髄膜炎とは?
細菌やウイルスが血管内に侵入して、脳や脊髄を取り囲む髄膜(軟膜・くも膜・硬膜)に細菌が感染し、起きる炎症のこと。
髄膜はくも膜下腔を経て、脳や脊髄と近接しているため、細菌が脳や脊髄に及ぶと運動障害や感覚障害が現れるほか、生命に危険が及ぶ疾患である。
髄膜炎の分類と特徴
感染性髄膜炎
1、細菌性髄膜炎
細菌感染により起きた髄膜炎は、炎症が強く、死亡率は約30%、知的障害や片麻痺などの後遺症は、20~30%程度とウイルス性髄膜炎より予後が不良。
2、ウイルス性髄膜炎
ウイルス感染により起きた髄膜炎は、予後は比較的良好で、後遺症もみられない。
非感染性髄膜炎
細菌やウイルス以外の原因で髄膜の炎症を来たした状態で、原因として癌の浸潤、全身性炎症性疾患(全身性エリテマトーデス、シェーングレン症候群、関節リウマチなど)、薬剤(抗がん剤など)があげられる。
髄膜炎の症状
全身の炎症による症状
発熱、倦怠感、頻脈など
髄膜刺激症状
感染で髄膜が刺激されることで、頸部硬直・ブルジンスキー徴候、ケルニッヒ徴候が出現する。
→髄膜刺激症状の詳細は、『くも膜下出血の原因と病態』参照。
頭蓋内圧亢進
拍動性の激しい頭痛、嘔気・嘔吐、意識障害、痙攣、クッシング現象(徐脈、血圧上昇)、神経症状(病巣が及んだ神経の)が出現。
例えば、動眼神経が圧迫されると対光反射の消失、外転神経が圧迫されると外転神経麻痺が現れる。
炎症が脳実質に及べば、失語や片麻痺などの症状が現れる。
→『瞳孔と対光反射の観察』を詳しく見る
クッシング現象って何?
頭蓋内圧亢進により、脳の血流が低下すると、血流を保とうとして交感神経を興奮させるため、血圧が上昇する。
血圧の上昇を感知すると、副交感神経が働き徐脈となる。
この流れをクッシング現象と呼び、頭蓋内圧亢進の悪化を示す指標となる。
髄膜炎の検査
血液検査
髄膜の炎症であり、白血球、CRPの炎症反応が上昇を示す。
培養検査
血液培養
細菌性髄膜炎を疑う場合には、血液培養にて細菌を特定する。
髄液検査
診断や治療方針を決めるため、腰椎穿刺で髄液を採取し、培養検査へ提出する。
髄液は通常無色透明だが、採取した髄液が混濁していると、髄膜炎が疑われる。
検査に提出すれば、白血球や糖の値から、ウイルス性髄膜炎か細菌性髄膜炎か特定することができる。
腰椎穿刺の禁忌
・頭蓋内圧亢進症状を示すとき
・出血傾向があるとき
頭部CT/MRI
軽度であれば、所見として捉えることはできないが、強い炎症で脳浮腫を認めたり、膿瘍形成している場合には、それらが見ることができる。
MRI検査では、脳炎所見や急性炎症所見(くも膜下腔の増大)を捉えることができる。
髄膜炎の治療
薬物治療
細菌性髄膜炎の場合、抗菌薬の投与を行う。
しかし、標的部位である髄液には10~20%しか移行できないため、高容量の投与が行われる。
細菌性髄膜炎は、重症化しやすいため、培養の結果を待つ時間はないので、幅広い菌に対応できる抗菌剤を選択し投与することが多い。 また、同時にステロイドを投与する。
ウイルス性髄膜炎の場合は、原因ウイルスに対する薬剤はないため、解熱鎮痛剤や、制吐剤などの対症療法を行うほかない。
安静と脱水予防
安静により、体力の消耗を防ぐ必要があるため、医師へ安静度を確認しておくことが望ましい。
また、発熱や嘔気・嘔吐で脱水を起こしやすいため、補液での管理を行う。
ウイルス性髄膜炎など、症状が軽く自力で水分摂取可能であれば、通常、経口から摂取も可能。
髄膜炎の看護と観察ポイント
全身状態の変化を観察する
特に、細菌性髄膜炎の場合には、急変する危険性が高いため、常にモニタリングし、バイタルサインの変化や、頭蓋内膜亢進症状、髄膜刺激症状の観察を行う。
症状が改善してきた場合には、頭痛や嘔気・嘔吐などの自覚症状にも改善が現れてくる。
薬剤投与の副作用に注意する
細菌性髄膜炎の場合、高用量の抗生剤を投与するため、副作用が出現する危険性も高い。初回投与時には、アレルギー反応に注意し、投与継続により、肝機能障害・腎機能障害が現れることもあるため、血液検査データにも注意を払う必要がある。
苦痛の緩和
発熱、頭痛、嘔気・嘔吐などの身体的苦痛が大きいため、適宜解熱鎮痛剤や制吐剤を使用し、症状の緩和を図る。
日常生活上の援助
治療には、安静が必要となるため、安静度に合わせて介助を行う。
また、後遺症として麻痺や視覚障害が現れることがあるため、障害の部位や程度に合わせて患者の自立を支援するための援助も必要となる。