COPDとは?
肺の慢性的な炎症により、気道閉塞を呈する呼吸器疾患。
原因と病態
有毒ガス、喫煙、大気汚染、感染症を原因として肺胞や気管支に炎症が起こる。
炎症でダメージをうけた気管支細胞は、再生することにより、細胞が硬く厚く変性するため気道閉塞を起こす。
肺胞では肺胞壁が破壊され、のびきった風船状態となり、弾性収縮力が低下する。 そのため、吸気時には胸腔内陰圧が高まることで肺胞に空気が入っても、弾性収縮力がないため、吐き出せなくなる。また血管壁の破壊により、肺胞の表面積が小さくなるため、ガス交換も十分に行えなくなる。
分類
炎症が起きた部位が気管支であれば、慢性気管支炎、肺胞であれば肺気腫と呼ばれ、両者は合併していることが多い。
合併症
進行すると、肺線維症、肺高血圧、心不全、肺癌を合併する。
世界中で年間300万人が命を落としている恐ろしい疾患。
症状
自覚症状
- 咳嗽、喘鳴
- 喀痰
- 労作性呼吸困難
- 口すぼめ呼吸
- ビール樽型胸郭(肺の過膨張による胸郭の変性)
これら自覚症状が現れるときには、すでにCOPDがかなり進行している状態。
臨床所見
- 呼吸音の減弱
- 動脈血ガス値 PaO2低下、PaCO2上昇(呼吸性アシドーシス)
- 1秒率の低下、70%以下
- 画像検査にて、肺野の透過性亢進、胸腔の拡大(肋骨の拡大)
→肺気腫は、血管壁が壊れて肺が過膨張するため、空気がいっぱい入る。
治療
COPDは肺移植しない限り、完治することはなく、慢性的に進行するため、悪化しないための予防と、自覚症状への対症療法を行う。
薬物療法
気管支拡張薬(抗コリン薬・β2刺激薬・テオフィリン)の3種類を重症度に合わせて使用し、呼吸困難の症状を改善する。内服・貼布薬もあるが、副作用の少ない吸入薬を使用することが多い。 重症化した場合には、気管支拡張薬を併せてステロイド吸入を行う。
運動療法
ある程度の筋肉量がないと、呼吸運動も抑制され、さらに呼吸困難を悪化させる悪循環となるため、体力をつける目的で無理にならない程度の運動が必要。
予防接種と禁煙
急性増悪を予防するために、インフルエンザや肺炎球菌ワクチンを接種が勧められる。 喫煙は肺の炎症を加速させるため、禁煙し悪化を予防することが重要。
在宅酸素療法HOT
低酸素血症をみとめる場合には、QOL向上のため低用量での酸素投与を行う。
CO2ナルコーシスの病態
通常、人は『酸素が少ないとき』と『二酸化炭素が多いとき』に脳がそれを感知し、呼吸するよう命令を出しているのだが、COPDの患者は、常に二酸化炭素が多い状態なので、『二酸化炭素が多いとき』の命令がやがてなくなってしまう。
そのため、『酸素が少ないとき』のみ延髄の命令で呼吸をしている状態となり、いきなり高濃度の酸素が送られると、『酸素は十分ある』と延髄は判断するため、二酸化炭素の貯留に関わらず、呼吸が抑制される。
呼吸が抑制されると、二酸化炭素がどんどん蓄積していき、二酸化炭素の血管拡張作用により脳浮腫が起こり、頭痛・中枢神経抑制から意識障害を呈する。
この病態をCO2ナルコーシスと言う。
意識状態をきたした状態ではPCO2は100Torr以上で、PH7.10まで低下した呼吸性アシドーシスの状態であり、自力での呼吸管理できないため、人工呼吸器での管理が必要となる。
CO2ナルコーシスの症状
二酸化炭素の血管拡張作用により皮膚と脳の血管が拡張し、次の症状が出現する。
- 頭痛
- 皮膚の紅潮
- 発汗
二酸化炭素の上昇により、交感神経が活性化(カテコラミン濃度が上昇)し、皮膚と脳以外では血管が収縮して、次の症状が出現する。
- 血圧の上昇
- 脈拍数の上昇
- 動悸
- 四肢の不随運動(羽ばたき振戦)
さらに二酸化炭素が上昇すると、中枢神経抑制が起こり次の症状が出現する。
- 意識障害
- 痙攣
- 傾眠・昏睡
- 自発呼吸の減弱