心不全の診断基準と重症度分類

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心不全の診断基準

心不全の診断は、症状や身体所見、血液検査、X線検査、心エコー検査などの検査所見の情報を総合して行う。
心不全の診断基準として、フラミンガム基準が用いられるのだが、この基準を見てみると、心不全時に行う検査や、看護師が観察すべき身体所見がわかるので、詳しく見てみる。

フラミンガム基準

「大症状2つ以上」か「大症状1つ+小症状2つ以上」で心不全と診断される。

大症状

  • 発作性夜間呼吸困難または起坐呼吸
    『心不全の病態』-左心不全の症状参照
  • 頸静脈怒張
  • 肺ラ音肺うっ血
    肺水腫により聴取される。
  • 胸部Xpでの心拡大
    前負荷(容量負荷)により、心臓の内腔が大きくなり、壁が薄くなるために、収縮力が低下した状態。 胸部XpでCTR50%以上で心拡大と判定。
    また、心エコーを行えば、どの部屋が拡大しているのか、心臓の血流や、収縮力まで見ることができるので、心拡大の原因を診断することができる。

心拡大」と「心肥大」の違い

心拡大は、前負荷により心臓の内腔が大きくなった状態で、収縮不全の原因となる。
心肥大は、後負荷により心筋が発達して心臓壁が厚くなった状態で、心臓が硬く、伸びが悪くなるので拡張不全の原因となる。

  • 急性肺水腫
    肺うっ血により、肺の水分が外に漏れだし溜まった水分で呼吸が障害された状態。ラ音や低酸素血症、胸部X線の検査で診断される。
  • Ⅲ音
    左室内腔の拡大により、左室壁の伸縮性が低下しているために、左房から左室に血液が流れて壁にぶつかるときの衝撃音として、Ⅲ音が発生する。
    心尖部で聴かれ、Ⅲ音は馬が駆けているような3拍子になっているため、奔馬調音(ほんばちょうおん)といい、ギャロップ音とも呼ばれる。

正常『ドッ、クン』 Ⅲ音『ドッ、ド、クン』

  • 静脈圧上昇(16㎝H2O以上)
    心拍出量が低下しているため、心房や心臓に流れ込む静脈に血液が溜まり、静脈圧(CVP)が上昇する。(正常値は5~10㎝H2O)
    中心静脈カテーテルにマノメーターという測定器を取り付け、測定する。
  • 循環時間延長(25秒以上)
    血管が心臓から出て心臓に戻ってくるまでの時間。(正常値15秒~20秒)
    現在は測定されることは少ない。
  • 肝頸静脈逆流
    肝臓または腹部全体を押すと、静脈圧がさらに上昇するため、頸静脈の怒張が増強する所見。

小症状

  • 下肢浮腫
    静脈圧の上昇により、血管から水分が漏れだし浮腫が起きる。
  • 夜間咳嗽
    臥床することで、静脈還流量が増え、肺うっ血により咳が引き起こされる。
  • 労作性呼吸困難
  • 肝肥大
  • 胸水貯留
  • 肺活量低下頻脈(120回/分以上)

心不全の重症度分類

心不全の重症度は、患者の予後や治療方針を考えるうえで、とても重要なポイントとなる。
重症度分類はいくつかあって、スワンガンツカテーテルの値を元に判定するもの、身体所見だけで判定するものなど様々あるので、その特徴を押さえておく。

NYHA(ニーハ)分類

ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)が作った、最もポピュラーと言える心機能分類。
日常生活での活動で感じられる自覚症状から、簡単に心不全の重症度を評価することができる。
しかし、自覚症状によって判定が行われるため、客観性には欠ける。

NYHA分類
Ⅰ度
無症候性
心疾患はあるが、通常の身体活動に制限はない。
Ⅱ度
軽症
日常的な身体活動で、疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛を生じる。
身体活動の制限は軽度。
Ⅲ度
中等症~重症
日常的な身体活動以下で疲労、動悸、呼吸困難、狭心痛を生じる。
身体活動の制限が高度。
Ⅳ度
難治性
安静時にも、呼吸困難を生じる。
いかなる身体活動も制限される。

フォレスター分類

左心不全により生じる、「末梢循環不全」と「肺うっ血」の有無により分類するもの。もともと、急性心筋梗塞による心不全を対象に作られた分類であるため、急性心不全に適応されるが、慢性心不全では慢性的に心拍出量が低下していたりするので、あまり適さない。
また、スワンガンツカテーテルを用いて値を測定しなければならないので、簡単には分類できない。

フォレスター分類の図

心係数とは?

心拍出量は体格によって個人差があるので、個人差をなくすために、体表面積1㎡あたり、心臓が1分間にどれだけの血液を送っているのかを示したもの。
つまり心係数2.2というのは、体表面積1㎡にあたりに、2.2L/分の血流が送られているということを示す。

肺動脈楔入圧(せつにゅうあつ)とは?

スワンガンツカテーテルで、肺動脈を一時閉塞させ、肺側からの圧を測定するのだが、肺動脈は肺を介在して左房につながっているため、肺動脈楔入圧は、結果的に、左房にかかる圧も反映している。
さらに左房にかかる圧は、左房と左室つながって血液が流れ込む時、つまり左室の拡張期には、左房と左室の圧が同じとなるので、肺動脈楔入圧は、左室拡張期圧と同じと考えられる。
肺動脈楔入圧が上がるということは、左室にかかる圧(心室拡張期圧)が高くなっていることを示し、血流が上手く拍出でできずに、心臓に入る血液(前負荷)が増えている状態を表している。

イラスト:スワンガンツカテーテルでの肺動脈楔入圧の測定方法

NOHRIA-STEVENSON分類

NOHRIA-STEVENSON(ノーリアスティーブンソン)分類は、フォレスター分類をより簡単に評価できうように作られたもので、侵襲的なスワンガンツカテーテル検査を行わなくても、身体所見だけで分類することができる。

うっ血所見の有無(wat/dry)と、低灌流所見の有無(warm/cold)で、4つに分類して循環動態を評価できるため、看護師でも観察ができれば迅速に重症度を判断することができる。

NOHRIA-STEVENSON分類 図
  • A…低灌流なし、うっ血なし
  • B…低灌流なし、うっ血あり
  • C…低灌流あり、うっ血なし
  • D…低灌流あり、うっ血あり

低灌流所見(Cold)の示す所見

  • 小さい脈圧
    (収縮期血圧ー拡張期血圧=脈圧…正常30~50mmHg)
  • 四肢冷感
  • 傾眠傾向
  • 腎機能障害

うっ血所見(Wet)を示す所見

  • 起坐呼吸
  • 頸静脈怒張
  • 肝頸静脈逆流
  • 断続性ラ音
  • 浮腫、腹水など

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