J-VAC(ジェーバック)ドレナージの基本と管理

目次

J-VACとは?

正式には、J-VACサクションリザーバーと呼ばれる製品で、ジョンソン・エンド・ジョンソンが販売する低圧持続吸引システム。

体内に留置したドレーンにJ-VACを接続することで、バネの反発力やバックの弾性を利用して持続的に吸引圧をかけることができる。主に術後の創傷ケアに用いられる。

その他の低圧持続吸引システムとして、バルーン式のSBバッグ(SBカワスミ株式会社)や電動式のメラサキューム(泉工医科工業株式会社)などがある。

J-VACの構造

スタンダードタイプ

J-VAC(スタンダードタイプ)の構造
参考:ジョンソンエンドジョンソン J-VACサクションリザーバー スタンダードタイプ
  • Yコネクター…ドレーンを2本まで接続できる
  • 逆流防止弁…たまった排液は逆流しない
  • 目盛り…膨らんだ状態で計測可能
  • フラップ…折ると吸引圧がかかる
  • 排出キャップ
  • 排出口…排液を破棄するところ
  • 金属製スプリング…このバネの圧力で陰圧がかかる
  • ロック用のツメ…圧縮状態で固定されるツメ

バルブタイプ

J-VAC(バルブタイプ)の構造
参考:ジョンソンエンドジョンソン J-VACサクションリザーバー バルブタイプ
  • 集液ポート…ドレーンを2本接続できる
  • 逆流防止弁…たまった排液が逆流しない
  • 排出口キャップ
  • 排出口…排液を破棄するところ
  • 目盛り…膨らんだ状態で垂直にして計測する

J-VACの陰圧がかかるしくみ

スタンダードタイプ

J-VACスタンダードタイプ陰圧がかかる仕組み

外科全般で広く使用されているタイプ。
こちらは、リザーバーの内部にあるバネの反発力により内部を陰圧してドレナージを行う。

バルブタイプ

J-VACバルブタイプ陰圧がかかる仕組み

卵型のバックを握りつぶすことで、バックの弾性(復元力)によってリザーバー内を陰圧にしてドレナージを行う。スタンダードタイプより吸引圧は低め。

J-VACの目的

感染の予防

術野にたまった血液や浸出液・洗浄液が体内にとどまっていると、細菌感染の温床になるため、体内に留まらないように持続的な陰圧をかけてドレナージする。

2014年の研究では、大腸穿孔の緊急手術を受けた患者において、皮下閉鎖吸引ドレンが創傷合併症の発生率を減少させるかどうかを検討。J-VACドレナージシステムを使用した場合と使用しない場合を比較し、J-VACシステムを使用したグループでは、使用しないグループに比べて、創傷部位の感染(SSI)の発生率が顕著に低かったことが示された。​

創傷治癒の促進

陰圧を利用することで、創傷部位の血流が促進されて細胞成長が促進される。

縫合不全などの合併症の早期発見

閉創すると体内の状態がわからなくなってしまうが、ドレーンを留置しておくことで、排液の色や臭いで術後出血や感染、縫合不全と言った合併症の早期発見が期待できる。

J-VAC(スタンダードタイプ)の管理方法

排液の破棄・計測方法

  1. 排出口をあける。

この時、空気が入り、陰圧はかからなくなるが、J-VACには逆流防止弁がついているので、ドレーンのクランプは不要!バルブタイプも同じ。

  1. J-VACが全開に膨らんだ状態でメモリをみて計測する。
  2. 計測が終わったら、バックを傾けて排液を破棄する。

破棄後、再度陰圧をかける方法

J-VAC陰圧をかける方法
  1. 排液の破棄後、リザーバー中央部(指のイラストが描いてあるところ)を「パキッ」と音がするまで強く押す。すると、中央部分のツメが引っ掛かり固定されて膨らまなくなる。

握力弱めな方は、力いっぱい押さないと固定されません!
※イラストは素手を描いてしまいましたが、もちろん未滅菌手袋を装着して下さい。

  1. 排液口をアルコール消毒してキャップを閉じる。
  2. リザーバー底部のフラップを「ポンッ」と音がするまで上方向に折り曲げる(フラップアップと言う)。
  3. ツメが外れて陰圧がかかる。

J-VAC(バルブタイプ)の管理方法

排液の破棄・計測方法

  1. 排液口を開ける。
  2. リザーバーが膨らんだ状態で垂直に持ち、目盛をみて排液を計測する。
  3. 計測が終わったら、バックを傾けて排液を破棄する。

破棄後、陰圧のかけ方

J-VAC陰圧をかける方法(バルブタイプ)
  1. 排液後、リザーバーを握り潰して空気を抜く。
  2. 握り潰したまま、反対の手で排出口を消毒し、キャップを閉じる。
  3. 握り潰した手を離し、陰圧がキープできているか確認する。
  4. バックの弾性により陰圧がかかり、持続的に吸引圧がかかる。
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