抗生剤は配合変化しやすい!
抗生剤には、他の薬剤と混ざると化学的変化(分解・酸化)や物理的変化(沈殿・結晶化・白濁)を起こすものが多い。
そのため、配合禁忌や安定性の問題から、単独での投与が必要となる場合がある。
ここでは、実際に投与を行う看護師として知っておきたい、
「原則同時投与禁止の抗生剤」と「特定薬剤との配合注意が必要な抗生剤」について整理する。
単独投与のルール
他剤との混合・同時投与は禁止

側管(サイドチューブ)からの同時投与は、禁止。
前後のフラッシュを必ず行う
1ルートしかない場合には、抗菌薬投与前後に生理食塩水で5〜10 mL程度のフラッシュを実施し、ライン内の残留薬剤を除去する。
CVカテーテルは別ルーメンなら可
CVカテーテルは中心静脈に留置されており、血流も早く、体内で配合変化を起こすリスクは極めて低いため、別ルーメンであれば同時投与可能とされることが多い。
原則、単独投与が推奨される抗生剤
セフトリアキソン

商品名:セフトリアキソン、ロセフィン
カルシウム含有製剤と沈殿形成する可能性がある。
新生児では致死例あり。必ず単独ラインで投与する。
| Ca含有 | × リンゲル液(ソルラクト、ラクテックなど) × 高カロリー(エルネオパなど) |
| Caなし | 〇 生理食塩水 〇 5%糖液 |
バンコマイシン

商品名:バンコマイシン
酸性の製剤のため、アルカリ性の薬剤と混合すると白濁・析出を起こす。
特にβラクタム系の抗生剤(セフェム系やペニシリン系など)と相性が悪く、薬効が低下するため、必ず単独投与とする。
テイコプラニン

商品名:タゴシッド
pH変化に弱く、混合により白濁・析出を起こす可能性がある。
単独ルートでの投与が推奨される。
ミカファンギンナトリウム

商品名:ファンガード注射用
ファンガードはpHや溶液中の成分によって、沈殿、分解が起きやすい。
配合注意が必要な抗生剤
メロペネム

商品名:メロペン
分解しやすく、混ぜる相手や輸液の種類により安定性が大きく変化する。
- 高カロリー(エルネオパなど)
- 乳酸リンゲル液(ソルラクトなど)
- アミノ酸製剤(アミノレバン、パレプラスなど)
- アミノグリコシド系(ゲンタマイシン、アミカシン 等)
イミペネム

商品名:チエナム
非常に分解しやすく、混ぜる相手によってすぐに効力が落ちる。
- 高カロリー(エルネオパなど)
- 乳酸リンゲル液(ソルラクトなど)
- アミノ酸製剤(アミノレバン、パレプラスなど)
- 他の抗生剤(特にアミノグリコシド系やバンコマイシンなど)
ピペラシリン

商品名:ゾシン
他の薬と混ぜると沈殿や分解を起こしやすい。
- 高カロリー(エルネオパなど)
- 乳酸リンゲル液(ソルラクトなど)
- バンコマイシン
- アミノグリコシド系(ゲンタマイシン、アミカシン 等)
セファゾリン

商品名:セファメジン
アルカリ性やカルシウムを含む製剤と混ぜると、沈殿ができることがある。
- アミノグリコシド系(ゲンタマイシン、アミカシン 等)
- 炭酸水素ナトリウム(重曹注)
- 乳酸リンゲル液(ソルラクトなど)
- 高カロリー(エルネオパなど)
レボフロキサシン

商品名:クラビット
金属イオンやアルカリ性の薬と混ざると沈殿や分解が起こる。
- 炭酸水素ナトリウム(重曹注)
- 金属イオンを含む輸液(Ca、Mgなど)
- 高カロリー(エルネオパなど)
- 他の抗生剤
参考文献
- 日本病院薬剤師会『注射薬の配合変化ハンドブック 第9版』薬事日報社, 2023.
- 日本化学療法学会『抗菌薬適正使用のためのガイドライン2023』, 2023.
- 厚生労働省『高カロリー輸液製剤の安全使用の手引き 2023年版』, 2023.
- 第一三共株式会社『メロペン®点滴静注用 インタビューフォーム(改訂第15版)』, 2024.
- MSD株式会社『チエナム®/ゾセラ® インタビューフォーム』, 2023–2024.
- ファイザー株式会社『ゾシン®点滴静注用 インタビューフォーム』, 2024.
- 塩野義製薬株式会社『セファメジン®点滴静注用 インタビューフォーム』, 2023.
- 第一三共株式会社『クラビット®点滴静注用 インタビューフォーム』, 2024.
- アステラス製薬株式会社『ファンガード® インタビューフォーム』, 2024.
- Trissel, L.A. Handbook on Injectable Drugs, 22nd ed., ASHP, 2022.

