弾性ストッキングとは?
強い弾性力をもち、下肢を締めつけるストッキングのこと。
タイツのように臀部まで覆うパンストタイプやハイソックスタイプ、大腿までのストッキングタイプがあるが、どのタイプも総称して『弾性ストッキング』と呼ばれている。
弾性ストッキングの目的と効果
弾性ストッキングは、特殊な編み方により、末梢~中枢にかけで圧力が減るように作られている。
血管を段階的に圧迫・縮小させることで、血液が逆流するのを防ぎ、心臓に送りやすくする。これにより、深部静脈血栓(DVT)の予防、静脈瘤の進行抑制、浮腫の軽減などの効果が期待できる。
弾性ストッキングの適応
- 静脈瘤がある患者
- 長時間の移動や手術後、長期間の安静を要する患者
- 妊娠中の女性
- 浮腫を伴う患者
- 深部静脈血栓症の予防が必要な患者
▶病態生理『深部静脈血栓症(DVT)の病態と予防』を詳しく見る。
弾性ストッキングの着用方法
サイズ選び
適切な圧をかけるために、必ず採寸を行い患者に適切なサイズを選択する。もし、サイズが合わないと、潰瘍や循環不全などを起こすリスクがある。
- 足首(一番細い所)と腓腹部(一番太い所)の周囲径を測定
- 製品のサイズ表と照らし合わせる。
- すべての部位が規格内に入るサイズを選択する。
種類 | 規格(周囲径) | |
足首 | ふくらはぎ | |
LL | 23~27 | 40~46 |
L | 21~25 | 36~42 |
M | 19~23 | 32~38 |
S | 17~21 | 28~34 |
SS | 15~19 | 24~30 |
弾性ストッキングの履き方
- ストッキングの内側に手を入れて、中から踵部分を摘む。
- 踵部分をつまんだまま、手を引き抜き、踵部分まで裏返す。
- この状態で、つま先から踵まで装着する。
- 踵を合わせたら、裏返した靴下を表向きなるように腓腹部まで引き上げる。
- 踵の位置やしわやねじれを直す。
- 観察窓の位置を確認する。
弾性包帯での代用方法
浮腫が強かったり、下肢の拘縮が強く、ストッキングが履けない場合には、弾性ストッキングの代わりに弾性包帯を巻き、圧をかけることがある。
使用する包帯
適度な伸縮性と圧迫力がある弾性包帯を使用する。
包帯の幅は広い方が緩みにくいが、広すぎると足に沿わないため、患者に合ったサイズを選択する。
一般的には、幅8~10㎝程のものがよく使用される。
この幅があれば、下腿に1本の包帯(両足で2本)で覆うことができる。
弾性包帯の巻き方
- 弾性包帯を中足趾関節(MP関節)から巻き始める。
- 足関節は緩みやすいので、アキレス腱と足関節を覆うように麦穂帯(読み方:ばくすいたい)で二重に巻く。
- 足関節まで巻いたら、やや圧力をかけながら半分くらい重ねて、らせん状に巻き上げる。
- 巻き終わりをテープで固定する。
- 疼痛や痺れがないか患者へ確認する。
弾性ストッキング(弾性包帯)着用中の観察
ストッキングによる皮膚炎はないか
ストッキング繊維よる接触性皮膚炎や、湿潤により皮膚炎を生じていないか接触部の観察を行う。
下肢に浮腫は起きていないか
下肢に浮腫が生じている場合には、着用サイズが小さくなっている可能性もあり、再度サイズ測定を行い、適切なサイズのものを着用する。
苦痛や疼痛はないか
過度な苦痛や疼痛がある場合には、サイズの変更やストッキングの中止を検討する必要がある。
折れやしわがないか
体動などでバンド部分の折り返しやしわが発生しやすいため、ラウンド毎に観察して整える。
しわやバンド部分の圧迫は血流障害が生じる恐れがあり、潰瘍形成の原因にもなる。
バンド部分が腓骨頭を圧迫していないか
バンド部分が腓骨頭を圧迫していると、腓骨神経麻痺を起こす危険がある。
腓骨神経麻痺とは?
腓骨頭(膝の外側)の外側からの圧迫により生じる。下腿の感覚障害を生じ、足関節と足趾が背屈できなくなる(下垂足という)。
詳しく勉強したい方はこちら→『神経障害の観察と予防』
知覚障害や神経症状を訴える場合には、すぐに取り外し、医師へ報告する。
循環障害は起きていないか
観察窓から皮膚や爪色(そうしょく)を観察。蒼白や冷感がある場合には末梢循環障害の可能性があるためすぐに取り外す。サイズの再測定を行ったり、弾性包帯への変更を検討する。