個人防護具(PPE)とは?
個人防護具(Personal Protective Equipment, PPE)とは、職場や日常生活において、感染症、化学物質、物理的損傷から個人を保護するために設計された装備。
PPEには、ガウン、マスク、ゴーグル・フェイスシールド、キャップ、手袋が含まれる。
個人防護具(PPE)の種類とその役割
手袋 | 感染経路として最もリスクの高い手指に体液や血液が直接接触しないようにする。 |
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サージカルマスク | 口と鼻を覆うことで、着用者の飛沫を周囲へ広げない。また、他者の飛沫が鼻や口に入るのを予防する。 |
N95マスク | 空気感染のリスクがある場合、エアロゾル(飛沫核)の吸入を防ぐ。 |
ゴーグル フェイスシールド | 顔全体を体液や飛沫による汚染から保護する。また目の粘膜からの感染リスクを防ぐ。 |
キャップ | 飛沫や体液による頭髪の汚染や、それにともなう感染拡散を防ぐ。 |
シューカバー | 感染性物質が靴に付着を予防し、別の場所への拡散を防ぐ。 |
個人防護具(PPE)の着用手順

【PDF】PPE装着手順
【PDF】PPE装着手順(ポイント解説付き)
院内プロトコルに応じた手順が必要な場合は、お問い合わせからご連絡ください。多少の変更は対応できます。
着用を開始する前にまず、手指衛生を行う、アルコールの手指消毒剤を使用して、手指全体をしっかり消毒するか、流水と石鹸で手洗いする。
汚染リスクが高い処置(喀痰吸引やオムツ交換など)を行う場合、手袋の2枚重ねが推奨される医療機関も多い。
その場合、内側の手袋は一番最初に装着する。
袖を通し、背中側でしっかりとヒモを結ぶ。ガウンが皮膚や衣類を完全に覆うようにする。
鼻と口を完全に覆うように装着する。鼻のブリッジ部分をしっかりとフィットさせ、顔に密着させる。
髪の毛がすべて覆われるように装着する。
顔に密着させ、視界を遮らないように調整する。
手袋を1枚装着する場合と、二重にする場合の外側の手袋は、最後に装着する。
手首部分までしっかりと覆われるようにする。ガウンの袖口に手袋を重ねて、皮膚が露出しないようにする。
個人防護具(PPE)の脱衣手順

【PDF】PPE脱衣手順
【PDF】PPE脱衣手順(ポイント解説付き)
【PDF】PPE脱衣手順(内側手袋なし)
【PDF】PPE脱衣手順(内側手袋なし、ポイント解説付き)
手袋の外側は最も汚染されている可能性が高く一番最初に外す。
外側をつまんで片方の手袋を中表にして外したら、そのまま手袋を丸めて持ち、手袋を脱いだ方の手は汚染された部分に触れないよう内側から掴んで裏返しながら外す。
※破棄後、手指衛生を行う。
首と腰の結び目を解き、肩からゆっくりとガウンを脱ぐ。脱ぐ際、自分の体や床にガウンが触れないように前に引っ張りながら、内表にして丸め、破棄する。
※破棄後、手指衛生を行う。
頭のバンド部やテンプル(耳に当たる側面)を持ち、前方に向かって外す。
表面は飛沫が付着している可能性があるため、顔や手にふれないよう注意する。
※破棄後or 清拭後、手指衛生を行う。
汚染の可能性が低い後頭部側をつまみ外す。この時、外側の汚染面が、顔や髪に触れないようにする。
※破棄後、手指衛生を行う。
マスクのゴム紐を後頭部から前に引く形で外し、廃棄する。マスクの外側には飛沫が付着している可能性があるため、外すときに顔に触れないよう注意する。
※破棄後、手指衛生を行う。
手袋を二重で装着した場合は、内側は準清潔と考え、最後に外す。
※破棄後、手指衛生を行う。
N95マスクの着脱方法

装着方法
破損や汚れがないか目視で確認し、異常があれば破棄し新しいものを使用する。
マスクで鼻と口を覆ったら、上部の金属部分を鼻の形に合わせて密着させる。
2本のヒモは、頭頂部に近い後頭部と首の後ろにかける。
適切に装着できているかフィットチェックを行う。
マスクの外側を両手で軽く覆い、吸気時にマスクが吸い付くか、呼気時に鼻やマスクの端から空気が漏れていないか確認する。
吸い付かなかったり、空気が漏れる場合は、金属部分やゴム紐を再調整する。
N95マスクの在庫が限られている医療機関も多いため、1日1人1個として再利用する場合も多い。
その場合、N95の表面が汚染されないよう、上からサージカルマスクを装着する。
脱衣方法
マスク本体に触れずに、まず首の後ろのひもを外し、次に後頭部のヒモを外す。
マスク本体に触れないようにヒモを持ち破棄する。
再利用する場合には、内側が汚染されないように注意しなら、清潔な容器や袋に入れ、使用者の名前を記載する。
各防護具を外した後には、必ず手指衛生を行う。
余談ですが!N95マスクの『N95』って?
Nは、not resistant to oilの略で、油性のエアロゾルに対する耐性を持たないことを示す。ちなみに油分を含むエアロゾル環境(←工業や製造業)では「R」(耐油性あり)や「P」(耐油性と耐水性あり)の規格が使用される。
『95』はフィルター性能で、0.3ミクロン以上の粒子を95%以上捕集できることを意味する。
参考文献
1,厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症対応ガイド(医療機関向け). 2021年改訂.
厚生労働省ホームページ. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00138.html. (最終アクセス日:2024年11月4日)
2,Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Guidance for the Selection and Use of Personal Protective Equipment (PPE) in Healthcare Settings.
CDC Website. https://www.cdc.gov/hai/pdfs/ppe/PPEslides6-29-04.pdf. (最終アクセス日:2024年11月4日)
3,World Health Organization (WHO). Infection prevention and control during health care when novel coronavirus (nCoV) infection is suspected: Interim guidance. WHO; 2020.
WHO Website. https://www.who.int/publications/i/item/10665-331495. (最終アクセス日:2024年11月4日)
4,日本環境感染学会. 医療関連感染制御ガイドライン 第4版. 2021年.
日本環境感染学会ホームページ. https://www.kankyokansen.org/. (最終アクセス日:2024年11月4日)
5,厚生労働省 新型インフルエンザ等対策有識者会議報告書. 2013年.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikikanri.html. (最終アクセス日:2024年11月4日)