アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)は、脳細胞が萎縮することで、認知機能の低下や精神症状を呈す疾患である。
アルツハイマー病は、加齢や性別、頭部外傷、喫煙、教育などの環境的要因と、遺伝子要因が関与すると言われている。
発症のメカニズムは、今のところ明らかになっていないが、大脳皮質にアミロイドβという異常なたんぱく質から成る老人斑が出現したり、タウ蛋白の蓄積による神経原繊維変化が起こることで、脳細胞が壊死するとされている。
アルツハイマー病は、潜行性に発症し、ゆっくり進行していく。
アルツハイマー病の段階により現れる症状は異なるため、初期・中期・後期の3つの病期に分けて、主な症状をみていく。
このように様々な症状が現れるが、まだ日常生活は遅れる程度。一般的にこのような症状が2~6年程続く。
日常生活動作が困難となる。見当識障害も著明になり、徘徊して迷子になったり精神症状も強くなり、介護者の負担が大きくなる。
一般的に、2~3年程度このような症状が続くと言われている。
後期になると、コミュニケーション能力・身体能力が著しく低下し、最終的に、寝たきりとなり、全介護が必要となる。
食欲の喪失や、嚥下障害から誤嚥性肺炎を合併することも少なくない。
アルツハイマー病の場合、内側側頭葉の萎縮が確認できる。
また、治療可能な認知症との鑑別にも重要な検査である。
脳の血流や代謝機能を描出することができる検査で、アルツハイマー病では、両側側頭・頭頂葉・後部帯状回の血流低下や糖代謝異常が認められる。
米国精神医学会による精神疾患の 診断・統計マニュアル改定第4版(DSM-IV)または、アメリカ国立神経障害・脳卒中研究所(NINCDS)と関連障害協会(ADRDA)が合同で作成したNINCDS-ADRDAの診断基準の使用が推奨されている。
『Alzheimer病ー日本神経学会』のPDF資料参照
A.以下両方により明らかにされる多彩な認知障害の発現 (1)記憶障害(新しい情報を学習したり、以前に学習した情報を想起する能力の障害) (2)以下の認知機能の障害が 1 つ以上 (a)失語(b)失行(c)失認(d)遂行機能障害(計画を立てる,組織化する,順序立てる,抽象化することの障害) |
B.基準 A(1)および A(2)の認知障害はその各々が、社会的または職業的機能の著しい障害を引き起こし、病前の機能水準からの著しい低下を示す。 |
C.経過は緩やかな発症と持続的な認知機能の低下により特徴づけられる |
D. 基準 A(1)および A(2)の認知障害は以下のいずれによるものでもない (1)記憶や認知に進行性の欠損を引き起こす中枢神経系疾患 (例:脳血管性疾患,Parkinson 病,Huntington 病,慢性硬膜下血腫, 正常圧水頭症,脳腫瘍) (2)認知症を引き起こすことが知られている全身性疾患 (例:甲状腺機能低下症,ビタミン B12 または葉酸欠乏症,ニコチン酸 欠乏症,高カルシウム血症,神経梅毒,HIV 感染症) (3)物質誘発性の疾患 |
E.その障害はせん妄の経過中にのみ現れるものではない |
F. その障害は大うつ病性障害、統合失調症等精神病ではうまく説明されない |
アルツハイマー病では、アセチルコリンという神経伝達物質が減少することで記憶障害を引き起こす。
コリンエステラーゼ阻害薬は、アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼの働きを阻害してアセチルコリンを増加させる他、アセチルコリン受容体に結合して神経の反応を高めることで、症状を改善させる効果がある。
グルタミン酸(記憶や学習に関わる伝達物質)の受容体は2つあり、その一つがNMDA受容体である。アルツハイマー病では、異常タンパクにより、NMDA受容体が異常に活性化している状態となって、記憶に関わる機能が障害される。
そのため、NMDA受容体拮抗薬で受容体をブロックすることで、グルタミン酸の異常な流入を防ぎ、記憶・学習機能の障害を抑える作用がある。