呼吸音の異常(副雑音)とは?
呼吸音の異常(副雑音)とは、正常な呼吸では聴こえない異常な音のこと。
この副雑音は、連続しているか、途切れているか、高い音か低い音かといった性状により、どのような異常が起きているのかを推測することができる。
呼吸の異常は、生命に影響を及ぼすことも多いため、看護師として、副雑音の種類と特徴を知り、観察や対応につなげることが重要となる。
副雑音 ① 笛声音(Wheeze:ウィーズ)
=高調性連続性副雑音「ヒュー」「ピー」
この音は何を意味する?

細い気管支が狭窄・閉塞しているサイン。
気道内腔が狭くなることで、空気が細い通路を通過する際に振動し、笛様音として聴取される。
予測される病態
- 気管支喘息
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 気道浮腫
- 気道分泌物の増加
- アレルギー反応による気管支攣縮
特に呼気時に強く聴取される喘鳴は、細い気管支の狭窄を示唆する。
観察ポイント
呼吸状態の観察
- 呼吸数・SpO₂
- 努力呼吸の有無
- 補助呼吸筋の使用
- チアノーゼの有無
- 意識レベルの変化
聴診時のポイント
- Wheezeの強さ・範囲
- 吸気・呼気どちらで聴取されるか
- 音が増強・減弱していないか
看護師の対応
安楽な体位調整
⇒ 上半身挙上(ファウラー位)により呼吸仕事量を軽減する
喘鳴時のDr指示確認
⇒ 吸入薬(β₂刺激薬など)・ステロイド・酸素投与の指示有無を確認
必要時、酸素投与
⇒ SpO₂を指標に適切な流量で開始し、効果を評価する
報告
⇒ 副雑音の種類・出現部位・変化、SpO₂、呼吸状態を具体的に報告する
副雑音 ② 水泡音(Coarse crackles:コースクラックル)
= 粗い断続性副雑音「ゴロゴロ」「ブツブツ」
この音は何を意味する?

気道内に分泌物が貯留しているサイン。
比較的太い気道内に貯留した分泌物(水や痰)に空気が通過することで、粗く不連続な音として聴取される。
予測される病態
- 肺炎
- 急性気管支炎
- 慢性気管支炎
- 気道分泌物の貯留
咳嗽や吸引後に音が変化・消失しやすいことが特徴!
観察ポイント
呼吸状態の観察
- 呼吸数・呼吸リズム
- SpO₂の低下
- 努力呼吸の有無
- 発熱の有無
- 咳嗽・喀痰の量・性状
聴診時のポイント
- 音の強さ・範囲
- 吸気時を中心に聴取されるか
- 咳嗽・排痰後の音の変化
看護師の対応
安楽な体位調整
⇒ 体位ドレナージを意識し、分泌物の移動を促す
痰がたまっている気管支の中枢側(出口)が下になる体位をとることで、排出しやすくなる!
排痰援助
⇒ 咳嗽介助、必要時吸引を実施。
Coarse cracklesは「動く音」であり、
咳嗽や吸引で変化するかを必ず評価する。
水分管理
⇒ 痰の粘稠度を下げるため、脱水の有無を確認
Dr報告
⇒ 発熱、喀痰性状、副雑音の変化を具体的に報告する
副雑音 ③ 捻髪音(Fine crackles:ファインクラックル)
= 細かい断続性副雑音「パリパリ」「チリチリ」
この音は何を意味する?

主に肺胞レベルの病変のサイン。
硬くなった肺胞が、吸気時に開いていくことで生じる。
予測される病態
- 間質性肺炎
- 肺線維症
- 心不全(肺うっ血)
- 無気肺(初期)
咳嗽では消失しにくいことが特徴。
観察ポイント
呼吸状態の観察
- 呼吸数・SpO₂
- 労作時呼吸困難の有無
- 起座呼吸の有無
- 下腿浮腫(心不全疑い時)
聴診時のポイント
- 吸気終末に聴取されるか
- 音の左右差・範囲
- 経時的変化
看護師の対応
体位調整
⇒ ファウラー位〜起座位とし、静脈還流を減らし呼吸困難を軽減する
酸素化の評価
⇒ SpO₂低下時は速やかに酸素投与を検討し、効果を評価する
心不全の評価
⇒ 体重変化・尿量・浮腫を即時確認し、肺うっ血進行を評価する
Dr報告
⇒ 副雑音の聴取部位・範囲、SpO₂、体重変化、浮腫の有無を具体的に報告する
副雑音④ いびき音(Rhonchi:ロンカイ)
= 低調連続性副雑音「グー」「ブー」
この音は何を意味する?

太い気道に分泌物が貯留しているサイン!
予測される病態
- 慢性気管支炎
- COPD
- 気道分泌物貯留
咳嗽や吸引で消失しやすい音!
観察ポイント
呼吸状態の観察
- 呼吸数・SpO₂
- 咳嗽力の有無
- 喀痰量・性状
聴診時のポイント
- 音の低さ・連続性
- 咳嗽前後の変化
- 聴取部位の広がり
看護師の対応
排痰援助
⇒ 咳嗽介助・吸引を適切に行う
水分管理
⇒ 分泌物の粘稠化を防ぐ
体位調整
⇒ 気道確保と排痰を意識した体位
Dr報告
⇒ 音の変化と排痰状況を共有する
副雑音⑤ 吸気性喘鳴(Stridor:ストライダー)
= 吸気性の高調性連続性副雑音「ヒィー!」
この音は何を意味する?

上気道の高度狭窄・閉塞を示す危険なサイン!!!
予測される病態
- 喉頭浮腫
- 気道異物
- クループ症候群
- 腫瘍による気道圧迫
観察ポイント
呼吸状態の観察
- 吸気時の努力呼吸
- SpO₂低下
- 陥没呼吸
- 不穏・意識レベル低下
聴診・視診時のポイント
- 吸気時に強く聴取されるか
- 発声困難・嗄声
- チアノーゼの有無
看護師の対応
体位調整
⇒ 気道を確保できる体位を最優先
速やかなDrコール
⇒ Stridorは緊急性が高いため、即報告!応援要請!
酸素投与
⇒ 指示を待たず準備・対応
緊急対応準備
⇒ 気道確保、挿管を想定し準備、エピの準備(アナフィラキシーの場合)
参考文献
1.日本呼吸器学会.
呼吸器診療ガイドライン.日本呼吸器学会,2023.
2.日本循環器学会,日本心不全学会.
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2021年改訂版).日本循環器学会,2021.
3.日本看護協会.
フィジカルアセスメントガイドブック.医学書院,2022.
4.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会.
呼吸ケア・リハビリテーションマニュアル.照林社,2020.
5.日本救急医学会.
救急診療指針.へるす出版,2022.
6.McGee S.
Evidence-Based Physical Diagnosis. 4th ed. Elsevier, 2021.
7.Bickley LS.
Bates’ Guide to Physical Examination and History Taking. 13th ed. Wolters Kluwer, 2021.
8.UpToDate®.
Overview of lung sounds. Wolters Kluwer, 2024.

