バスキュラーアクセスカテーテルとは?

透析で使用するバスキュラーアクセス(血液の出入口)の1つで、内頸や鎖骨下など太い静脈にダブルルーメンまたはトリプルルーメンカテーテルを挿入し、カテーテルから脱血・返血を行う。
ブラッドアクセスカテーテルや透析用カテーテル、バスキャス(メディコンが発売する緊急用ブラッドアクセスカテーテルの製品名)とも呼ばれている。
CVカテーテルと何が違うの?
血液透析では大量の血液を循環させるため、点滴目的のCVカテーテルより太く設計されている。また、バスキュラーアクセスカテーテルは長期使用を目的とするカテーテルの場合、感染リスクや血栓形成のリスクを減少させるためのカフがついていたり、CVカテーテルでは薬剤による影響が少ない材質で作られたり、パッと見は似ているが、細かい機能性に違いがある。
適応
- AVF(自己血管による動静脈シャント)・AVG(人工血管による動静脈シャント)が造設困難な場合
- 重度の慢性心不全
- 動脈表在化でも血流が十分にとれない場合
- シャント造設が間に合わないとき
- 四肢拘縮などで穿刺が困難
- 穿刺痛が高度
- 急性腎不全や敗血症で緊急で血液浄化療法を行う場合
バスキュラーアクセスカテーテルの種類
短期留置カテーテル=非カフ型カテーテル

シャントなどのバスキュラーアクセスの造設が透析に間に合わなかったり、造設したが、発達するまでの期間に一時的に使用される。
留置期間は3週間を目処とする。(日本透析医学会雑誌 2005より)
長期留置カテーテル=カフ型カテーテル

大きな仕組みは変わらないが、血管から皮膚の出口までに距離をもたることで、生活への支障が少ない胸部にカテーテルの出口をもってくることができる。また、皮下組織にカフ(フェルト)を癒着させることで抜去リスクと感染リスクが減り、長期的に使用可能。
安全に機能するかぎり制限なく使用できるが、材質の劣化などを考慮したうえで6カ月~1年程度を目安にカテーテル・接続部を交換することが望ましいとされている。(日本透析医学会雑誌 2005より)
バスキュラーアクセスカテーテルの先端位置
カテーテルの先端は、内頸静脈から挿入した場合、右心房と上大静脈の接合部(右心房のギリギリ手前)に位置するのが理想的。
多くの製品で不整脈や心タンポナーデの原因となるため、右心房内への挿入は禁止されているが、高齢者や小児では、右心房まで挿入しないと十分な血流が得られない場合もあり、右心房内に挿入されるケースもある。
バスキャスカテーテルの管理
1,脱血確認とヘパリン充填
バスキャスカテーテルは、血栓の除去と閉塞予防のために、透析前後にカテーテル内のフラッシュとヘパリンの充填を行うが、非透析日にも病棟で脱血確認とヘパリンの充填を行うことがある。
日本透析学会の2005年発表の『短期型バスキュラーカテーテル留置』に関してのガイドラインによれば、『ガーゼ交換とヘパリンロックなどの抗凝固療法は、毎日行うよりも少ない頻度のほうが感染率は低いので透析日のみとし、その際出口の観察を行い感染の有無をチェックする。
しかし、カテーテル内血栓防止の観点からは、非透析日にもヘパリンロック等の必要な例もあるため両者の優位性を考慮し対応する』と記載あり。
『長期型バスキュラーカテーテル留置』に関してのガイドラインでは、『非透析時にはカテーテル内容量に応じたヘパリンロックを行う』とある。
しかし、最近の研究では、ヘパロックと生食ロックで閉塞リスクに差はないという結果が示されたり、ヘパリンよりt‐PAを使用した方がカテーテルの機能不全や菌血症の発生率も大幅に低下することが明らかとなり、ヘパロックの有効性は疑問視されているところ。
現時点で、『非透析日にヘパロックは不要』とされる明確な規定はなく、施設や医師によって対応は異なる。非透析日にも脱血確認とヘパリン充填を行う医療機関も多いため、実施の有無や回数、使用するヘパリンの単位や濃度は各病院のプロトコルを確認する!
必要物品
- 処置用シーツ
- アルコール綿
- 10㏄シリンジ2本
- 生食シリンジ10ml2本
- ヘパリンNa1000単位~2000単位
- ビニール袋
- 未滅菌ガーゼ(ビニール袋にセットせいておく。)
手順
- カテーテルの先端部下に未滅菌の処置用シーツを敷く。
- カテーテルを保護しているガーゼを外す。
- V側(返血側の青)の接続部をアルコール綿で清拭する。
- 10ml(ロック)シリンジを接続する。
- クレンメを開放したら7ml血液を吸引し、クランプする。
- シリンジを外し、ガーゼを敷いたビニール袋に血液を破棄しながら、血栓の有無をチェックする。
- 血液を吸引した接続部をアルコールで再度消毒する。
- 生食5mlのシリンジをカテーテルに接続しフラッシュする。
- 続いてヘパリンを吸ったシリンジを接続し、カテーテル内を充填する。
- A側(脱血側の赤)もV側同様に消毒、血液の吸引、フラッシュ、ヘパリンの充填を行う。
2,感染予防と消毒
カテーテル感染を予防するために毎日、感染兆候(発赤・浸出液)の有無の観察を行い、適宜消毒を行う。
基本的には、透析後、入浴後、発汗時、汚染時に行うことが推奨される。
必要物品
- クロルヘキシジングルコン酸塩エタノール含有綿棒(ヘキザック) 2本
または、10%ポピドンヨード含有綿棒 - 酒精綿2P
- ドレッシング材
- テープ
- 滅菌ガーゼ
- 滅菌攝子
- 処置用シーツ
- ゴミ袋
手順
- 固定テープをきれいに外す。
- カテーテルに付着したテープ糊も酒精綿できれいに取り除く。
- 出口部の観察を行う。
発赤・腫脹・浸出液の有無を確認し、感染兆候がみられる場合には医師に診察を依頼し抗菌薬の指示をもらう。また、挿入の長さやナートを確認し、先端位置がズレていないかチェックする。 - ヘキザックで出口部を消毒する。
内側から外側に向かって面を変えながら円を描くように消毒する。 - 新しいヘキザックに変えて1回目より狭い範囲で消毒を行う。
- 乾燥後、施設のプロトコルに従い、滅菌ガーゼやドレッシング材を用いて出口部を密閉する。
- テープ固定を行う。
バスキャスの疑問
Q1、点滴をしても良いのか
感染リスクが高まるため、原則使用できない。ただし、末梢静脈への穿刺が困難な場合には、医師の指示をうけて使用することもできる。
Q2、採血をしても良いのか
定期の採血であれば透析を回しながら透析室で行うことが多いが、非透析日などに緊急で採血がでる場合がある。
基本的には、血栓予防や感染予防の点で採血に使用することは推奨されないが、末梢からの採血が困難で、緊急を要する場合にはDrに確認し使用することもある。(CVカテと同じ。)
脱血側・返血側どちらから採血をするか?については、脱血側(赤)から行うことが推奨される。これは、カテーテルの構造的に脱血側がより直接的に血流にアクセスしているため、採血に適しているから。