輸血の実施

目次

1、輸血の説明と同意

輸血を行うときには、本人や家族へ説明し、同意書を取得することが必須となる。厚生労働省「輸血療法の実施に関する指針」(改定版)により、輸血について説明すべき8項目が提示されていて、同意書にも以下の内容が必ず含まれるように各医療施設で作成している。

輸血時、説明すべき8事項

  1. 輸血療法の必要性
  2. 使用する血液製剤の種類と使用量
  3. 輸血に伴うリスク
  4. 副作用・感染症救済制度と給付の条件
  5. 自己血輸血の選択肢
  6. 感染症検査と検体保管
  7. 投与記録の保管と遡及調査時の使用
  8. その他,輸血療法の注意点

2、交差適合試験の実施・確認

患者の血液と輸血用の血液製剤が適合するかを調べる検査。
よほどの緊急時以外は、必ずこの交差試験結果が陰性(患者と輸血製剤の抗原抗体反応がないということ。)であることを確認して輸血を実施する。

交差適合試験(クロスマッチ)を詳しく見る

3、検査室へ輸血製剤を取りに行く

  1. 『2、交差試験の実施・確認』で取得した交差適合試験結果報告書をもって検査室へ輸血製剤を取りに行く。
  2. 払い出し伝票を検査室で受け取り、交差適合試験結果報告書輸血製剤の3つが一致するものかダブルチェックを行う。
    このとき、①患者指名・②生年月日・③施行日・④血液型・⑤血液製剤名・⑥照射(Ir)の有無・⑦輸血量(単位)・⑧製造番号・⑨最終有効期限・⑩血液製剤の性状を確認する。
  3. 輸血運用用のバックがあれば、それに受け取った輸血製剤を入れて、病棟へ運び、すぐに使用する。

赤血球製剤→保冷材を使用(直接触れないように)
血漿製剤→保冷材を使用
血小板製剤→常温で運搬

輸血製剤は、2重扉の専用の保冷庫で厳重に温度管理されている。そのため、病棟へ持って行った後は冷蔵庫への保管はせず、速やかに使用する。

4、輸血実施の準備

必要物品の準備

  • 輸血製剤
  • 交差適合試験結果報告書
  • 払い出し伝票
  • 輸血指示書
  • 点滴棒
  • ディスポ手袋
  • 輸血セット
  • 30~37度のお湯と温度計※血漿製剤のみ

赤血球製剤・血小板製剤は、受け取り後すぐに使用可能だが、血漿製剤は凍結しているため、予め上記の物品を使用して融解しておく。
だいたい30分で融解可能で、融解後は3時間以内に使用する!

輸血実施前のダブルチェック

  1. 実施可能となった輸血製剤と、患者カルテの血液型、「交差適合試験結果報告書」「払い出し伝票」「輸血指示書」を照らし合わせながら、声に出してダブルチェックする。
    この時、検査室と同様に、①患者指名・②生年月日・③施行日・④血液型・⑤血液製剤名・⑥照射(Ir)の有無・⑦輸血量(単位)・⑧製造番号・⑨最終有効期限・⑩血液製剤の性状を確認する。
  2. ダブルチェックした2人の指名をサインする。
  3. 各施設で用意されたラベルがあれば、輸血製剤に貼る。

輸血製剤の準備

  1. 輸血バックを静かに振って、内容物を混和する。
  2. 輸血セットを開封し、クレンメを閉じる。
  3. 輸血セットを持ち、輸血バックの口を切る。(※2つある口のどちらでもOK!)
  4. 輸血バックを置いたまま、差し込み口に輸血セットを差し込む。
  5. 輸血セットを接続した輸液バックを点滴棒に吊り下げる。
  6. 点滴筒を軽く押しつぶして血液を半分くらいまで満たす。
  7. クレンメをゆっくり開放してルートの先端まで血液を満たす。
  8. 準備できた輸血製剤をトレーに入れ、患者の元へ運ぶ。

5、輸血の実施

  1. ベッドサイドへ移動したら、患者にフルネームと生年月日、血液型を答えてもらう他、ネームバンドで本人確認を行う。
    ※バーコードがあればパソコンでバーコード確認を実施する。
  2. 16~20Gでラインを確保する。
    輸血は原則単独投与!新しいルートが確保できず、補液を行っているルートからやむを得ず輸血を行う場合には、必ず生食でフラッシュしてから輸血を単独で開始する!

22Gでも溶血はしないとされているが、輸血後の副作用や急変も考えると20G以上が望ましい。

輸血は原則単独投与!新しいルートが確保できず、補液を行っているルートからやむを得ず輸血を行う場合には、必ず生食でフラッシュしてから輸血を単独で開始する!

  1. ラインの延長チューブと輸血セットを接続する。
  2. 輸血前のバイタルサインを測定する。
  3. クレンメを開放し、ゆっくり輸血を開始する。

最初の10~15分間は1ml/分(=1分20滴=3秒1滴)

  1. 輸血開始5分は、特に副作用が出現しやすいため、ベッドサイトで患者を観察し、開始直後と5分経過時点でバイタルサインを測定する。
  2. 15分が経過した時点でも患者の状態・バイタルサインを確認する。

状態に変化がなければ、医師の指示に応じて5ml/分程度にUP(1分100滴=3秒5滴)
※大量出血時などは速く輸血しないと命に関わるため、急速輸血!

  1. 輸血前・中・後に測定したバイタルサインを記録する。

輸血製剤を2パック以上投与する場合には、1パックごとに副作用が出現する危険性があるので、1パックごとに滴下数を調整しながら観察を行い、それぞれ記録する。

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