一過性脳虚血発作(TIA)の病態と看護

目次

一過性脳虚血発作(TIA)とは?

TIA(一過性脳虚血発作)

一時的に脳への血流が低下し、麻痺や痺れ、構音障害など神経学的な症状が一過性に出現する状態を言う。症状は通常24時間以内(多くは1時間以内)に消失し、後遺症を残さない。

しかし、TIAが発生した場合、その後に脳梗塞を発症するリスクが高いとされるため、早急な診断と治療が必要となる。

臨床的には15~20分で消失する場合が多い。

原因

TIAの主な原因は、一時的な脳の虚血で、原因としては以下の要因が考えられる。

  1. 動脈硬化
    頸動脈や脳動脈の動脈硬化が血流障害を引き起こす。
  2. 心原性塞栓症
    心房細動や弁膜症などにより心臓から血栓が脳に流れる。
  3. 血圧低下や血流低下
    起立性低血圧、心不全、大動脈弁狭窄症などによって脳への血流が不足する。
  4. 過度な血管攣縮
    脳血管が一過性に強く収縮することで起こる。

病態

脳への血流が一時的に遮断されることで、脳細胞が一時的に酸素や栄養を受け取れなくなる。通常、原因となる血栓や塞栓が自然に溶解するため、症状が一過性に消失する。

症状

発症部位により異なるが、以下のような神経学的症状が突然現れる。

  • 運動障害 
    片側の麻痺や脱力(片麻痺)。
  • 感覚障害
    一側性のしびれ、感覚低下。
  • 視覚障害
    一過性の視力低下(片眼性または両眼性)。
  • 言語障害
    構音障害、失語症。
  • その他
    めまい、ふらつき、意識障害など。

合併症

脳梗塞

TIA後90日以内に脳梗塞を発症するリスクが高い(特に発症後48時間以内)。

再発TIA

適切な治療が行われない場合、TIAが繰り返される可能性がある。

検査

TIAは症状が消失しているため、診断には画像検査や血管評価が重要となる。

画像検査

  • MRI(拡散強調画像:DWI)
    軽微な梗塞巣を検出可能。
  • CT
    急性期の脳出血を除外する。

血管評価

原因検索や再発予防のために、血管・心臓の評価を行う。

  • 頸動脈エコー
    動脈硬化や狭窄の有無を評価。
  • MRAやCTA
    脳血管の狭窄や閉塞の有無を確認。

心機能評価

  • 心電図
    心房細動や不整脈の有無を確認。
  • 心エコー
    心臓内血栓の有無を確認。

血液検査

  • 血糖値、脂質プロファイル、凝固系検査。

診断

診断には以下が必要となる。

1,神経学的症状が、24時間以内に消失する。
2,画像検査で脳梗塞の所見がないこと。

脳梗塞の移行リスクを評価するためには、以下の『ABCD²スコア』を用いる。
この指標は、TIAの診断に直接用いるものではないが、脳梗塞への進展リスクを予測し、対応の優先度を判断するための重要な評価ツールである。

脳梗塞リスクの指標「ABCD²スコア」

Age
年齢
60歳以上1点
Blood Pressure
血圧
≧140/90mmHg1点
Clinical Features症状片麻痺2点
言語障害のみ1点
Duration
持続時間
60分以上2点
10~59分1点
Diabetes
糖尿病
あり1点
総合スコア2日以内の脳梗塞リスク推奨される対応
0~3点低リスク(1%以下)外来で精査・フォロー
4~5点中リスク(4~5%)迅速な画像検査と専門医評価
6~7点高リスク(8%以上)即日入院

治療

TIAは脳梗塞の予防を目的とした治療を行う。

1. 急性期の対応

  • 抗血小板薬
    • アスピリン(低用量):血小板凝集を抑制。
    • クロピドグレル:アスピリン不耐性の場合や効果不十分な場合に使用。
  • 抗凝固薬
    • ワルファリン、DOAC(ダビガトランなど):心房細動や心原性塞栓症が疑われる場合。
  • 血圧管理
    • 高血圧を適切に管理する。

脳虚血が進行中の脳梗塞とは異なるが、急激な降圧により再灌流が妨げられるリスクがある。そのため、収縮期180mmHg超でも直ちに降圧せず、全身状態や持続性・随伴症状をもとに医師へ報告し、降圧指示を確認する!

2. 長期管理

  • 生活習慣の改善
    • 禁煙、適度な運動、バランスの取れた食事。
  • 基礎疾患の管理
    • 糖尿病、高血圧、高脂血症の治療。

看護計画

長期目標

  1. 患者が再発予防の重要性を理解し、生活習慣を改善できる。
  2. TIA再発・脳梗塞発症なく安定した日常生活を維持できる。
  3. 内服治療を継続し、定期通院ができる。

短期目標

  1. 発症早期に再発徴候を的確に観察・報告できる。
  2. 血圧・血糖の管理が適切に実施できる。
  3. 服薬・検査・通院の必要性を理解できる。

O-P(観察計画)

  1. 意識レベルの変化(JCS、GCS)
  2. 神経症状(麻痺、構音障害、視野障害など)
  3. バイタルサイン(特に血圧)
  4. 服薬状況の確認
  5. 不安・ストレス状態の観察

T-P(援助計画)

  1. 薬剤の内服援助・管理
  2. 安静指導と転倒予防対策
  3. 診療や検査への付き添い・説明補助
  4. 栄養士やリハビリスタッフとの連携

E-P(教育計画)

  1. TIAの再発予防の重要性
  2. 生活習慣(減塩、禁煙、運動など)の見直し
  3. 心房細動や高血圧などリスク因子の管理
  4. 症状が再発した際の対応(速やかな受診)

参考文献

  1. 日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021』
  2. Easton JD, Saver JL, et al. “Definition and Evaluation of Transient Ischemic Attack: A Scientific Statement for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association.” Stroke. 2009.

おすすめ!看護師転職サイト比較一覧【PR】

サイト評価求人数特徴詳細
旧:ナース人材バンク
4.6
はなまる
200,000
2024年オリコン顧客満足度1位! 
レバウェル看護
4.5
はなまる
150,000
好条件求人が多い定番人気サイト!
ナースではたらこ
4.2
はなまる
95,000
希望病院へ採用の提案が可能!
マイナビ看護師
3.8
はなまる
81,000
退職・就職まで手厚いサポート無料登録
ナースパワー
3.2
まる
45,000
短期で稼げる応援ナースが人気
ナースジョブ
4.0
まる
50,000
北海道大阪岡山福岡に強い
MCナースネット
2.9
まる
20,000
単発求人探すならココ!
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次