気管切開の基本と看護ケア

目次

気管切開の目的

気管切開の目的

気管切開は、長期的な人工呼吸器管理や気道確保にともなう苦痛を軽減する目的で行われる。

経皮的に気管を切開し、チューブを留置することで気道が確保される。

気管切開の適応

  • 上気道の狭窄・閉塞
    (腫瘍、炎症、熱傷、異物など)
  • 長期的な人工呼吸管理
    (重度意識障害、呼吸不全など)
  • 気道分泌物が多く自己排痰ができない
  • 頸部損傷の恐れがあり頸部後屈が出来ない

気管切開の種類

一時的気管切開

一時的気管切開イメージ

上気道の閉塞や肺炎予防、呼吸不全など一時的な要因に行う。
症状を取り除けば、気管切開チューブを抜去し気管切開孔を閉じることができる。

永久的気管切開(永久気管孔)

永久的気管切開(永久気管孔)イメージ

咽頭・喉頭腫瘍による切除、根治困難な上気道閉塞、難治性の神経筋疾患などによる誤嚥など、気管切開を必要とする傷病を取り除くことができない場合に選択される。

基本的な気管切開チューブの構造と形状

基本的な気管切開チューブの構造と形状

【訂正とお詫び】上記イラストに、一部誤りがございましたので、2024年9月5日訂正しました。
【誤りの内容】②インフレーションチューブが⑤カフ上部の吸引口につながるイラスト
【訂正内容】④カフ上部吸引ラインから⑤カフ上部吸引口につながるイラスト
※イラストの反映に時間がかかる場合がございます。

  • パイロットバルーン:ここにシリンジを接続しカフを注入すると、パイロットバルーンも膨らみ、カフの状態を確認することができる。バルーンは耳たぶ程度の堅さに管理する。
  • インフレーションチューブ
  • コネクタ(ターミナル):人工呼吸器などを接続できる。
  • カフ上部吸引ライン:カフ上部にたまった分泌物を吸引できるようになっている。
  • カフ上部吸引口:この周囲にたまった唾液や痰などの分泌物を④カフ上部吸引ラインより吸引できる
  • カフ:カフを膨らませ、気管の内壁に密着固定する。また、カフは唾液などの分泌物が下気道へ流入することを防止している。
  • ウイング(ネックプレート):首にフィットさせ固定する。

気管切開チューブの種類と選択方法

気管切開チューブの種類と選択方法

カフの有無

「カフあり」は、人工呼吸器装着中や気道分泌が多く誤嚥の可能性がある患者に用いられる。

一方「カフ無」は、小児や慢性的な気管切開で誤嚥の危険性が低い患者に使用される。
シンプルな構造で患者の違和感も少ないが、自然抜去や上気道分泌物の誤嚥といったリスクがある他、人工呼吸器が装着できないというデメリットがある。

カフ上部の吸引ラインの有無

カフ上部に吸引ラインは、カフ上部に貯留した分泌物を吸引できる。
唾液や鼻汁などの分泌物が多い場合や、気管切開チューブを長期間留置する場合に有効。

単管式と複管式

複管式は、チューブを2重構造にすることで、チューブの汚染時に内筒を交換するだけで清潔を保つことができる。

つまり、分泌物が多い患者には、容易に交換ができて狭窄や閉塞を予防できる複管式のチューブが有効。
ただし、単管式よりもコストが高く、内径が狭いというデメリットがある。

側孔(窓)の有無

気切チューブ:側孔(窓)の有のイメージ図

チューブの背の部分に呼気が抜ける穴(側孔)が開いている。
コネクタを塞いだり、一方弁(スピーチバルブ)を装着することで、発声が可能になる。

一般的にスピーチカニューレと呼ばれる。

特殊形状

上記以外に、特定の疾患に適した特殊な形状の気管切開チューブもある。

T字管(Tチューブ)・永久気管

管喉頭気道狭窄や咽頭がんの場合の気道狭窄予防に用いられる。

レディナ

意識があり呼吸状態は比較的良いが、呼吸訓練や痰の吸引が必要な場合や、腫瘍の増大が予測される時など、気管切開口を保持しておきたい場合に用いられる。

ダブルカフ/アジャスタブルフランジ

肥満のために体表から気道までの距離が長い場合 気道の変形などで通常のチューブが使えない場合に用いられる。

気管切開の合併症

気管切開から瘻孔完成まで

  • 大出血

チューブ先端やカフの圧迫により気管腕頭動脈に瘻孔を生じると、大出血する。
もし出血した場合には、医師が来るまで閉塞させないよう吸引を頻回に行う。

  • 皮下気腫・縦郭気腫・気胸

気管外への迷入時のみならず、きちんと気管内に留置されている場合も起こりうる。気管切開直後は、周辺組織がもろいため、皮下や縦郭にエアが漏れやすく、そこから気胸に進展する場合も。

  • 気管損傷
  • 気管切開創部の感染
  • 気管切開チューブの気管外への迷入

気管切開チューブ留置中

  • 肉芽の形成・気道狭窄

気管切開孔周囲や、吸引カテーテルでで繰り返し刺激する気管粘膜に肉芽(茶褐色の肉の盛り上がり)が形成される。肉芽ができると、痛みが出たり、出血する恐れがある。また大きなものは、気道狭窄の原因となるため、気管支鏡も用いてメスやレーザーなどで摘出する。

  • 粘性痰による気道閉塞
  • 嚥下障害

気管切開チューブによる嚥下時の咽頭の挙上運動の障害、カフによる食道の圧迫や閉塞が原因となる。

  • チューブ交換時の気管損傷
  • 肺炎

気管切開チューブ抜去後

  • 気道狭窄

不適切な手術操作や切開部位、過剰なカフ圧、炎症による瘢痕が原因となる。留置中は過剰な力がかかなりような管理が重要となる。

  • 気管切開孔の閉鎖不全

創感染が一因となる。

  • 排痰困難による気道閉塞
  • 呼吸仕事量増加による呼吸筋疲労

気管切開チューブの固定方法

綿テープを用いる場合

気切チューブ固定時の綿テープ(KOKEN)


引用:KOKEN

ホルダーに比べ安価で容易に交換できるというメリットがある一方、皮膚との接触面積が小さいため、皮膚との摩擦や圧迫により表皮剥離などの皮膚損傷を起こすことがある。
その場合、ひもにガーゼを巻いて保護するなどの対策を取る。

  1. 綿ひもを端から10㎝程度のところで折る
  2. その輪を、フレームに対し、下から上に通す。
    気管切開チューブの固定方法1
  3. できた輪に、綿テープのもう1端を通す
  4. 通した綿テープを引っ張り固定する。
    これを左右どちらも行う。
    気管切開チューブの固定方法2
  5. 左右のそれぞれ長い方のテープを後ろに通し、短いテープと固結びする。
    この時、指1本分余裕をもたせる。
    気管切開チューブの固定方法3

ホルダーを用いる場合

気切チューブを固定するホルダーイメージ

綿テープより効果なのでコストがかかるが、綿ひもに比べて固定が簡単で、皮膚への接地面も広いため圧迫が少ない。

  1. フレームにテープファスナーを通す。
  2. テープファスナーを折り返し、ホルダーのバンドへ固定する。
  3. 調整テープをネックバンドの柔らかな面に張り付ける
  4. 頸部とホルダーの間に指が1本入るくらいの余裕を持たせる。
  5. ネックバンドの余分な部分はハサミで切り落とす。

気管切開チューブ挿入後の観察と看護ケア

観察点

  • 出血・皮下気腫の有無や程度(術直後)
  • 感染兆候の有無
    (発赤・腫脹・熱感・疼痛・排膿)
  • 皮膚障害の有無
    (水泡・びらん・表皮剥離、潰瘍)

術後ケア

Yガーゼによる保護

出血や浸出液の吸収と、圧迫軽減のためウイングと皮膚の間にYガーゼを挟む。
浸出液が付着し、菌が増殖する危険性があるため、毎日、または汚染があれば交換する。

気管切開孔が安定していれば継続的に使用する必要はないと言われている。

消毒

術後数日は創感染予防のためイソジン等で消毒を行う。
ただ、消毒液は細胞毒性があるため、長期の使用はしない。

鎮痛剤の使用

術後創痛が強いようであれば、NSAIDSなどを投与する。

保清ケア

術後数日後に瘻孔が完成すれば、消毒ではなく清拭で皮膚の清潔を保つ。
タオルでの清拭、皮膚用洗浄剤を用いたタオルによる清拭、生理食塩水を浸した綿棒による清拭などを行う。
そすることで、感染や肉芽形成の予防にもなる。

皮膚トラブル予防

過剰な浸出液にはデュオアクティブETやハイドロサイトなどを使用する場合もある。

日常ケア

発声できない

筆談用のホワイトボード・文字盤でコミュニケーションをとる。
患者のストレスを理解し、時間をかけて関わっていく。

咽頭機能の低下

気管切開による食事制限は基本的にはないが、咽頭粘膜の近く低下、咳嗽反射の低下を引き起こすことがある。嚥下障害があれば、リハビリと協力し、嚥下訓練を実施したり、食事の形態や量を調整する。

嗅覚障害

空気が鼻を通らなければ、嗅覚がなくなる。

努責・咳嗽が困難

呼吸を止めて気道内圧を高めることができず、咳嗽することや排便時に息むことができなくなる。
加湿や体位ドレナージで喀痰を促したり、排便コントロールを行う。

入浴時の水の流入予防

気管切開後も入浴は可能だが、お湯が入らないよう髪を洗うときは首回りにビニール製のエプロンをつけるなどお湯が入らないような工夫を行う。
湯舟では、胸の高さまでにして、表情や呼吸状態に注意しながら介助を行う。

気管切開チューブの交換

気管切開孔は7日程度で形成、2週間程度で完成するといわれている。

そのため、初回交換は、瘻孔が形成している術後1~2週間後に行うのが一般的。

その後の交換の間隔について、明確なエビデンスはないが、2~4週間を目安に交換を行う。

定期的な入れ替えが、肺炎などの合併症を低下させたという報告はないが、汚染による内腔の狭窄やチューブの損傷などにより交換が必要となるため、定期的に交換するのが一般的とされている。

気管切開チューブ交換の必要物品

  • 気管切開チューブ
  • 潤滑ゼリー
  • 固定用テープ(ひも)
  • イソジン綿棒
  • はさみ
  • カフ用シリンジ
  • 未滅菌手袋(滅菌手袋)
  • 吸引器・吸引カテーテル
  • ジャクソンリースやBVM
  • 個人防護具(マスク・ガウン)

交換手順と介助方法

  1. 物品を準備する。
  2. 気管切開カニューレのカフ漏れがないか、エアを注入して確認する。
  3. 患者に気管切開チューブを交換することを説明する。
  4. 個人防護具を着用する。
  5. 気管吸引とカフ上部の吸引を行う。
  6. 気管切開チューブの固定用テープを外す。
  7. カフのエアを抜く。
  8. (Dr)気管切開チューブを抜去。
  9. 気管切開孔周囲を観察し、イソジンで消毒する。
  10. 気管切開チューブの先端に潤滑剤を塗布し、汚染しないよう医師に渡す。
  11. (Dr)新しい気管切開チューブを挿入。
  12. カフにエアを注入し、Yガーゼを挟む。

カフ圧計を使用し、カフ圧は20~30cmH₂O(15~22mmHg)程度に調整する。

  1. 気管切開チューブを固定する。
  2. 確実に挿入できているか、呼吸状態を確認する。
    (次項参照)

気管チューブ交換後の確認事項

  • Spo2、呼吸音、呼吸数、呼吸状態の変化
  • チアノーゼの有無や顔色
  • 胸郭の上がり
  • 痰などの分泌物がないか
  • 気管切開口の出血・感染兆候の有無

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