帯状疱疹とは?
帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)によって引き起こされる感染症。
VZVに初めて感染したときは、水痘(すいとう。一般的には水ぼうそう。)として発症し、1週間ほどで治癒するが、ウイルスは治癒後も体内に潜伏する。
その後、3人に2人は生涯症状はでないが、3人に1人は、免疫力が低下した際にがこのウイルスが再活性化し、帯状疱疹として発症する。
体の左右どちらかの神経に沿って、赤い発疹と水泡が帯状に生じることから、『帯状疱疹』と呼ばれる。
原因
- 高齢者…加齢による免疫力の低下。
- 免疫抑制状態…抗がん剤、免疫抑制剤(ステロイド)の使用、HIV感染者など。
- ストレスや疲労…免疫機能を低下させる。
症状
初期症状
倦怠感・微熱・頭痛・悪寒を感じることがある。
皮膚症状
初期は赤い斑点や丘疹(小さな赤い発疹)が現れ、これが数日以内に水疱へと進行する。水疱は帯状に集まって現れ、体の左右どちらかに広がるのが一般的。
約7~10日後には水疱や膿疱が破れて痂皮を形成。
この痂疲は乾燥し、数週間以内に脱落するが、皮膚に色素沈着や瘢痕が残ることがある。
左右どちらかに発生するのは、なぜ?
VZVは、脊髄から左右に伸びている神経の根本(神経節)に潜伏し、神経が支配する左右どちらかの皮膚分節にのみ症状が現れるため。
神経症状
神経痛は、帯状疱疹の特徴的な症状で、発疹が現れる前に痛みが先行することが多い。刺すような痛みや焼けるような痛みが特徴。
掻痒感、痺れ、感覚の鈍さなどが現れることがある。
合併症
帯状疱疹後神経痛(PHN)
発疹が治った後も長期間にわたって続く神経痛。特に高齢者に多く見られる。
眼帯状疱疹
目の周りに発疹が出る場合で、視力低下や失明のリスクがある。
ラムゼイ・ハント症候群
顔面神経に影響を与え、顔面麻痺や聴覚障害を引き起こす。
細菌感染
水疱が破れた際に細菌感染が生じることがある。
治療
抗ウイルス薬
- アシクロビル
- バラシクロビル
- ファムシクロビル
などの内服薬が使用される。発症早期(72時間以内)に開始することで効果が高い。
重症の場合、免疫力が低下している場合には、入院して点滴治療が必要となる。
鎮痛薬
神経痛の管理には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、場合によってはオピオイドなどが用いられる。
外用薬
抗ウイルス薬
- アシクロビル軟膏:抗ウイルス作用があり、ウイルスの増殖を抑える。初期の症状に対して早期に使用すると効果が高い。
- ペンシクロビル軟膏:アシクロビルと同様に、抗ウイルス作用を持つ。
鎮痛・抗炎症軟膏
- リドカイン軟膏:局所麻酔効果があり、痛みを和らげるために使用される。
- カプサイシン軟膏:神経痛を緩和するために使用されるが、初期には刺激が強いため、注意が必要。
抗菌軟膏
- バシトラシン軟膏:二次感染を防ぐために使用される抗生物質軟膏。
- ムピロシン軟膏:同様に、細菌感染を防ぐために使用される。
保湿・保護軟膏
- 亜鉛華軟膏:皮膚を保護し、炎症を和らげる効果がある。
- ワセリン:保湿効果があり、皮膚の乾燥を防ぐ。
帯状疱疹の感染リスク
帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)にかかったことがある人は、すでに水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が体内に潜伏しているので感染することはない。
ただし、水痘にかかっていない人(特に免疫力が低下している人や妊婦、乳児など)は、帯状疱疹の水疱に含まれるウイルスに接触することで、初感染して水痘(水ぼうそう)を発症する可能性がある。
水痘ワクチンを受けていれば感染しない?
水痘ワクチンは、接種すると水痘の発症リスクが大幅に減少し、重症化のリスクも減少する。
もし、知らないうちにウイルスが体内に潜伏していたとしても、自然感染者よりも帯状疱疹の発症率が低いとされている。また、発症した場合でも症状が軽減されることが多い。
水痘ワクチンは1994年に日本で認可され、2014年10月1日に定期接種に組み込まれるまで、任意接種であった。そのため、2014年9月以前の生まれで、水痘(水ぼうそう)に感染したことがない場合には、特に感染に注意しなければいけない。
帯状疱疹の感染予防策
標準予防策を徹底
患者と接触時には、手袋の装着や手指衛生といった標準予防策(スタンダード・プリコーション)を徹底する。
水疱が痂疲化するまでは、接触予防策
発疹が痂疲化するまでは、感染リスクが高いため、軟膏処置や入浴介助など患者に直接接触したり、衣類が接触する可能性がある場合には、手袋、ガウン、必要に応じてフェイスシールドを装着する。
また、水疱が破膜すると、感染力が高まるため、痂疲化するまでは、病変部をガーゼやフィルムで覆うことが推奨される。
空気感染予防が必要な場合
通常、空気感染はしないが、免疫不全(抗がん剤治療中、白血病、HIV感染など)の患者は、空気感染するリスクがある。そのため、免疫不全の患者が近くにいる環境では、帯状疱疹の患者を個室に隔離し、他患との接触を避ける必要がある。
その他、院内での感染対策
入浴方法
シャワー浴または、入る順番を最後にする。
衣類、リネンの洗濯方法
通常通りの洗濯でOK!
環境整備
使用した物品やベッド周囲はアルコールまたはアルコールや第4級アンモニウム含有浸クロスで清掃する。