骨粗鬆症
骨粗鬆症とは?
骨量が減少することで、骨の強度が低下し、骨折しやすくなっている状態のこと。
骨粗鬆症の原因と病態
骨代謝による骨量の増減
骨の成長が終わった成人でも、骨をつくる骨芽細胞による骨形成と、骨を壊す破骨細胞による骨吸収が常に行われている。
私たちの骨格を形成する骨は、この骨形成と骨吸収を繰り返す骨代謝により、古い骨から新しい骨へと生まれ変わり、強度を保つことができている。

しかし、加齢などにより骨代謝のバランスは崩れ始め、骨形成よりも骨吸収のほうが多くなると、骨量が徐々に減少して骨粗鬆症を引き起こす。
骨粗鬆症の原因
- 加齢
- 男女ともに60歳以降にはカルシウムの吸収が悪くなり、骨量が減少してくる。
60歳以上では2人に1人、70才以上では10人に7人が骨粗鬆症だと言われている。
- 閉経後
- 女性ホルモンのエストロゲンは、骨代謝のときに骨吸収を抑制する働きをする。そのため、閉経によりエストロゲンが減少すると、骨吸収が促され、骨量が減少する。
具体的には、閉経後20年で約20~30%骨量が減少し、50歳以上の3人に1人は骨粗鬆症と言われている。
早期閉経であれば、若くても骨折のリスクが高まる。
また、両側の卵巣摘出でも同様にエストロゲンが減少するため、骨粗鬆症が進みやすい。
- ステロイドの長期投与
- 加齢などの生理的変化だけではなく、疾患や薬の影響で骨粗鬆症を引き起こす可能性がある。
ステロイドは、骨形成を抑制して骨吸収を促進させる。また腸や腎臓でのカルシウム吸収を低下させることで、骨量の低下を引き起こす。
そのため、リウマチや膠原病などでステロイドを長期投与する場合には、骨粗鬆症(ステロイド性骨粗鬆症と言う)の予防のため薬物療法を行ったりする。
その他、骨粗鬆症の危険因子
糖尿病、動脈硬化、喫煙、運動不足、過度なダイエット、胃切除、遺伝的素因など
骨粗鬆症の症状
骨粗鬆症の診断
1、骨密度の測定
骨密度を測定する検査はいくつかあり、検査の特徴に合わせてさまざまな部位を測定できる。
骨密度の評価は、骨密度の値が若年成人の何%かを示す、「%YAM(YAM=Young Adult Mean)」で表される。
YAMが70%未満であれば、骨粗鬆症と診断される。
骨密度
正常 |
YAM80%以上 |
骨量減少 |
YAM70~80% |
骨粗鬆症 |
YAM70%未満 |
- DXA(デキサ)法
- 二重エネルギーX線吸収測定法(dual-energy X-ray absorptiometry)の略で、専用の骨密度測定装置で、2種類の微量X線を使用して撮影する。
この2種類のX線の透視率の差を利用することで、骨量を測定できる。
- 超音波
- 踵や脛に超音波を当てて骨密度を測定する。なぜ踵を使用するかというと、踵骨の骨量は骨粗鬆症の初期段階で低下することが多く、初期でも変化を捉えやすいため。
- MD(エムディ)法
- 両手の骨と厚さの異なるアルミニウム板と手を、同時にX線で撮影し、アルミニウムの濃度と比較することで骨密度を測定する。
精度はDXA(デキサ)法の方が高い。
- CT法
- 名前の通り、CTを使用して骨密度を測定する方法。全身の骨密度が測定可能で海綿骨と皮質骨を分けて測定することができる。
2、血液検査(骨代謝マーカー)
- TRACP-5b
- (骨型酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ)
骨吸収を反映する骨吸収マーカー。
破骨細胞に存在する酵素で、骨吸収の亢進に伴って血中に漏出するため、骨粗鬆症では検査値が上昇を示す。
- P1NP
- (Ⅰ型プロコラーゲン‐N‐プロペプチド)
骨形成を反映する骨形成マーカー。
骨形成時に血中に放出される酵素で、骨粗鬆症では骨が多く壊される分、骨形成も進むため検査値は上昇する。
BAPよりも骨形成早期の段階で上昇を示すのが特徴。
- BAP
- (骨型アルカリフォスファターゼ)
骨形成を反映する骨形成マーカー。
骨形成時に骨芽細胞(骨を作る細胞)から血中に放出される酵素で、骨粗鬆症では骨形成が進むため検査値は上昇する。
高齢者は骨吸収が早い分、骨形成のスピードも速いのだが、骨形成が追いつかず、丈夫な骨を作ることができないため、骨粗鬆症となる。
3、尿検査
- NTX
- (尿中Ⅰ型コラーゲン架橋N-テロペプチド)
骨吸収を反映する骨吸収マーカー。
破骨細胞が骨吸収する際に骨表面で産生される酵素で、骨粗鬆症では高値を示す。
骨粗鬆症の治療
食事療法
- 骨の主成分であるCaは、1日700~800mg以上摂取できるように勧める。
- 骨代謝に必要なビタミンDは400~800IU/日、ビタミンKは250~300μg/日の摂取を勧める。
運動療法
- 運動をして負荷をかけることで骨量が増量するため、ウオーキングや水泳が有効。
- 背筋・腹筋の筋力アップを図ることで、骨を守る筋肉がつき転倒・骨折防止にもつながる。
薬物療法
骨粗鬆症の治療の基本は薬物療法!
骨粗鬆症で使用される主な薬剤
- 活性型ビタミンD₃製剤
- 商品名:アルファカルシドール
特徴:カルシウムの吸収を助け、骨形成と骨吸収のバランスを調整する。
- ビタミンK製剤
- 商品名:メナテロレノン
特徴:カルシウムの骨への沈着を促す。
- ビスホスホネート製剤
- 商品名:アレンドロン酸ナトリウム水和物
特徴:破骨細胞による骨吸収を抑制する。
- SERM(サーム)製剤
- 商品名:ラロキシフェン塩酸塩
特徴:女性ホルモンと似た働きで、破骨細胞の働きを抑え骨吸収を抑制する。
- カルシトニン製剤
- 商品名:エルカトニン
特徴:骨吸収を抑制する注射薬(主に筋注)。強い鎮痛作用があり、QOLを上げる効果が期待できる。
- 甲状腺ホルモン製剤
- 商品名:テリパラチド酢酸塩
特徴:骨を作る骨芽細胞の働きを促す皮下注射薬。※重度の骨粗鬆症患者に対し使用される。
- 女性ホルモン製剤
- 商品名:エストリオール
特徴:破骨細胞の働きを抑え、骨吸収を抑制する。閉経後の女性ホルモン減少に起因した骨粗鬆症に有効。
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