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くも膜下出血の原因と病態

くも膜下出血とは?

くも膜下腔に出血し、脳脊髄液中に血液が混入した状態。

くも膜下出血を起こした人の約50%は初回の出血で死亡するとされていて、出血を繰り返すごとに死亡率も上昇するが、約30%の人は治療によって後遺症なく社会復帰できている。

くも膜下出血の病態

くも膜下出血

脳や脊髄は、髄膜と呼ばれる3層の膜で保護されている。最も外側で頭蓋骨と接している硬膜、硬膜と接しているくも膜、そしてくも膜下腔を挟んで、脳の表面に密着している軟膜がある。

硬膜は2層に分かれていて、間に脳に送られた血液を回収する硬膜静脈洞が存在する。くも膜の下は、くも膜下腔と呼ばれる空間がある。このくも膜下腔には脳脊髄液が常に150ml程度あり、脳が脳脊髄液の中にプカプカと浮かんだ状態になっている。
くも膜と軟膜の間には脳を栄養する脳動脈があり、そこから出血を起こすと、くも膜下腔に出血が広がり、くも膜下出血を起こす。

くも膜下に出血が広がると、頭蓋内は頭蓋骨で囲まれて一定の容積であるため、頭蓋内の圧力が高まり、頭痛・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状が出現する。
また、髄膜(硬膜・くも膜・軟膜)が圧迫され、髄膜は脊髄まで続いているため、項部硬直などの髄膜刺激症状も現れる。

くも膜下出血の原因

80%を占める主な原因は、脳動脈瘤の破裂。
脳動脈瘤の原因としては、先天的な中膜の欠損がある状態で、断裂が加わり、そこに血圧が加わることで、嚢状あるいは紡錘状に動脈瘤が膨らむ。 その動脈瘤に労作などで、血圧がさらに加わることで脳動脈瘤の破裂がおきる。

そのほか脳血管病変である脳動脈奇形破裂、もやもや病がある。 また、頭部外傷や、脳神経外科手術の合併症として起こることある。

脳動脈瘤の好発部位

脳動脈瘤は、血流が激しくぶつかる脳血管の分岐部に好発する。
そのため、血管の分岐部が多いウィルス動脈輪に発生しやすく、くも膜下出血の子好発部位もそこに集中している。

脳動脈瘤好発部位

  1. 内頸動脈(ICA)40%
  2. 前交通動脈(A-com)30%
  3. 中大脳動脈(MCA)20%
  4. 脳底動脈(BA)・椎骨動脈(VA)10%

症状

髄膜刺激症状

髄膜は脳から脊髄まで続いているため、脳脊髄液に出血が起きたり、感染で髄膜が刺激されると、下記の髄膜刺激症状が出現する。

頸部硬直
頭部前屈時に抵抗や痛みがある。
ケルニッヒ徴候
膝を曲げた状態で股関節を直角に屈曲し、膝を伸ばそうとすると抵抗や痛みがある。
ブルジンスキー徴
首を前屈すると膝が曲がる 。

髄膜刺激症状

頭蓋内圧亢進症状

動脈瘤が破裂すると、急激に頭蓋内圧が上昇することにより脳灌流が低下し、突然の激しい頭痛・悪心・嘔吐が出現する。 頭蓋内圧の上昇を続けると、脳ヘルニアを生じ、意識障害や病巣側の片麻痺、対光反射の消失、脳幹を圧迫すると、呼吸停止し、生命の危機に陥る。

不整脈

くも膜下出血後には、過剰な交感神経の興奮により、ST低下・QT延長、陰性T派が出現し、VT、VFなど致死性不整脈を合併することがある。 また、交感神経の活動により、肺動静脈圧の上昇、肺血流の増加を伴い、血管透過性が亢進し肺水腫を生じることがある。

出血部位別でみる症状

内頸動脈(ICA)
血腫が動眼神経を圧迫する位置にあるため、動眼神経麻痺(複視、瞳孔散大、眼瞼下垂)をみとめる。とくに内頚動脈と後交通動脈の分岐部の動脈瘤(内頸後交通動脈瘤IC-PC)では圧迫されやすい。
前交通動脈(A-com)
前頭葉は人格をつかさどる部分であり、精神症状、危険行動がみられる。 そのほか視力障害、失禁の症状がある。
中大脳動脈(MCA)
中大脳動脈は、脳の前から2/3くらいまでの広い範囲に血液を送っており、出血とは反対側の片麻痺、失語、意識障害、感覚障害、痙攣などおかされた領域により、多くの症状を生じる。
脳底動脈(BA)・椎骨動脈(VA)10%
脳底動脈は、小脳の近くにあり、出血により障害をうけることで、めまいや平衡感覚障害などの小脳症状が特徴的。また脳幹近くにあることから、脳幹から出ている動眼・外転・滑車・三叉神経の圧迫により、神経障害がみられる。

くも膜下出血の合併症

再出血

脳動脈瘤からの出血は、一時的に血栓により一時的に塞がれており通常、病院到着時には止血されている状態だが、その血栓が剥がれて再出血を起こす危険性があり、4%ほどの確率で起こる。
再出血は24時間以内、特に6時間以内に多く、再出血を起こすとさらに脳へのダメージが深刻となり、致命的となるため、くも膜下出血の治療として優先的に再出血の予防のための処置が行われる。

水頭症

髄液は出入りしていて1日に3回程度入れ替わっているが、血腫や血栓によりくも膜の癒着が起こることで、一定のところに停留することになり、髄液の循環障害が起きる。また、髄液が吸収される硬膜静脈洞への入口が塞がれることで、髄液の吸収障害により、髄液が頭蓋内に溜まり脳室を拡大する水頭症を引き起こす。

頭蓋内は頭蓋骨に囲まれ、一定の容量しか入らないため、水頭症になると頭蓋内は容量オーバーになり、頭蓋内圧はどんどん亢進し、脳を圧迫し始める。
圧迫された脳は圧迫されていない側にはみ出す脳ヘルニアを引き起こし、脳幹を圧迫すれば循環・呼吸障害を伴い致命的となる。

一般的に水頭症はくも膜下出血後3日以内に57%に発生し、1~2週間で自然に治ってくる。出血量が多く、頭蓋内圧亢進症上や脳ヘルニアなどの危険性がある場合には脳室ドレナージにて髄液を排出する処置が行われる。

呼吸・循環障害

脳底動脈からの出血がおきると、近くには視床下部・脳幹があり直接侵襲が加わると、交感神経の興奮により、カテコラミンが過剰に分泌されるため、心収縮の増大により心筋虚血に陥り、心機能の低下(心不全)をまねく。
また、心不全から肺水腫を合併することもあり、くも膜下出血の重症例では肺水腫による呼吸困難で死亡に至るケースもある。

脳血管攣縮(スパズム)

脳血管攣縮は、くも膜下出血発症後に、ウイルス動脈輪を中心とした下脳底部主管動脈に起こる血管の一時的な収縮・狭窄のこと。
くも膜下出血のほぼ全例にみられる病態で、発症日4~14日目に発生し、2~4週間持続したのちに徐々に回復する。
自覚症状としては針を刺すような持続的な頭痛として訴えることが多い。

発生機序は明らかになっていないが、血管収縮物質の分泌により、血管収縮が誘発されるとされている。
この病態は、脳虚血を進行させるため、脳梗塞を合併することがある。

電解室異常

下垂体の障害により、中枢性塩類喪失症候群(CSWS)や抗利尿ホルモン分泌異常症候群(SIADH)を引き起こすことがあり、発症率は30~50%と高く、発症3日~14日目で発症する。

中枢性塩類喪失症候群(CSWS)は、詳しい発生機序は明らかとなっていないが、ANPやBNPなどのナトリウム利尿ペプチドの分泌過剰により、Naととともに水分が体外へ排泄され、低Na血症と脱水をきたすとされている。スパズム期と重なると、脱水により脳梗塞の発症リスクがさらに高まるため補液の管理が重要となる。

抗利尿ホルモン分泌以上症候群(SIADH)とは、下垂体の障害により、抗利尿ホルモンのバソプレシンが異常分泌され、過剰な水分の再吸収が腎臓で行われるため、血液が希釈されて低Na血症を引き起こす。
水分が増えて循環血液量が増えると、それを感知した腎臓は糸球体でのろ過量を増加したり、BNPやANPなどの利尿ホルモンの分泌を増やし、利尿を促進させるため、循環血液量はそれほど変わりない。

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