大腸粘膜から発生したがん。
大腸がんは大腸粘膜の細胞から発生する。
この発生のメカニズムには2種類あり、①良性の大腸腺腫(ポリープ)が発がん刺激をうけて発生するものと②正常な粘膜が発がん刺激を直接受けて発生するものがある。前者を腺がんといい、後者をデノボがんという。
大腸がんのうち90%は腺がんが占めている。
治療前に、触診やレントゲンおよび内視鏡検査により判定する。
0~5型に分類され、0型は粘膜または粘膜下層までのがんで、早期がんがこれにあたる。0型は、Ⅰ型Ⅱ型に分かれ腫瘍の形状から6つに分類されている。
1型~5型までは進行がんと呼ばれ、すでに筋層に到達しているがんをさし、腫瘍の形や浸潤の仕方で分類される。
がんの壁深達度、リンパ節転移、肝転移や腹膜転移、肝以外の遠隔臓器転移の程度の組み合わせにより、下の表のようにステージ0~Ⅳに分類され、ステージⅣが最もがんが進行した状態を示す。
転移については、『0(ゼロ)』は、転移がない状態をさしている。
M | がんが粘膜内にとどまり、粘膜下に及んでない |
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SM | がんが粘膜下層にとどまり、固有筋層に及んでない |
MP | がんが固有筋層までにとどまる |
SS | がんが固有筋層を越えているが、漿膜表面に露出していない |
SE | がんが漿膜表面に露出している |
SI | がんが直接他臓器に湿潤している |
A | がんが固有筋層を越えて湿潤している |
AI | がんが直接臓器に湿潤している |
HX | 不明 |
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H0 | 肝転移なし |
H1 | 肝転移巣4個以下かつ最大径が5㎝以下 |
H2 | H1,H3以外 |
H3 | 肝転移巣5個以上かつ最大径が5㎝を超える |
PX | 腹膜転移の有無が不明 |
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P0 | 腹膜転移を認めない |
P1 | 近接腹膜のみ播種性転移をみとめる |
P2 | 遠隔腹膜に少数の播種性転移をみとめる |
P3 | 円環腹膜に多数の播種性転移をみとめる |
NX | 不明 |
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N0 | リンパ節転移をみとめない |
N1 | 腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移巣数が3個以下 |
N2 | 腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移巣数が4個以上 |
N3 | 主にリンパ節または側方リンパ節に転移をみとめる |
MX | 不明 |
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M0 | 遠隔転移なし |
M1 | 遠隔転移をみとめる |
発生初期には、自覚症状がない場合が多い。
腫瘍の拡大により症状が出現するが、腫瘍の部位によって症状も異なる。
上行結腸や盲腸は、内腔が広く、腸内容物も液状であることから、腫瘍が増大するまで狭窄症状を起こさない。
腫瘍からの出血により徐々に貧血症状や体重減少が起こり、腫瘤を腹壁から触知できるようになる。
左側結腸は、内腔が狭く腸内容物が固形となるため、便とがんが接触して出血して血便があったり、便秘、下痢、腹部膨満感などの狭窄症状が現れる。
S上結腸や直腸は肛門に近いため、下血や血便を主訴とすることが多い。
手術の場合には、転移を防止するために、原則がん周囲の腸管とリンパ節を切除する。リンパ節を切除(リンパ節郭清)する範囲は、ステージ分類により決定される。
がんから10㎝離れた部位で腸管を切除し、前後の腸管同士を吻合する。
手術名は切除した腸管によって決まり、結腸右半切除術、左半結腸切除術、S上結腸切除術、横行結腸切除術、結腸部分切除術がある。
たとえ手術をしても約17%の患者に再発が起こるため、再発をおさえるために行う補助化学療法と、切除不能例、再発性大腸がんに対して行う化学療法がある。
直腸がんでは、手術前に腫瘍を小さくする目的、治癒率の向上、肛門温存目的、再発予防のために、放射線療法がおこなわれる場合がある。
切除不能例の大腸がんでは、症状の緩和目的で行われることがあり、疼痛や神経症状など約80%の症状に改善が見込まれる。