中心静脈カテーテル(3) 合併症とその対策

目次

CVカテーテル挿入時の起こる合併症と観察

1、気胸

鎖骨下静脈を穿刺する場合、鎖骨下静脈の下には肺があるため、胸膜を誤穿刺してしまうと、肺実質を損傷し、気胸を合併する危険性がある。
→肺の解剖を詳しく見る
→気胸の病態生理を詳しく見る

穿刺時には、胸痛・咳嗽・呼吸苦・SpO2の低下などの症状に注意して観察し、異常時はすぐに医師へ伝える。

2、動脈穿刺、血腫、血胸

これも、鎖骨下静脈を穿刺時に多い合併症。
動脈を誤って穿刺した場合には、拍動性に出血があり、止血のために5分以上圧迫が必要となるので、介助につく看護師は滅菌ガーゼを多めに用意するなどの対応をとる。

また、抗凝固剤を内服中の患者など出血傾向の場合には、皮下血腫を形成したり血胸(胸腔内に血液が溜まる)になる危険性もあるため、胸痛・呼吸苦・頻脈・SpO2の低下・チアノーゼなどバイタルサインや呼吸状態に特に注意する。

大量に出血した場合には、下肢の挙上や輸液の調整、胸腔ドレーン挿入が必要となるため、医師の指示に従い対応する。

3、空気塞栓

穿刺針の内針を抜く時や、CVカテーテル挿入時に胸腔内の陰圧に影響して、空気が血管内に引き込まれ発生する。
これもまた、鎖骨下静脈の穿刺は胸腔内陰圧の影響を受けやすいため、他の穿刺部よりも空気塞栓を起こすリスクが高くなる。
また、静脈圧が低下している場合にも空気が血管に引き込まれやすいため、空気塞栓を起こすリスクが高く、脱水のある患者は特に注意する必要がある。

静脈圧を少しでも高くするために、臥位または頭部を少し下げる(トレンデンブルグ体位)ことで、空気塞栓のリスクは下げられるとされている。※座位など頭部挙上時にCV抜去し、空気塞栓を起こしたという事例報告がある。

空気塞栓症を起こした場合には、肺動脈塞栓による胸痛、呼吸苦、息切れ、呼吸数の増加、頻脈などの症状が出現し、脳塞栓となれば意識障害や麻痺といった脳梗塞の症状が出現する。
合併症の中でもまれな合併症ではあるが、空気塞栓症は後遺症を残すこともあり、迅速な治療が必要となるため、症状出現には十分注意して介助にあたる。

4、カテーテルの位置異常

カテーテルの正しい先端位置は、右心房に近い大静脈だが、深く入りすぎて心臓まで達すると、機械的刺激で心室性期外収縮(PVC/VPC)が誘発される。
PVCが連発することもあるが、数cmカテーテルを引いて先端を正しい位置(大静脈)に戻せば消失する。
ただし、まれに心室細動(VF)に移行する場合もあるためCV挿入中は心電図モニターを装着して、特にカテーテル挿入中は不整脈の出現に注意して観察する。

その他、他の血管へ刺入してしまったりすることもあるので、挿入後は必ず胸部Xp・腹部Xpで確認してから輸液を投与する。

CVカテーテル挿入後の合併症と管理

1、感染

刺入部・輸液ライン・接続部・輸液の汚染により感染が起こる。
CVカテーテルから細菌が侵入すると、局所の感染にとどまらずに全身に細菌が周って敗血症から致命的にもなりうる。カテーテル関連血流感染(CRBSI)(一般にカテ熱)と呼ばれ、悪寒から始まる高熱、血液検査では好中球の左方移動(左方偏移)、白血球増多、CRPの上昇、血糖値の上昇などが認められる。

CRBSI予防のためには、感染源を作らないことが大切なので挿入時、固定時、消毒時も無菌操作をしっかり行い、輸液や輸液ラインの取り扱いにも注意する。

三方活栓を開放するワンショットの注射は感染源となるため、閉鎖式の輸液ラインが推奨されている。

もしCRBSIを発症した場合は、カテーテルを抜去し抗生剤の投与を行うので、CV挿入中の患者に感染症状がありCRBSIが疑われる場合には、医師に報告して早急に対応する。

実際は発熱の原因がはっきりしないことが多く、CVを留置したまま末梢点滴へ切り替えて、熱の経過をみることも!それで解熱した場合には、CRBSIと判断でき、CV抜去or入れ替えとなる。

2、血栓形成・カテーテルの閉塞

点滴速度が遅かったり、輸液が止まって逆血した場合や長期留置により、CVカテーテル内または周囲に血栓が形成し、カテーテルを閉塞させる。

この血栓は、血流に乗って肺塞栓や脳梗塞、心筋梗塞を引き起こす危険があるため、注入しづらくなっていたり、フラッシュが入っていかないなど血栓による閉塞が疑われる場合にはすぐに医師へ報告する。
間違っても無理やり押し込もうとしない!!

3、高血糖

中心静脈栄養(IVH/TPN)で投与する高カロリー輸液は、高濃度のブドウ糖が含まれるため、高血糖状態になりやすい(下の表参照)。特に重症患者では、すでにホルモンの影響で高血糖状態となっていることが多いので、悪化させる要因になりうる。

そのため、レギュラー(速効型)インスリンを高カロリー輸液に混注したり、シリンジポンプを用いて持続投与して高血糖を防ぐ場合も多い。
また、高カロリー輸液が急速に落ちないように輸液ポンプを使用したり、定期的に血糖をチェックして、適切に血糖コントロールを行う。

高カロリー輸液
(ハイカリック1号:700ml)
120g
高カロリー輸液
(ハイカリック2号:700ml)
175g
高カロリー輸液
(ハイカリック3号:700ml)
250g
糖加リンゲル液
(ラクテックD:500ml)
25g
3号液ー維持液
(KN3号:500ml)
13.5g
輸液に含まれる糖分

カテーテルの位置異常

CVカテーテル挿入直後にはXpで正しい位置にあるのを確認しているが、留置中に先端が移動して他の血管に迷入したり、抜けてきたり、逆に入りすぎたりする場合などがある。

この場合、血管壁を破り血管外漏出の危険性もあるため、CVカテーテルを抜去しなければいけない。
そのため、カテーテルの位置異常を疑った場合には胸部Xpにて先端位置を確認する必要があるため、すぐに医師に報告する。

カテーテルの事故抜去(自己抜去)

認知症やせん妄状態の患者であれば自分でカテーテルを引き抜いたり切ったりすることもある。また意識障害がない患者でも、カテーテルがベッド柵に挟まったり、体に引っかかって誤って抜けてしまうことがある。

カテーテルの事故抜去やカテーテルの位置異常を予防のためにも定期的に縫合糸が外れていないか、固定テープが剥がれていないかチェックし、固定時・消毒時にはしっかりループを作って固定することがひとつの予防となる。

また、CVカテーテルの位置がベッド柵や患者の身体に巻き付いて引っ張られていないか確認したり、ルートの長さを調整するなどの対応をとる。意識障害のない患者であれば、患者自身にも注意してもらうよう声掛けを行う。

認知症やせん妄など自己抜去の危険性がある患者では、カテーテルに手が届かないよう固定や位置を工夫し、必要な場合にはミトンなど身体拘束も考慮する。

もしCVカテーテルの全長を完全に事故抜去してしまったら、抜去部を5分以上圧迫止血する。
血管内にカテーテルの一部が残っている可能性がある場合には、心臓や肺へ流れていってしまう危険性があることから、心臓カテーテル検査を行い外科的に摘出する必要がある。医師が抜去したCVカテーテルを確認できるよう、カテーテルは捨てずに残しておく!

患者がハサミ等でカテーテルを切断してしまった場合には、切断面から空気が入り空気塞栓の危険性があることから、患者側のカテーテルをペアンなどでクランプしてすぐに医師に報告する。※切断の予防として、認知症やせん妄の患者の身の周り品を確認し、ハサミなど鋭利なものはナースステーションで預かるなど事前に対策を取っておく。

花子は、ポーチの中の眉バサミで切られたことあり!ご注意を。

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