輸液製剤とは?
水分や電解質、糖質、アミノ酸などを補給するための注射剤。
- 脱水の補正
- 循環血液量の維持・回復
- 栄養補給
- 薬剤投与
など、目的に応じて製剤が選択される。
輸液製剤の基本的な分類
1.細胞外液補充液
嘔吐や下痢、出血などによって失われた細胞外液を補充するための輸液。
特に、循環血液量が減少している患者などに使用される。
代表的な製剤生理食塩液、ソルアセトF、ラクテック、ソルラクト、フィジオ140
2.開始液(1号液)
水分や電解質の補給を開始するときなどに使用される低張電解質液。
カリウムを含まないため、腎機能が著しく低下している患者や腎機能が把握できない場合など、カリウムの補給を避けたい場合に検討される。
代表的な製剤ソルデム1、ソリタT1号
3.維持液(3号液)
絶食中や経口摂取が不十分な患者に、水分・電解質と少量のエネルギーを補給するための輸液。
代表的な製剤ソルデム3A・3AG、ソリタT3号・T3号G、フィジオ35
4.糖液
水分と糖質を補給するための輸液。電解質を含まず、水分を中心に補給したい場合や、薬剤の溶解・希釈などに使用される。
代表的な製剤5%ブドウ糖液
5.末梢静脈栄養輸液
経口摂取が不十分な患者に、末梢静脈から糖質やアミノ酸などを補給するための輸液。
代表的な製剤ビーフリード
よく使う輸液製剤一覧
※掲載している製剤の外観は参考イメージです。包装・デザイン等は変更される場合があります。実際の使用時は外観だけで判断せず、製品名・規格および最新の製品情報をご確認ください。
生理食塩液(0.9%NaCl)

生理食塩液は、0.9%の塩化ナトリウム(NaCl)を含む輸液。
電解質としてNaとClのみを含む、いわば塩水。
細胞外液の補充だけでなく、薬剤の溶解・希釈や、急変時のルート確保など、さまざまな場面で使用される。
大量投与では、体液過剰やアシドーシスに注意が必要。特に心不全や腎機能が低下している患者では、投与量や尿量、呼吸状態、浮腫などを確認する。
リンゲル液
リンゲル液は、Na・Clに加えてカリウムやカルシウムなどを含み、血液中の電解質組成に近づけた輸液。
主に細胞外液の補充に使用され、酢酸リンゲル液や乳酸リンゲル液などがある。
酢酸や乳酸は、体内で代謝されることで、酸塩基平衡を保つ働きがある。
酢酸リンゲル液(ソルアセトF・ヴィーンF・フィジオ140)

酢酸を含むリンゲル液。
酢酸は肝臓だけでなく筋肉などでも代謝されるため、肝機能が低下している患者や乳酸が処理しにくくなる病態(ショックや循環不全)などで選択される。
このうち、フィジオ140は1%ブドウ糖とマグネシウムを含むことが特徴。
乳酸リンゲル液(ソルラクト・ラクテック)

乳酸を含むリンゲル液。
脱水や手術中・術後など、幅広い場面で使用される。乳酸は主に肝臓で代謝されるため、重度の肝機能障害などがある患者では注意が必要。
尿量、電解質、血圧、浮腫などを確認する。大量投与による体液過剰や、腎機能低下患者でのカリウム管理に注意が必要。また、カルシウムを含むため、ほかの薬剤との配合変化にも注意する。
ソルデム1・ソリタT1号

ソルデム1とソリタT1号は、主な成分・濃度が同じ開始液で、Na・Cl・乳酸・ブドウ糖を含む。
カリウム(K)を含まないことが特徴で、脱水時の初期補給や、腎機能が低下などによりカリウムの投与を控えたい患者への水分・電解質補給に使用される。
特に腎機能が低下している患者や透析患者では、カリウムを含まない輸液であっても、水分やナトリウムの過剰投与に注意が必要。
ソルデム3A・3AG/ソリタT3・T3G

1号液よりナトリウムが少なく、カリウム(K)とブドウ糖を多く含むため、絶食中や経口摂取が不十分な患者水分・電解質の維持と、少量のエネルギー補給に使用される
いずれも電解質の組成は同じで、「ソルデム3AG」「ソリタT3号G」の「G」はGlucose(ブドウ糖)のG。Gが付く製剤はブドウ糖を多く含むため、エネルギー量も多い。
| 製剤 | ブドウ糖濃度 |
|---|---|
| ソルデム3A・ソリタT3 | 4.3% |
| ソルデム3AG・ソリタT3G | 7.5% |
カリウムを含むため、尿量や腎機能、電解質の確認が大切。
また、ブドウ糖を含むため、高血糖にも注意が必要。
フィジオ35

ブドウ糖を10%含む維持液。500mLで200kcalを補給できるが、アミノ酸は含まず、末梢静脈栄養輸液には分類されない。
ソルデム3Aなどと同様に、水分・電解質の維持とエネルギー補給に使用されるが、カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)・リン(P)も含み、乳酸ではなく酢酸を含む点が異なる。
カリウムなどの電解質や糖質を含むため、尿量・腎機能・電解質・血糖値に注意する。
5%ブドウ糖液

ブドウ糖を5%含む輸液。
水分を中心に補給したいときや電解質を増やさずに水分を追加したいときに使用される。
また、薬剤の溶解・希釈などにも使用される。
500mLで100kcalを補給できるが、十分な栄養補給を目的とした輸液ではない。
生理食塩液との大きな違いは、体内での水分の分布。
生理食塩液は主に細胞外液に分布するのに対し、5%ブドウ糖液はブドウ糖が代謝された後、水分が細胞内にも分布する。そのため、循環血液量が減少している患者の初期補液には適していない。
血糖値、ナトリウム値、尿量、水分出納などを確認する。
特に高血糖や低ナトリウム血症、水分過剰に注意する。
ビーフリード

糖質・アミノ酸・電解質・ビタミンB₁を含む末梢静脈栄養輸液。
他の維持液と異なり、アミノ酸を補給できることが特徴で、経口摂取が不十分な患者の栄養補給などに使用される。
500mLで210kcalを補給できるが、1日に必要なカロリーを補えないため、短期間の栄養管理に使用される。
ビーフリードは、血管痛や静脈炎になりやすい薬剤!刺入部の発赤・腫脹・疼痛・硬結・漏れなどをこまめに確認する。
また、血糖値、電解質、尿量、腎機能なども観察する。
隔壁の開通忘れに注意!
ビーフリードは、上室と下室に分かれた二槽バッグ製剤。投与前には必ず隔壁を開通し、両液を十分に混合する!
上室は アミノ酸・電解質液、下室は 糖・電解質・ビタミンB₁液が入っている。
未開通のまま投与していることに気づいた場合は、投与を中止し、患者の状態と投与済み量を確認して医師へ報告する。
※下室液が投与された後に、慌てて隔壁を開通して残液の投与を続けないこと。
輸液製剤の比較表
各製剤500mL当たりの組成。電解質:mEq、ブドウ糖:g、熱量:kcal
| 製剤名 | Na | K | Cl | ブドウ糖 | kcal |
|---|---|---|---|---|---|
| ■細胞外液補充液 | |||||
| 生理食塩液 | 77 | 0 | 77 | 0 | 0 |
| ソルアセトF | 65.5 | 2 | 54.5 | 0 | 0 |
| ラクテック | 65 | 2 | 54.5 | 0 | 0 |
| ソルラクト | 65.5 | 2 | 55 | 0 | 0 |
| フィジオ140 | 70 | 2 | 57.5 | 5 | 20 |
| ■開始液(1号液) | |||||
| ソルデム1/ソリタT1号 | 45 | 0 | 35 | 13 | 52 |
| ■維持液(3号液) | |||||
| ソルデム3A/ソリタT3号 | 17.5 | 10 | 17.5 | 21.5 | 86 |
| ソルデム3AG/ソリタT3号G | 17.5 | 10 | 17.5 | 37.5 | 150 |
| フィジオ35 | 17.5 | 10 | 14 | 50 | 200 |
| ■糖液 | |||||
| 5%ブドウ糖液 | 0 | 0 | 0 | 25 | 100 |
| ■末梢静脈栄養輸液 | |||||
| ビーフリード | 17.5 | 10 | 17.5 | 37.5 | 210 |
出典:輸液製剤協議会の組成表、各製剤の電子添文
※比較しやすいように、主な電解質(Na・K・Cl)、ブドウ糖、熱量のみを記載しています。Ca・Mg・リン、乳酸・酢酸、アミノ酸など、その他の成分は省略しています。詳しい組成は各製剤情報を確認してください。
どんな輸液が使われるか予想してみよう!
CASE 1 嘔吐・下痢によって細胞外液が失われている患者
血圧低下や頻脈、尿量減少などがみられ、循環血液量が減少している場合には、生理食塩液やリンゲル液などの細胞外液補充液が使用されることがある。
CASE 2 絶食中で、水分・電解質の補給が必要な患者
循環動態が安定しており、経口摂取が不十分な場合には、3号液などの維持液が使用されることがある。ただし、低ナトリウム血症のリスクや、患者の病態に応じた調整が必要。
CASE 3 尿量や腎機能が十分に把握できていない患者
カリウムの蓄積が懸念される場合には、カリウムを含まない開始液などが検討される。ただし、循環血液量の減少が強い場合には細胞外液補充液が必要となる。
CASE 4 経口摂取が不足し、末梢静脈から栄養補給が必要な患者
ビーフリードなどの末梢静脈栄養輸液が使用されることがある。必要な栄養量を満たせるか、栄養状態と投与期間を合わせて評価する。
代表的な使用場面。実際の製剤選択・投与量は病態、検査値、医師の指示などによって異なる。
参考文献
- 輸液製剤協議会.「水・電解質輸液 組成表検索」「栄養輸液 組成表検索」.各社製品の電子添文より抜粋(2026年4月時点).輸液製剤協議会
- テルモ株式会社.「ソルデム1輸液」「ソルデム3A輸液」「ソルデム3AG輸液」「ソルアセトF輸液」「ソルラクト輸液」.各製剤電子添文.PMDA医療用医薬品情報.2026年10月閲覧.
- 陽進堂ホールディングス株式会社.「ソリタ-T1号輸液」「ソリタ-T3号輸液」「ソリタ-T3号G輸液」.各製剤電子添文.2026年4月改訂.PMDA「ソリタ-T1号輸液」.
- 株式会社大塚製薬工場.「ラクテック注」電子添文.2023年3月改訂.
- 株式会社大塚製薬工場.「フィジオ140輸液」電子添文.2023年3月改訂.
- 株式会社大塚製薬工場.「フィジオ35輸液」電子添文.2023年8月改訂.
- 株式会社大塚製薬工場.「大塚糖液5%」電子添文.2025年8月改訂.
- 扶桑薬品工業株式会社.「ヴィーンF輸液」電子添文.2026年10月改訂.
- 扶桑薬品工業株式会社.「酢酸リンゲル液と乳酸リンゲル液の使い分けを教えてください」.2025年2月17日更新.
- 株式会社大塚製薬工場.「ビーフリード輸液」電子添文.2026年5月改訂(第3版).
- 株式会社大塚製薬工場.「ビーフリード輸液 調製時及び投与開始前の隔壁開通確認のお願い」.2026年6月1日.
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA).PMDA医療安全情報 No.61「二槽バッグ製剤(バッグ型キット製剤)の隔壁未開通事例について」.2022年3月.

