脳実質に出血(血腫)をみとめる病態。
脳出血の原因のうち、70%を占める。
高血圧が原因で、脳内小動脈が変性し、血管壊死、微小動脈瘤を形成し、ここが破裂することで脳出血をきたすとされている。
先天性に血管の弱い部分から出血が起こる。 脳動脈奇形、海綿状血腫、もやもや病、アミロイド血管障害があげられる。
中大脳動脈からの穿通枝であるレンズ各線条体動脈が出血源となり、被殻、淡蒼球(たんそうきゅう)を中心とする血腫が形成される。
被殻淡蒼球の内側の内包圧排(あっぱい:圧迫されること)により出血と反対側の片麻痺と感覚障害を生じる。発症直後は硬直性麻痺であるが、内包が破壊されると弛緩性麻痺となる。 前頭葉の視運動中枢から内包に向かう側方注視神経の障害により、出血側をにらむ水平共同偏視がみられる。
視床穿通動脈の破綻による視床を中心とする出血。
視床の外側にある内包の圧排・破壊により、出血と反対側の不全麻痺と知覚障害を生じる。また、血腫が中脳に及ぶと、眼症状が出現し、下内方への共同偏視、縮瞳、対光反射の消失および低下がみられる。発症直には意識障害はないか、軽いことが多いが、脳室穿破し、水頭症による意識障害が急速に進行することがある。
橋を中心とする脳幹部の出血。
脳幹網様体の障害により、強い意識障害・著明な呼吸障害をきたす。硬直性・弛緩性の四肢麻痺を呈し、高熱・発汗異常などの自律神経症状も出現する。
眼症状は、強い縮瞳(ピンホール)や、眼球浮き運動(アイボビング 両眼が急速に上方偏位し、ゆっくり正常に戻る動き)がみられる。
大脳皮質下の出血であり、部位は頭頂葉・側頭葉に多い。
出血部位の大脳皮質の局所症状がみられる。軽度の意識障害やてんかんを起こしやすく、けいれん発作で発症することが多い。
原因として、高血圧での発症は少なく、若年者の場合には、脳動脈奇形からの出血の可能性が第一に考えられる。
小脳半球、特に歯状核を中心とする出血が多い。 激しい頭痛・めまい・悪心嘔吐、強いめまいで発症する。
発症時の意識障害はないが、出血の広がりにより、意識障害や出血と反対側の共同偏視・眼振、病巣側の外転、顔面神経麻痺、呼吸障害をきたすことがある。
超急性期から出血をとらえることができ、出血部位・血腫の大きさを診断することができる。 また水頭症の有無や発症リスクを知ることもできる。
手術を行う際には、出血源の確認のため必要となる。
急性期には、呼吸管理を含めた全身管理と、積極的な降圧治療が重要となる。 ただし、過度な降圧は、脳灌流を減らすため血圧は下げすぎない程度にコントロールしなければいけない。
血腫の大きさや、頭蓋内圧亢進症状、既往、年齢などを考慮しなければならないが、目安として平均血圧130mmHg以下とされる。
頭蓋内圧亢進症上を伴う脳出血に対しては、高張液グリセオール、マンニトールの点滴が行われる。
ベッドアップ30度挙上も効果があるが、血圧の低下に注意し行わなければならない。
脳室にチューブを挿入し、急性水頭症での髄液の排出や、脳出血の脳室穿破による脳室内の血腫を除去し、頭蓋内圧をコントロールする目的で行われる。 開頭血腫除去手術後の水頭症予防や再出血のモニタリング目的にも使われる。