僧帽弁閉鎖不全症(MR)

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僧帽弁閉鎖不全症(MR)とは?

僧帽弁閉鎖不全症(MR)イメージ図

僧帽弁閉鎖不全症【Mitral(僧帽弁) regurgitation(逆流):MR】は、僧帽弁の閉まりが悪くなることで、全身へ送り出すはずの血液が、左室から左房へ逆流してしまう病態。

僧帽弁閉鎖不全症の原因

弁の器質的な病変

粘液様変性、リウマチ熱の後遺症、感染性心内膜炎、先天性疾患であるバーロー症候群やマルファン、外傷(胸部打撲)などさまざまな原因で、弁尖が裂けたり、腱索が切れたり伸びたりすることで起こる。

弁の機能性の病変

拡張型心筋症で左心室が拡大した場合や、心筋梗塞で乳頭筋やその周辺の心筋に障害がでると、逆流を生じる。

僧帽弁閉鎖不全症の病態生理

左室から左房へ血液が逆流

左室から大動脈に血液を勢いよく押し出されるはずの収縮期に、左室から左房へ血液が逆流する。

僧帽弁閉鎖不全症の病態生理1,左室から左房へ血液が逆流しているイラスト

左房も左室も容量オーバー!

送り出されるはずの血液が左房に逆流するにも関わらず、肺静脈からは血液は送られてくるので、左房内は容量オーバー(容量負荷)に!

僧帽弁閉鎖不全症の病態生理2、血液が左房に逆流したイラスト

左室も、逆流した血液も含め、拡張期に再度流入してくるので、容量負荷となり、左室・左房は拡大する。

心拍出の低下

血液の逆流により大動脈に送り出される血液量は低下。それを代償するために、心臓は、心室を肥大させて1回拍出量を維持しようとする。

僧帽弁閉鎖不全症の病態生理3、心拍出の低下のイメージ図

逆流が増悪し、心臓の代償機能が破綻すると、心拍出量の低下・肺うっ血を来し、心不全に陥る。

僧帽弁閉鎖不全症の症状

心臓の代償機能により、初期は無症状で経過することが多い。
進行し、心臓の代償機能が限界にくると、心不全症状が現れる。

  • 労作性呼吸困難
  • 起坐呼吸
  • 夜間発作性呼吸困難
  • 不整脈(Af)・動悸

左房の拡大は、心房細動を引き起こす!

僧帽弁閉鎖不全症の検査・所見

聴診(心音)

I音の減弱

僧帽弁がパタンと閉まらないため、Ⅰ音(僧帽弁の閉鎖音)が減弱

Ⅲ音(急速流入音)の聴取

左房から左室へ大量の血液が流れ込み、心尖部にぶつかる音。

聴きやすいのは心尖部!けど、正直分かりにくい

心尖部で全収縮期雑音を聴取

血液が僧帽弁を逆流しているときに聞こえる雑音。
Ⅰ音(僧帽弁閉鎖)と同時に始まり僧帽弁解放時まで続く。

心エコー

僧帽弁閉鎖不全症の診断には必須の検査。

弁の大きさ、硬さ、逸脱の有無や逆流の程度など評価可能で、原因や重症度を判断することができる。

より詳細に弁や心臓の状態を観察したい場合には、超音波を口から食道に通し行う経食道心エコーを行い、心臓の裏側から僧帽弁の観察を行う。

胸部Xp

左房・左室の拡大により、左第3由美および第4弓の突出がみられる。

心不全をきたすと、肺うっ血や胸水がみられる。

心電図

左房・左室負荷所見がみとめられる。

  • 左室肥大によりR波の増高
  • 左房負荷によるAf
  • 左房負荷による左房性P波

また、僧帽弁閉鎖不全症の原因となる他の疾患(不整脈)がないかを調べるためにも心電図検査は有効。

僧帽弁閉鎖不全症の治療

薬物療法

軽症であれば、内科的治療で経過観察する。

具体的には、逆流量を減らすために、血管拡張薬を使用し血圧を下げる。
また、利尿剤を使用することで前負荷を軽減させる。

手術療法

呼吸困難などの自覚症状があったり、心不全が起こっている場合には、根本的な治療が必要であり、手術適応となる。

MRの手術は、自分の弁を温存し修復する弁形成術と、弁を人工のもにに置き換える弁置換術がある。

僧帽弁弁形成術

第一選択は弁形成術。
逆流の原因となる弁の一部を切除して縫合したり、弁輪を縮小してきちんと閉じるようにする。弁置換術に比べ、術後合併症のリスクも低く、術後回復も早いというメリットがある。

弁置換術(MVP)

病変が弁形成術では修復困難な場合に選択される。  

低侵襲!MICS(ポートアクセス法)

胸骨を切り開かず、右の肋骨下4~6㎝の小切開でOKな手術法。
侵襲が少なく、術後回復が早いため、最近は多く行われている。

低侵襲!ダビンチ手術

こちらは、ダビンチというロボットを使用する手術で、胸に内視鏡手術時のような小さな4つの穴を明け、メスや鉗子、カメラなどのアームを差し込むことで手術できる。
まだ実施している(できる)施設・医師は少ない。

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