胸部X線(胸部レントゲン)検査とは?
電磁波の一種であるX線を使い、胸部を透過させて内部の構造を見る検査。X線は組織の濃度により吸収される量が異なるため、コントラストをつけることで、内部の胸部構造を描写できる。
具体的には、胸部レントゲンでは、肺や気管、心臓、肋骨、胸骨など胸部構造を映し出すことができる。
胸部X線の全体像
X線画像の基本として、空気が多かったり、密度が低くてX線が通り抜けるところは黒く、骨や心臓など密度が濃くてX線が通り抜けにくいところは白く映る。
透過しやすい順番は、
空気→脂肪組織→水・軟部組織(心臓,大血管,肺血管,縦隔,横隔膜)→金属・骨
となる。
心臓は、筋肉組織と水分(血液)で満たされているため、X線は通り抜けにくく、白っぽく描出される。また、心臓から出入るする大動脈・大静脈の輪郭も確認することができる。
心陰影の見方
心陰影とは、心臓と大血管が作る影のことで、正常な心陰影は特定の形状をする。
この形状や大きさの変化は、心臓や大動脈または大静脈に問題があることを示唆するため、心疾患の評価に重要な所見となる。
心陰影の構成要素
心陰影の輪郭は、右は第 1 〜 2 弓、左は第 1 〜 4 弓からなる。
右第1弓
正常では、上大静脈で形成される。
【異常時】上大静脈の内側には上行大動脈があり、動脈硬化や高血圧が進行すると、この上行大動脈が拡張し、右方への突出がみられる。
右第2弓
心臓の右房で形成する。
【異常時】右室拡大時、右方へ突出する。また僧帽弁疾患により左房拡大時には、この第2弓の内側に左房の縁が見えることで2重に見えることがあり、これを二重陰影という。
左第1弓
大動脈弓で形成する。
【異常時】大動脈瘤や大動脈解離で拡大がみられる。また、高血圧や動脈硬化の進行でも軽度拡大する。
左第2弓
肺動脈で形成する。
【異常時】心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、肺動脈弁狭窄、肺高血圧時に拡大する。
左第3弓
左心耳で構成。通常ではほとんど突出はない。
【異常時】僧帽弁疾患や心不全などで左房が拡大したときに拡大する。
左心耳(読み方:さしんじ、略語:LAA)って何?
左房に付着している耳のような小さな袋状の構造のこと。左房の減圧を図る働きがあるが、なくても問題はないと言われている。また、心房細動による血栓は90%がここで形成されているため、閉鎖して梗塞のリスクを抑えたりすこともある。
左第4弓
左室で形成される。
【異常時】左室拡大や左室肥大すると拡大する。細かくみると、大動脈弁狭窄ASなどにより左室肥大すると挙上し、大動脈弁閉鎖不全症ARなどで左室拡大すると左下方へ偏移する。
心胸郭比(CTR)の見方
心胸郭比は、胸郭の最も広い部分の長さと、心臓の最も幅の広い部分の長さの比のこと。
これが、50%(0.5)以下が正常とされている。
この心臓の実際の長さがわからないので、胸郭幅を100%として見てみると
CTR=42%なのがわかる。つまり、これは正常な大きさと判断できる。
では次の画像はどうか。
これも正確な長さがわからないので、胸郭幅を100%として見てみると、心臓の幅は胸郭幅の60%とわかる。
CTR>50%となるので、心拡大しているのがわかる。
この状態は、心不全や心肥大が疑われるため、心電図や超音波検査などで心機能の評価が必要となる。
看護師の役割
胸部レントゲンは、入院時に必ずルーチンで撮影します。それは、治療や急変時、術前の評価にもとても重要な指標となるから!看護師としても、心臓の状態を理解するための重要なツールなので、心疾患の兆候や増悪を見逃さないために、画像を読み解く知識をもち、患者さんのケアに生かしていきましょう!