手術後の腸閉塞は、手術によって損傷した組織みずから修復するために起きる生体防御反応の1つである腸管癒着による閉塞性イレウスが多い。
癒着は手術後3~6時間で完成するため、癒着予防のためにも手術直後からの体位変換や早期離床の必要性がある。
開腹手術では、消化管の運動は一時的に停止し、手術後には多少の腸管麻痺状態となり、軽度の腹部膨満・鼓動を示すが、これは生理的な腸管麻痺といえる。
一般的に、開腹手術後、胃は24時間、小腸は数時間から10時間、大腸は3日前後で蠕動運動が再開するといわれている。したがって、手術後2~3日で腸蠕動の回復に伴って、腹鳴・排ガスがある。しかし、それ以上経過しても排ガスがなく、腹部膨満が増強する場合は、イレウスが疑われる。
腸閉塞の症状として、吐き気・嘔吐・腹痛・経鼻胃管からの排液増加、腹部単純X線写真での拡張小腸ガス像や鏡面像の存在、金属性の腸雑音聴取などの特徴的な所見がみられるので、早期発見に努める。
目次
観察
- 腸蠕動音…腸蠕動の消失や金属音があるときにはイレウスを疑う
- 腹部XP…イレウス時には二ボー像がみられる
- 腹部症状…嘔吐・腹痛・腹部膨満などの身体所見
- 排ガス・排便の有無…開腹手術では2~3日で大腸の蠕動運動が再開
腸閉塞予防のための対応
早期離床
体位変換や床状での体動や早期離床によって、腸蠕動運動を促す。
疼痛コントロール
疼痛や不安を軽減し、交感神経の興奮を抑えることで、腸蠕動運動を助ける。
排ガス・排便を促す
痛みや恐怖のために、腹圧が十分にかけられない場合には、ガス抜きや医師の指示で浣腸を行い、排便・排ガスを補助する。 腸蠕動運動促進剤を使用することもある。