褥瘡の予防と観察ポイント

目次

褥瘡(じょくそう)とは?

持続的に身体の同一部位が圧迫されることで、皮膚や軟部組織の血流が低下あるいは停止し、皮膚壊死を起こしたもの。

特に骨突出部は体圧が集中するので、骨と接触部に挟まれた皮膚に損傷を受けやすい。

褥瘡(じょくそう)とは?

褥瘡の発生原因

褥瘡は、持続的圧迫が直接的な原因となるが、間接的な要因として、全身的要因・局所的要因・社会的要因が関連している。

全身的要因

加齢・基礎疾患

加齢や基礎疾患に伴い、関節拘縮やADLの低下を引き起こし、持続的に皮膚が圧迫されることが多くなる

痩せ型・るい痩

皮下脂肪や筋肉組織が減少することで、骨突出が著明となり、皮膚に圧がかかりやすくなる。

るい痩とは?
著しく痩せた人で、骨と皮になっているような人。
臨床的には、標準体重より20%以上少ない人と定義されている。

低栄養

低アルブミン血症に伴う浮腫で、血流障害や皮膚の菲薄化(薄くなる)が起こる。

薬剤投与

ストロイドや抗がん剤投与により免疫力が低下し、皮膚の感染を起こしやすくなる。

局所的要因(皮膚における要因)

加齢による皮膚の変化

皮膚の菲薄化により、皮脂分泌が低下やバリア機能の低下を引き起こす他、水分量低下や皮脂分泌機能の低下により皮膚の硬化や弾力の低下を引き起こす。

摩擦・ずれ

筋肉から皮膚へ向う血管や引き伸ばされて、血流が障害されることで褥瘡発生のリスクが高まる。

失禁・湿潤

尿・便・汗などの排泄物によって皮膚が湿潤すると、皮膚がふやけた状態となり、損傷を受けやすい。また、ズレが生じやすくなる。

局所の皮膚疾患

皮膚炎など炎症を起こしている皮膚は、乾燥しやすく、外的刺激を受けやすくなっている。

社会的要因

  • 介護力不足(マンパワー不足)
  • 経済力不足
  • 情報不足

褥瘡の好発部位

骨突出部は、筋肉組織や脂肪などの軟部組織が少なく、さらに血流も比較的乏しいので、褥瘡を発生しやすい。

そのため、仰臥位では仙骨部踵骨部(しょうこつぶ)肘頭部(ちゅうとうぶ)肩甲骨部後頭部に発生しやすく、側臥位では、大転子部(だいてんしぶ)腸骨部、耳介部(じかいぶ)肋骨部肩峰突起部(けんぽうとっきぶ)外踝部(がいかぶ)に発生しやすい。

この中でも仙骨部は体重の44%が集中する部位なので、断トツで褥瘡が発生しやすい。

<仰臥位の褥瘡好発部位>

仰臥位の褥瘡好発部位イメージ

<側臥位の褥瘡好発部位>

側臥位の褥瘡好発部位イメージ

褥瘡の分類

NPUAPのガイドライン

NPUAP(米国褥瘡諮問委員会)が推奨する一般的な分類で、褥瘡の深達度(深さ)によって分類される。2009年にはEPUAP(欧州褥瘡諮問委員会)と共同で改訂版を出し、以下に加えて「皮膚または組織の全層欠損—深さ不明」と「深部組織損傷疑い(suspected DTI)—深さ不明」が追加となった。

ステージⅠ

圧迫を解除しても消失しない発赤。

NPUAPステージⅠ

ステージⅡ

真皮までの欠損。
※表皮剥離もこの段階に含まれる。

NPUAPステージⅡ

黄色の柔らかい壊死組織(スラフ)を伴わず、赤色や薄赤色の創底をもつ浅い潰瘍で、水泡形成が見られることもある。

ステージⅢ

皮下組織までの損傷。

褥瘡NPUAPステージⅣ

黄色の柔らかい壊死組織(スラフ)を伴うことがあり、ポケット瘻孔を形成することもある。

ステージⅣ

筋肉や腱・骨まで達する損傷。

褥瘡の分類NPUAPステージⅣ

黄色または黒色の壊死組織が付着していることがあり、ポケット瘻孔を形成していることも多い。

ここまで深いと、骨髄炎や敗血症など重篤な感染症を起こす危険性がある。

ポケットとは?
創の皮下が空洞となった状態。持続的な圧迫によって生じた褥瘡は、皮膚表面よりも骨周囲に壊死を生じやすいので、この壊死組織が治癒過程でなくなったときに皮下が空洞化し、ポケットを形成する(壊死組織融解性ポケット)。
また、体位変換などで生じたズレによって褥瘡や褥瘡周囲の皮膚が押し込まれたり伸ばされた結果、形成するポケットもある(外力性ポケット)

褥瘡のポケットとは?

瘻孔とは?
骨突出部の持続的な圧迫・摩擦により骨周囲の軟部組織が壊死してできた膿腫が、表皮を圧迫して貫いてできた孔のこと。
褥瘡の瘻孔とは?

DESIGN-R(デザインアール)

日本褥瘡学会が発表した、褥瘡の状態を判定するためのスケール。
深さ(Depth)・浸出液(Exudate)・大きさ(Siza)・炎症/感染(Inflammation/Infection)、肉芽組織(Granulation)・壊死組織(Necrotic tissue)、ポケット(Pocket)の7項目を評価するもので、各項目の頭文字を使って名づけられている。(ーRはRating評価の意味)

重症度を分類し、数値で治癒経過を評価できるため、医療現場で広く用いられている。

→日本褥瘡学会発表「改定DESIGN-R2020」で詳しく見る

深さ(Depth)
d0皮膚損傷・発赤なし。
1持続する発赤
2真皮までの損傷
D3皮下組織までの損傷
4皮下組織を超える損傷
5関節腔・体腔に至る損傷
U深さ判定が不能な場合
滲出液(Exudate)
e0なし
1少量:毎日のドレッシング交換を要しない
2中等量:1日1回のドレッシング交換を要する
E6多量:1日2回以上のドレッシング交換を要する
大きさ(Size)皮膚損傷範囲を測定:長径㎝×長径と直交する最大径㎝
e0皮膚損傷なし
34未満
64以上 16未満
816以上 36未満
936以上 64未満
1264以上 100未満
E15100以上
炎症や感染(Inflammation/Infection)
i0局所の炎症兆候なし
1局所の炎症兆候あり(創周囲の発赤、腫脹、熱感、疼痛)
3局所の明らかな感染兆候あり(感染兆候、膿、悪臭など)
9全身的影響あり(発熱など)
肉芽組織(Granulation tissue)
0治癒あるいは創が浅いため肉芽形成の評価ができない
1良性肉芽が創面の90%以上を占める
3良性肉芽が創面の50%以上、90%未満を占める
G4良性肉芽が創面の10%以上、50%未満を占める
5良性肉芽が創面の10%未満を占める
6良性肉芽がまったく形成されていない
壊死組織(Necrotic tissue)
0壊死組織なし
N3柔らかい壊死組織あり
6硬く厚い密着した壊死組織あり
ポケット(Pocket)潰瘍面も含めたポケット全周【長径㎝×短径㎝】から潰瘍の深さを差し引いたもの
p0ポケットなし
P64未満
94以上16未満
1216以上36未満
2436以上

褥瘡の観察ポイント

褥瘡好発部位の皮膚状態や痛み

乾燥・湿潤・汚染・骨突出・発赤の有無と程度を観察する。

体位交換の内容と回数

患者のADL、皮膚状態や骨突出、栄養状態に合わて、適切な体位・間隔で体位交換が行われているか確認する。

皮膚の圧迫・ズレの有無や程度

シーツや衣類、ドレーン・カテーテル類で皮膚を圧迫していないか適宜チェックする。

栄養状態

栄養状態を示す、TP(総蛋白)やAlb(血清アルブミン値)、Hb(ヘモグロビン)、血清鉄などの血液データや、体重・BMIをチェックし低栄養の有無や程度を確認する。

除圧対策

患者のADL、皮膚状態や骨突出、栄養状態に合わせて除圧マットや保護材が使用されているか確認する。

褥瘡の予防

1、体圧分散ケア

仙骨などの骨突出にかかる体重を分散させることで、骨突出への圧力を少なくするためのケア。

原則2時間おきに体位交換

同一部位圧迫による血流障害を起こさないよう、基本的には2時間を超えない範囲での体位交換を行う。体圧分散マットを使用している場合は4時間を超えない範囲で行う。

日本褥瘡協会のガイドラインでは、上記の間隔が推奨されているが、全員が2時間または4時間おきの体位変換を行うのではく、患者一人一人の全身状態をアセスメントしたうえで体位変換時間は決定する!

側臥位は原則30度

筋組織や皮下脂肪の多く骨突出のない臀部で体重をうけとめることができるので、30度側臥位が推奨されている。

クッション使ってポジショニング

30度側臥位などを取る場合、体重を分散させるために、接触面積を広くとれるようクッションや枕を使って体位を整える。

体圧分散マットの使用

体圧分散マットは、身体と寝具との接触面積を増やしてその名の通り、体圧を分散するマットのこと。実際に、褥瘡の発生率を低下させるため、使用が強く進められている。

体圧分散マットの使用については、入院時だけではなく、術後や疼痛、意識レベルなど状態の変化に合わせて、褥瘡リスクをアセスメントし、マットレスの種類を含めて検討する。

 摩擦・ズレを予防

患者を引きずることで、摩擦やズレを起こすので、身体を持ち上げて移動できるよう体位交換は2人以上で行う。ギャッジアップ時には背抜きを行い、クッション等でズレが生じないよう身体を固定する。

2、スキンケア

摩擦・ズレのケア

褥瘡発生リスクの高い部位には、ポリウレタンフィルム材(オプサイト等)や滑り機能付きドレッシング材(モリスパッド等)で皮膚を保護しておくのも有効。

皮膚の清潔

できるだけシャワーや入浴を行い、皮膚の清潔を保つ。それが難しい場合には部分浴、それも難しい場合には清拭や陰部洗浄を行う。
また、皮膚の乾燥は湿潤・摩擦・ズレによる褥瘡発生リスクをあげるため、保湿剤を塗付するのも有効。

3、栄養管理

『褥瘡の原因』で前述したように、低栄養状態が続くと筋肉や脂肪が減少し、骨突出の原因となり、褥瘡発生リスクが高くなってしまう。さらに、低アルブミン血症から浮腫を引き起こすと、より褥瘡発生リスクが高まる。

そのため、患者の血液データ(Alb、TP値など)や体重、食事摂取量から栄養状態を評価し、低栄養状態の場合には、食事形態の工夫や間食、栄養補助食品の付加を行うなどして低栄養の改善を図る。もし経口摂取が困難であれば、経管栄養も考慮する。

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