透析療法の基本と観察

目次

透析療法とは

機能しなくなった腎臓の代わりに、人工的に血液中の老廃物や余分な水分を取り除く方法。

腎機能が正常の10%以下になると、老廃物や水分が体に蓄積することで、消化器症状や心不全、呼吸不、不整脈、高度な貧血などの重篤な尿毒症症状が出現する。放置すれば命に関わるため、速やかに透析導入が必要となる。

透析療法の目的

老廃物の除去

摂取した蛋白質は代謝されて老廃物となるが、この老廃物を排泄するのが腎臓の役目。老廃物には、尿素窒素(BUN)、クレアチニン(Cr)、メチルグアニジン、グラニチン誘導体、アンモニアなどがある。これらは毒性があり、蓄積されると尿毒症を引きおこすため、除去が必要となる。

水の除去

食事中の水分や飲水による水分が身体に蓄積されると、浮腫や胸水を引き起こし、血流量が増えることで心肥大や心不全を引き起こす。

ナトリウムの除去

1L除水すると、140mEq(食塩8.2g相当)が除去される。

カリウム(K)の除去

高カリウム血症は致死性不整脈や心停止の原因になるため、透析の重要や目的となる。

カルシウム(Ca)の補充

ビタミンDを活性化する腎臓の機能が障害されると、カルシウムをうまく吸収することができない。そのため、透析液からCaの補充を行う。

リン(P)の除去

リンの血中濃度が上昇することで、骨からカルシウムが溶け出したり、カルシウムとリンが軟部組織(血管や筋肉、肺、皮膚など)に沈着することで、動脈硬化や脳梗塞・心筋梗塞を引き起こしやすくなる。そのため、リンの除去も重要や役割となる。

水素イオン(H⁺)の除去

水素イオンが蓄積すると、アシドーシスに傾くため、透析液から重炭酸イオン(HCO₃⁻)を補充し、酸を中和させる。その結果、透析終了後には通常のPH 7.50程度のアルカリ性の血液になる。

透析の種類

血液透析(Hemodialysis:HD)

血液透析とのイメージ

血液を体外に取り出し(脱血)、ダイアライザーという器械の中で血液をキレイにして体内に戻す(返血)方法。

ダイアライザーの中には、ストロー状の細い糸が1万本くらい通っていて、血液はその中と通っている。糸の外には透析液とよばれる電解質を含んだ液体が通り、糸の壁(半透膜)を介して毒物の除去、電解質の除去or補充を行っている。

透析患者の97%はこの血液透析(HD)を行っている。週3回通院し、約4時間の治療を行う。

腹膜透析(Peritoneal dialysis:PD)

腹膜透析のイメージ

患者自身の腹腔内に透析液を注入し、半透膜である腹膜(肝臓・胃・腸など内臓表面を覆う膜)を透析膜として用いて、体内でゆっくりと透析を行う方法。

腹腔内に透析液を入れておくことで、腹膜の毛細血管を介して透析液の中に余分な水分を引き込む。(拡散と浸透圧の原理)

腹腔内に留置したカテーテルから、透析液を注入したり、透析液を排出するため、在宅での自己管理が可能。

連続携行式腹膜透析(CAPD)では、1日3~4回の透析液を交換する必要がある。自動腹膜透析(APD)では、就寝時に透析を行う方法で、1.5~2時間の間隔で機器が自動的に透析液を交換する。

メリットとして残存腎機能が比較的長く保てたり、通院が月1~2回と少なく、食事制限が緩やかであることが上げられる。

血液透析(HD)の原理

血液透析の図で示したダイアライザー内では、「拡散」「限外ろ過」2つの原理で物質の除去と補充が行われる。

『限外』は、ろ過するときに使用する膜の違いで、難しく考えなくてOK。『約1~1,000 kDa(ダルトン)の分子の分画または濃縮に用いる。』らしい。

拡散の原理

濃度が高いところから低いところへ移動する働き。
血液中にたまったリン(P)やカリウム(K)などは透析液中に移動し、逆に血液中に不足するカルシウム(Ca)や重炭酸イオンなどは透析液から血液中に移動し補充される。

ちなみに、白血球や赤血球は半透膜を通過しないようにできている。

血液透析の原理1、拡散

(限外)ろ過の原理

機械的に血液側へ陽圧をかけることで、圧力差が生じて血液中の水分が透析液側に押し出される。

血液透析の原理2,限外濾過

腹膜透析の場合は、血液の浸透圧より透析液の圧を高くすることで、浸透圧差をつけて除去している。

バスキュラーアクセス( シャント)の種類

バスキュラーアクセス(シャント)とは?

透析に必要な血液(200ml/分)を安全に循環させるために必要な血液の出入口のこと。

穿刺しやすいのは静脈だが、静脈から血液を取ろうとすると50ml/分が限界。動脈は十分な量が取れるが、穿刺が難しく、止血困難や神経損傷のリスクが高い。

そのため、外科的にシャント造設が必要となる。
血液透析は週3回4~5時間と時間を要するもので、患者・医療者の負担軽減するために重要な血管となる。

バスキュラーアクセス【vascular(血管の)access(通り道)】は、ブラッドアクセス【blood(血) access(通り道)】やシャントとも呼ばれるが、現在は、国際的に『バスキュラーアクセス』の呼び名が主流となっている。

1、自己血管を使う内シャント:AVF

自己血管を使う内シャント(AVF)イメージ

最も一般的で全バスキュラーアクセスの9割を締めるのが、AVF。

動脈と静脈を吻合することで、動脈の血流を皮静脈(皮膚のすぐ下の静脈)に流し、太く、血流量が増加した静脈を穿刺することで勢いよく血液を取り出す(脱血)ことができる。

作成部位は、利き腕の逆側、手関節→前腕→肘部とできるだけ遠位を選択する。
感染リスクが非常に低い!

上図は、現在最も主流の側端吻合のイメージ。
この他、側々吻合、端々吻合など患者の血管に合った吻合方法を選択する。

脱血側は、動脈を意味する『A』側、返血側は静脈を意味する『V』側と呼ぶ。

2、人工血管を使う内シャント:AVG

人工血管を使うシャント(AVG)のイメージ

動脈と静脈に距離があったり、皮静脈が細いなどの理由でAVFができない場合に、人工血管を用いて、動脈と静脈をつなぐ方法。

人工物を使用するため、閉塞・感染リスクが高く、2~3年おきに交換が必要となる!

3、表在化動脈

バスキュラーアクセス3,動脈表在化

筋膜の下を走行している上腕動脈を皮下の浅いところまで外科的に移動させ、直接穿刺しやすくする方法。

本来ならAVFやAVGといった内シャントを作るが、心機能低下が著しく、内シャントを作ることで心不全を増悪させる場合に行われる。バスキュラーアクセス全体の約2%を占め、100人に2人は表在化動脈を使用して透析を行っている。

外シャントってあるの?
動脈と静脈に挿入したカテーテルを体外でつないだもので、1960年に考案されたが、感染リスクが高く現在はほとんど使用されない。

バスキャスカテーテル

バスキャスカテーテル(ブラッドアクセス)のイメージ

ブラッドアクセスカテーテルバスキャスとも呼ばれるもので、緊急時やAVF・AVGともに作成困難な時に用いられる。CVカテーテル同様に、内頸や鎖骨下、鼠径の太い静脈にカテーテルを挿入し、カテーテルから脱血・返血を行う。

カテーテルが常に出ているため、QOLの低下させるリスク、また感染リスクも高いため通常は選択されない。

通常のカテーテルは、留置期間は3週間を目途としているが、カフ付きで長期に使用可能なカテーテルもある。

→看護技術『バスキュラーアクセス(透析用)カテーテルの基本と管理』を詳しく見る。

透析患者の観察ポイント

ドライウェイト(DW)

透析は、体にたまった水を抜く必要があるが、多すぎると急激な血圧低下や脱水が起こり、逆に少ないと浮腫や高血圧が起こる。

体の中の水分量が適正な状態、基本となる体重のことを、ドライウェイト(DW)と言い、これを目標に透析が行われる。

ただし、糖尿病や心機能が低下した患者では、除水が不十分でも血圧低下を起こすためこの方法だけでは設定できない場合も多い。

食事制限

腎不全では、塩分や電解質の排泄が難しくなるため、塩分・カリウム・蛋白質制限が行われる。特に塩分制限(1日6g以下)が最も重要。

透析患者が入院時は、『透析食』『腎臓病食』などへの変更が必要か医師へ確認する。

水分制限

飲水量の求め方
ドライウェイト×15ml+尿量=飲水量

例えば、DW60㎏で無尿の患者の場合、
60×15+0=900ml となります。

ただし、あくまで目安で、『500ml/日』などDr指示が出る場合も多い。

バイタルサイン

透析は血液量が減少するため血圧の低下が起きたり、逆に返血のスピードが早かったり、Na濃度が高い場合には水分をひきつけることで血液量が増加し、血圧が上昇することがあるため、 血圧のモニタリングと随伴症状の観察を行う。

止血確認

出血は感染、血腫、シャント閉塞の原因となるため、止血確認が重要となる。

特に透析中は、抗凝固薬の持続注入が行われおり、出血リスクが高いため要注意!

止血バンドを外す時間は?
30分~1時間後に外し、止血確認を行う。 長時間の圧迫はシャント閉塞を起こす危険があるため、止血が確認されたら速やかに外す!
絆創膏(パット)は、穿刺部の痂疲化を待ち、翌日剥がす!

止血バンドを外し忘れた場合
数時間巻き続けると、シャント閉塞だけではなく、神経損傷・壊死・運動障害などを引き起こすリスクがある。実際に、止血バンドを12時間巻き続け阻血性壊死と運動機能喪失というアクシデントも発生している。このような重大アクシデントを予防するためにも、ラウンド毎にシャント音・スリルの確認を行い、必要であれば、タイマーを使用し確実に止血確認する!

シャント音・スリルの確認

シャント側の血流障害(手指の色、冷感、痺れ)の有無と、シャント音・スリルを観察し、シャント閉塞がないか確認する。

  • 良好なシャント音「ザーザー「「ゴーゴー」
  • 悪いシャント音「ヒューヒュー」「ザッ、ザッ」
  • 良好なスリル:2本程で血管に触れたとき、ザーザーと血液の拍動を感じる。

透析患者の注意すべき合併症

うっ血性心不全

腎不全の患者は尿が出ないため、水分が体に過剰な状態となっており、心拍出量が多い分、心負担がかかっている。その状態が続くことで左室内径の拡張、左房の拡大、左室孔壁・心室中隔の肥厚、左室心筋容量の増加などを起こし、心不全を引き起こす。
心不全は透析患者の死亡原因の1位となっている。

動脈硬化性疾患

高血圧やCKD-MBD(CKDに伴う骨ミネラル代謝異常)などが動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞を起こすと言われている。

CKD-MBDとは?
簡単に言うと、リンの増加やビタミンD3の産出低下により、骨代謝が障害され、骨がもろくなった状態に加えて、血管などの軟部組織が石灰化をきたした状態のこと。

不整脈

透析中は、体液量・体重・血圧・電解質(K・Ca)・pHが急激に変化するため、不整脈を誘発しやすい。
特に透析後半から終了直後に発生するため、透析前後で電解質が大きく変化した場合には、心電図を装着するなどして注意する。また体液過剰による心負荷で心房細動を呈することもあるが、除水により戻ることが多い。

感染症

尿毒素や貧血などさまざまな要因によって免疫力が低下し、感染症にかかりやすい状態となっている。

保清を徹底し、予防接種なども積極的に行う。

腎性貧血

腎臓は、骨髄に作用して血液を作る指令を出す『エルスロポエチン』というホルモンを産出するが、腎機能の低下とともに産出が低下する。すると、赤血球が作られず、貧血を引き起こす。 

そのため、透析患者ではよく2週間に1回エリスロポエチン製剤(エスポ―やエポジン)の皮下注を行う。

透析アミロイドーシス

透析では十分に除去できないβ₂-ミクログロブリンがアミロイド蛋白に変性し、全身に沈着することで、手根管症候群や骨農法、弾発指(ばね指)が生じる。

掻痒感

尿毒素がかゆみ受容体であるミュー・ペプチド受容体を刺激することや、汗腺萎縮による皮膚の乾燥などから、外的刺激に敏感になることで掻痒感を引き起こす。

透析患者が掻痒感は、従来のかゆみ止めでは効果が不十分な場合が多く、腎不全の掻痒症に効果を発揮する『ナルフラフィン塩酸塩(口腔内破壊錠)』や新薬『ジフェリケファリン(静注)』が使用される。

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