、静脈還流を促進する。

主に手術前~手術中から開始し、歩行可能となるまで継続する。

DVTが疑われる場合には、血栓を遊離させて肺血栓塞栓症を引き起こす危険があるため、使用を中止する!

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