痙攣とは?
全身性または一部の筋肉に発作的に起こる、不随意の収縮のこと。
痙攣の原因とメカニズム
1、大脳の器質的な異常による痙攣
大脳皮質から異常な電気的興奮が生じ、それが筋肉に伝わることで、不随運動である痙攣が起きる。
てんかんや脳腫瘍、脳血管障害、脳炎、髄膜炎、頭部外傷によって起こりうる。
2、末梢神経、筋肉の異常による痙攣
電解質異常や神経障害、心因性の要因など、脳以外の異常でも、二次的な脳障害を引き起こし、痙攣を生じる。原因は、代謝・中毒・末梢神経障害まで多様であり、次のようなものが原因として上げられる。
- 電解質異常(低・高Na血症、低Ca血症、低Mg血症)
- 副甲状線機能低下(血中Ca濃度に関与している)
- 腎不全(電解質異常により生じる)
- 肝不全(解毒作用の低下により、中枢神経の異常を引き起こす)
- 低血糖(30㎎/dⅼ以下で痙攣を引き起こす)
- 薬の副作用
- アルコール・薬物の離脱症状
- 低酸素
- 熱性けいれん(副交感神経興奮による)
- 過換気症候群(アルカローシスにより、脳血流の減少)
- ヒステリー
痙攣の種類
全身性痙攣
強直性痙攣(きょうちょくせい)
筋肉の持続的な収縮により、ピーンと背中が反り返り、体感・四肢を伸ばし硬直させる。
間代性痙攣 (かんだいせい)
筋肉の収縮と弛緩の繰り返しにより、ガクガクと四肢を震わせる。
強直間代性痙攣
突然の意識消失後、10~20秒の硬直性痙攣が起こり(強直期)、次第に間代性痙攣に移行し、30~60秒続く(間代期)。いったん痙攣が収まると、昏睡状態に入る。
てんかん発作で見られる。
局所性痙攣
顔面や眼瞼、上肢、下肢など限局して痙攣が生じるもの。
大脳の運動野に限局性に、異常な電気的興奮が発生することにより、その支配下の筋肉のみで痙攣が発生する。そのほか、限局性に痙攣が現れるものとして、以下のものがある。
有痛性筋痙攣
特定の筋の痛みを伴う持続的な筋収縮。
テタニー
末梢神経の興奮によって引き起こされる局所性の強直性痙攣。痺れや痛みを伴う。低Ca血症、低Mg血症で起こる。
チック
瞬きや首ふり、発声など同じ動作を繰り返すもの。
心因性要因によるものが多い。
羽ばたき振戦
高アンモニア血症でみられる、手首や指先が不規則またはリズミカルに速く揺れる動きで、羽ばたいているように見える。
痙攣重積とは?
痙攣が30分以上続くか、短時間に痙攣を繰り返し、その間意識が回復しないものを言う。
痙攣重積では、脳の酸素消費量が増大する一方で、呼吸が抑制され、低酸素血症から脳障害、死亡に至るケースもあるため、早急な処置が必要となる。
臨床的には、5分以上続く痙攣であれば、重積発作として治療に当たる。
痙攣時の観察
焦らず痙攣の状態を観察する!
痙攣を発見したら、最初は誰でも焦ってしまうが、患者から離れず、よく観察することが大切となる。
痙攣の「持続時間」や「痙攣の状態」は、診断や治療を行う上でとても重要となるので、いつから始まったのか、強直性痙攣か間代性痙攣か、痙攣の様子や時間経過を観察し、医師へ報告できるようにしておく。
痙攣以外の随伴症状も確認する
突然の痙攣発作により、転倒・転落による外傷を負うことも多い。
骨折や頭部外傷、打撲等の有無や、舌を噛んでいないか、尿失禁や便失禁をしていないか確認する。
呼吸状態の確認
痙攣発作により、呼吸抑制が起きる他、意識消失により、唾液や吐物による窒息や誤嚥を引き起こす危険性があるため、呼吸状態、SPO2の値を確認する。
末梢循環の確認
不整脈による循環不全でも痙攣は起こりうるため、モニタリングし、心電図波形、血圧、脈拍を確認する。
痙攣時の対応
応援を呼ぶ
スタッフや医師を呼び、救急カートやモニターなど救急物品を用意する。
気道確保と酸素投与
痙攣発作時は、気道確保と100%酸素投与を行う。
嘔吐により、窒息を予防するために、気管吸引の準備をしておく。すでに嘔吐している場合には、顔や体ごと横向きにして、窒息を防ぎ、気管吸引をする。
100%酸素で酸素化が不十分な時には、BVMでの補助換気、それでも酸素化が不十分なときには、気管挿管を考慮する。
静脈路を確保
痙攣時に静脈路を取ることはなかなか難しい手技ではあるが、周りのスタッフに協力を仰ぎ、できるかぎり太い針(20G以上)で、末梢を確保する。
外傷を予防するため、周囲の環境整備
不随意の運動により、ベッド柵や患者が身に着けている貴金属により外傷を負う危険性があるため、それらを除去する。廊下やロビーで倒れることも少なくないため、安全確保とプライバシーの面でもベッドやストレッチャーへ移動し、処置できる部屋にへ移動する。
痙攣発作の治療薬とその特徴
ジアゼパム(ホリゾン、セルシン)
適応:痙攣発作時の第一選択薬。
作用:GABAと呼ばれる抑制性の神経伝達物質の受容体と結合することで、神経細胞のの興奮を抑制する。
投与方法:10㎎を単独でゆっくり静脈注射する。筋肉注射も可。
特徴:ジアゼパムは有効時間が短く、ほとんどの場合で再発がみられる。
フェニトイン(アレビアチン)
適応:ジアゼパムで痙攣が治まらない場合や、再発予防に投与される。
作用:Naチャネル阻害薬で、神経細胞内へのNa流入を抑制して、神経細胞の興奮を抑制する。
投与方法:125㎎~250㎎を1分間に50㎎超えない速度でゆっくり静脈注射する。
フェノバルビタール(フェノバール)
適応:重積発作が持続する場合
作用:GABAの受容体と結合することで、神経細胞の興奮を抑制する。
投与方法:1回50~200㎎、1日1~2回皮下注射or筋肉注射
特徴:作用時間は遅く持続的(長時間作用型)