大腸がんとは?
大腸粘膜から発生したがん。
大腸がんの原因
- 1,食生活
動物性たんぱく質や脂肪の摂取は、発がん物質の産出を亢進させ、食物繊維の摂取量減少により、濃密な便が停滞することにより、発がん物質と超粘膜の接触時間が増加し、発症リスクが高まるとされている。
- 2,遺伝
大腸がんは遺伝的要因が5%あり、遺伝性非ポリポーソシス性大腸がんや家族性大腸線腫症がある。
病態
大腸がんは大腸粘膜の細胞から発生する。
この発生のメカニズムには2種類あり、①良性の大腸腺腫(ポリープ)が発がん刺激をうけて発生するものと②正常な粘膜が発がん刺激を直接受けて発生するものがある。前者を腺がんといい、後者をデノボがんという。
大腸がんのうち90%は腺がんが占めている。
大腸がんの分類
肉眼的分類
治療前に、触診やレントゲンおよび内視鏡検査により判定する。
0~5型に分類され、0型は粘膜または粘膜下層までのがんで、早期がんがこれにあたる。0型は、Ⅰ型Ⅱ型に分かれ腫瘍の形状から6つに分類されている。
1型~5型までは進行がんと呼ばれ、すでに筋層に到達しているがんをさし、腫瘍の形や浸潤の仕方で分類される。

進行度分類
大腸がんの進行度は、「がんの壁深達度」「リンパ節転移」「肝転移」「腹膜転移」「肝以外の遠隔臓器転移」の程度の組み合わせにより、下の表のようにステージ0~Ⅳに分類され、ステージⅣが最もがんが進行した状態を示す。
転移については、『0(ゼロ)』は、転移がない状態をさしている。

M | がんが粘膜内にとどまり、粘膜下に及んでない |
---|---|
SM | がんが粘膜下層にとどまり、固有筋層に及んでない |
MP | がんが固有筋層までにとどまる |
SS | がんが固有筋層を越えているが、漿膜表面に露出していない |
SE | がんが漿膜表面に露出している |
SI | がんが直接他臓器に湿潤している |
A | がんが固有筋層を越えて湿潤している |
AI | がんが直接臓器に湿潤している |
HX | 不明 |
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H0 | 肝転移なし |
H1 | 肝転移巣4個以下かつ最大径が5㎝以下 |
H2 | H1,H3以外 |
H3 | 肝転移巣5個以上かつ最大径が5㎝を超える |
PX | 腹膜転移の有無が不明 |
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P0 | 腹膜転移を認めない |
P1 | 近接腹膜のみ播種性転移をみとめる |
P2 | 遠隔腹膜に少数の播種性転移をみとめる |
P3 | 円環腹膜に多数の播種性転移をみとめる |
NX | 不明 |
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N0 | リンパ節転移をみとめない |
N1 | 腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移巣数が3個以下 |
N2 | 腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移巣数が4個以上 |
N3 | 主にリンパ節または側方リンパ節に転移をみとめる |
MX | 不明 |
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M0 | 遠隔転移なし |
M1 | 遠隔転移をみとめる |
症状
発生初期には、自覚症状がない場合が多い。
腫瘍の拡大により症状が出現するが、腫瘍の部位によって症状も異なる。
右側結腸
上行結腸や盲腸は、内腔が広く、腸内容物も液状であることから、腫瘍が増大するまで狭窄症状を起こさない。
腫瘍からの出血により徐々に貧血症状や体重減少が起こり、腫瘤を腹壁から触知できるようになる。
左側結腸
左側結腸は、内腔が狭く腸内容物が固形となるため、便とがんが接触して出血して血便があったり、便秘、下痢、腹部膨満感などの狭窄症状が現れる。
S状結腸癌、直腸がん
S上結腸や直腸は肛門に近いため、下血や血便を主訴とすることが多い。
検査
便潜血反応
がんからの出血は持続的ではなく間欠的に起こるため、2日間、便の中の血液の有無を調べる2日法が用いられることが多い。
この検査が陽性となる確率は、進行がんで約80%、早期がんで50%と言われているが、偽陽性となることもある。
内視鏡検査
大腸カメラにて、大腸の粘膜を観察する。
ポリープや癌を確認することができ、疑われる場合には組織を採取し、病理検査を行う。
また、ポリープや早期がんであれば、内視鏡で腫瘍を切除することもできる。
注腸造影
肛門から直接大腸内に造影剤とバリウムと空気を注入し、レントゲン撮影をしながら行う検査。
ある程度の進行度の診断はできるが、今は内視鏡検査が優先的に行われるため、あまり行われていないのが現状。
腫瘍マーカー
採血検査でわかる、CEAやCA19ー9の腫瘍マーカーがある。
腫瘍マーカーは早期診断には役立たないが、治療の効果を判定したり、フォローアップとして測定する。
治療
手術
手術の場合には、転移を防止するために、原則がん周囲の腸管とリンパ節を切除する。リンパ節を切除(リンパ節郭清)する範囲は、ステージ分類により決定される。
結腸がんの手術
がんから10㎝離れた部位で腸管を切除し、前後の腸管同士を吻合する。
手術名は切除した腸管によって決まり、結腸右半切除術、左半結腸切除術、S上結腸切除術、横行結腸切除術、結腸部分切除術がある。

直腸がんの手術
直腸局所切除術
早期の直腸がんの場合、肛門に近い癌に対して、肛門を広げてがんを切除する経肛門的切除と、仙骨の横を切って行う傍仙骨的切除がある。
この場合には、リンパ節郭清は行わない。
前方切除術
開腹や腹腔鏡にて行われる手術。
直腸切除後の吻合部の位置によって、腹膜反転部より上であれあば高位前方切除術、腹膜反転部より肛門側であれば低位前方切除術と呼ばれる。
以前は、低前方切除術は腹腔外の操作になるため、難しい手技だったが、今は自動吻合器が登場し、楽に吻合できるようになった。
また、肛門括約筋から2㎝内側(歯状線上縁付近)で吻合する超低位前方切除術が行われるようになり、人工肛門造設率も減ってきている。


直腸切除術
前方切除術が行えないくらい肛門付近にあり、肛門括約筋の温存が不可能であれば、肛門も含めて直腸を切除し、S上結腸で永久人工肛門(ストーマ)を造設する。ハルトマン手術肛門から十分な十分な距離があったとしても、吻合により排便機能が不十分になると判断したり、危険だと判断された場合にも、永久人工肛門を造設する。この場合には自然肛門は温蔵されているが、閉塞している。腸閉塞に対する人工肛門造設術切除不能な大腸がんに対して、腸管の通過障害を改善する目的でがんの手前に人工肛門を造設したり、回腸とがんより肛門側の結腸を吻合したりする。
化学療法
たとえ手術をしても約17%の患者に再発が起こるため、再発をおさえるために行う補助化学療法と、切除不能例、再発性大腸がんに対して行う化学療法がある。
放射線治療
直腸がんでは、手術前に腫瘍を小さくする目的、治癒率の向上、肛門温存目的、再発予防のために、放射線療法がおこなわれる場合がある。
切除不能例の大腸がんでは、症状の緩和目的で行われることがあり、疼痛や神経症状など約80%の症状に改善が見込まれる。