くも膜下出血の治療は、①出血による頭蓋内圧の上昇を防ぎ、脳ヘルニアを予防すること、②再出血を予防すること、③全身状態の改善の3つが重要となる。
発症直後は、安静を保つため、鎮痛と鎮静を図る。そして、適切な呼吸管理や循環管理、浸透圧利尿剤の投与を行う。
脳動脈瘤の出血部位は病院に搬送された時点で、かさぶたにより一時的に止血されている状態だが、そのかさぶたが剥がれて再出血を起こす危険性がある。特に発症後24時間以内(特に6時間以内)に多いとされていて、早急に再出血の予防のための治療を行う必要がある。
外科手術をするのか、血管内治療(コイル塞栓など)を行うのか、保存療法かの選択は、重症度(※1)や年齢、出血部位などから考えられる。
Grade0 | 未破裂の動脈瘤 |
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GradeⅠ | 無症状、または軽度の頭痛と項部硬直 |
GradeⅠ-a | 急性の髄膜刺激症状はないが、神経脱落症状がある |
GradeⅡ | 中等度以上の頭痛、項部硬直はあるが 脳神経麻痺以外の神経脱落症状はない |
GradeⅢ | 傾眠状態、錯乱状態、または軽度の神経脱落症状がある |
GradeⅣ | 昏迷、中等度以上の片麻痺、除脳硬直 および自律神経障害を伴う |
GradeⅤ | 深昏迷、除脳硬直、瀕死状態 |
主に重症例で外科治療・血管内治療の適応がないと判断された場合に、降圧剤の投与により再出血の予防が行われる。
しかし、ただ単に下げればいいわけでもなく、頭蓋内圧が上昇している患者では、急激な降圧により脳灌流の低下により脳虚血を助長させてしまうため、血圧のコントロールは厳密に行わなければいけない。
くも膜下出血は、原因や出血部位、出血の程度によって症状が異なる。
時間経過とともに症状は刻々と変化しうるため、異常の早期発見のためにも意識レベルや神経学的所見(痙攣・麻痺・眼球運動など)の変化を観察する。
再出血の防止のために、厳重な血圧コントロールが行われるため、血圧のコントロールの目的でも水分出納バランスの観察は重要である。
また、利尿ホルモンや抗利尿ホルモンの分泌異常により起こる、中枢塩類喪失症候群(CSWS)や抗利尿ホルモン分泌症候群(SIADH)は、くも膜下出血後の30~50%の患者に発症するため、水分出納バランスの観察や電解質の変化には注意し観察する。
特に、CSWSは循環血液量の減少により、脳梗塞を合併する危険性も高まるため、神経学的所見も含め観察が必要となる。
出血や、手術操作の影響により脳浮腫が起こり頭蓋内圧が上昇するため、頭蓋内圧症状の有無や程度を確認する。(症状参照)
発症4日~14日目に起こるとされていて、たとえ手術をしても、これにより発症後2週間は気が抜けない状態となる。
脳血管攣縮は、針を刺すような頭痛やだるい、食欲がないなどの症状を伴い、血管攣縮により脳虚血を引き起こすと、脳梗塞により麻痺や意識障害を引き起こし、予後を左右することになる。
そのため、患者の活気や頭痛の訴え、神経学的所見の観察を行い、異常の早期発見につとめる必要がある。
かさぶただけで止血されている状態の動脈瘤は、大きな音や痛み刺激で破裂してしまうこともある。
そのため、手術翌日に再出血がないことが確認できるまでは、絶対安静となり、採光・温度・湿度・騒音への対処、面会制限をして患者に与える刺激は最小限にしなければいけない。
鎮痛剤や鎮痛剤を使用し安静を図ることもある。
※安静時は頭蓋内亢進を予防するためにも、ベッドは10度~30度ベッドアップしておくことが望ましい。
意識障害に伴う呼吸障害の管理、気道の確保や適切な酸素吸入や排痰のための援助を行う。
強い努責により頭蓋内圧亢進を招くため、緩下剤などを使用し、排便コントロールを行う。
脳ヘルニア時や術後には、脳槽ドレナージや腰椎ドレナージを行い頭蓋内圧を管理する。ドレーン排液の量・性状・混濁・拍動や挿入部や固定状態を観察するのとともに、適切にドレナージできるよう固定や体位を工夫する。