目次
胸腔ドレーンの目的
胸腔に貯留した気体・液体(血液・浸出液・膿瘍など)をドレーンを用いて体外へ排泄させ、肺の拡張を促す。
胸腔ドレーンの適応
術後
肺や食道などの開胸術後に、虚脱した肺の再拡張を促し、術後出血・肺からの空気の漏れ、リンパ液などの漏出の観察のために行われる。
また、浸出液貯留により創部に圧力がかかり、縫合不全を招くことを予防する目的でも用いられる(情報的・予防的ドレナージ)
気胸
胸腔内に貯まった空気を出す(脱気)目的で留置される。(治療的ドレナージ)
血胸、膿胸、胸水
液体を排泄し、肺の拡張を促す他(治療的ドレナージ)、排液の性状や量を観察する(情報的ドレナージ)。
胸膜炎・心不全
肺炎や肺がんなどの炎症が胸膜に及ぶと胸膜炎を合併し、胸水が貯留する。 さらに、細菌が胸膜の中に侵入すると、膿胸となるため、ドレナージにて細菌を体外へ排泄する必要がある。
心不全では、肺うっ血により、肺水腫から胸水を生じるため、ドレナージで排泄する(治療的ドレナージ)。
胸腔ドレーンの挿入部位
胸腔ドレーンは、肋骨の内側を覆う壁側胸膜と、肺を覆う臓側胸膜の間、胸膜腔に留置する。普段、この2つの膜はほぼ密着している状態だが、摩擦を軽減するために少量の胸水が溜まっている。
肺から漏れた気体や、胸水が多量に溜まると、壁側胸膜と臓側胸膜の間の胸膜腔に貯留するため、ここにカテーテルを挿入するわけだが、気体や液体では、重力の関係で貯留する場所が異なるため、それを考えて胸腔ドレーンの挿入部位を考えなければいけない。
気胸の場合
空気が上部(胸側)に貯留するため、鎖骨中央線上、第2~3肋間から肺尖部①に挿入。
胸水や膿胸の場合
重力によって、下部(背側)に貯留するため、中腋窩線上第6~8肋間から2背中側②や肺底部の③に挿入。
肺切除後に気漏がある、または予測される場合
背側②で液体をドレナージし、胸側①で気体ドレナージする。