目次
インスリン注射の目的
インスリンの分泌・働きが低下した患者に対し、不足したインスリンを補うことで、血糖コントロールを行う。
インスリン注射の適応
- 1型糖尿病
- 食事・運動・内服薬だけでは血糖コントロール不良な、2型糖尿病
- 糖尿病合併妊娠(糖尿病の女性が妊娠した場合)
- 重篤な感染症
- 全身管理が必要な外科手術時など
インスリン注射の種類
超即効型
商品名:ノボラピット、ヒューマロ、アピドラ
作用:10分程度で効きはじめ、30分程でピークとなり、3~5時間持続
速効型
商品名:ノボリンR、ヒューマリンR
作用:30分程で効きはじめ、2時間程でピークとなり、5~8時間持続
混合型
商品名:ノボリン30R、ヒューマリン30R
作用:超即効型と速効型と中間型を混ぜたもので、10分~1時間で早く効きはじめ、18~24時間長く持続する。
中間型
商品名:ノボリンN、ヒューマリンN、ヒューマログN
作用:90分程で効きはじめ、4時間程でピークとなり、24時間程持続
持効型
商品名:ランタス、レベミル
作用:注射して1~2時間で効きはじめ、ほぼ1日持続
インスリンの注射部位
インスリン注射は皮下注なので、看護師実施の場合には、通常の皮下注射部位(肩峰と肘頭を結ぶ線の下1/3)で実施する。
自己注射用のペン型インスリンの場合、上腕外側・腹部・臀部・大腿部に実施する(上図参照)。インスリンの吸収速度は、注射部位により若干の違いがあり、腹部→上腕→臀部→大腿の順に遅くなる。その他、運動や入浴による温度の上昇で吸収速度は早まる。
そのため、自己注射の場合には、吸収速度が速く、温度の変化が少ない腹部がもっとも適しているとされている。
インスリン注射の必要物品
注射器実施の場合
- 指示のインスリン
- インスリン専用の注射器
(1メモリ1単位になっている) - 酒精綿
- ハザードBOX
- ディスポ手袋
ペン型インスリンの場合
- ペン型インスリン
- 専用の注射針
- 酒精綿
- ハザードBOX
- ディスポ手袋
インスリン注射の手順・手技
注射器実施の場合
- 物品を準備する
- 手指衛生を行い、ディスポ手袋を装着する
- ネームバンド、氏名、生年月日など患者の本人確認を行い、注射指示を確認する。
- 白濁タイプのインスリンはバイアルを両手で挟み、ゆっくり転がして混和する。
- バイアルのゴム栓を酒精綿で消毒
- 注射器に、指示の投与量と同量の空気を吸引し、バイアルに注入する
- バイアルを逆さまにして、インスリンを注射器に吸引する
- 注射器内の気泡を取り除く
- 患者の上腕を消毒
- 皮下脂肪をつまみ、30℃の角度で注射針を刺入する
- 血液の逆流がないことを確認して、インスリンを注入する
- 注入後は、刺入部を揉まずアルコール綿でおさえる
- 注射器・注射針をハザードBOXに捨てる
- 出血が少量ある場合もあるため、その時は絆創膏を貼っておく
- 患者に終了を告げ、気分不快時にはすぐに知らせるよう声をかける
※低血糖になる危険性があるため!
ペン型インスリンの場合
- 物品を準備する
- 手指衛生を行い、ディスポ手袋を装着する
- ネームバンド、氏名、生年月日など患者の本人確認を行い、注射指示を確認する。
- 白濁タイプのインスリンは、注射器を10回以上振るか転がす。(理由は注射器実施の場合を参照)
- ゴム栓をアルコール綿で消毒する
- 専用の注射針をゴム栓に刺し、時計回りに取り付け、キャップを外す
- ダイアルを『2』に合わせる
- 針先を上に向けて、空気を上に集めてから空打ちする
- 空打ち後、ダイアルが『0』になっていることを確認して、指示の単位にダイアルを合わせる
- 注射部位を選択して(前回注射部位から2~3㎝離す)、円を描くように消毒する
- 皮下脂肪をつまみ、注射器を90度の角度で穿刺する
- 注入ボタンが『0』になるまで押しきり、押し続けたまま、6~10秒待ってから針を抜く
- 刺入部は揉まずに酒精綿で押さえる
- リキャップはせずに、針を外してそのままハザードBOXに捨てる
- 患者に終了を告げ、気分不快時にはすぐに知らせるよう声をかける
※低血糖になる危険性もあるため!
インスリン使用時は低血糖に注意
低血糖とは?
血液中のブドウ糖が正常より低下した状態
低血糖になる理由
- 食事の時間が遅かった、摂取量が少なかった
- インスリンの量が多かった
- 激しい運動や長時間運動をした
- 入浴
- 下痢など
低血糖症状
血糖値60~70mg/dl以下
空腹感・感動悸・冷汗・脱力感・頭痛・めまいなど
血糖値50㎎/dl以下
意識レベルの低下、見当識障害、痙攣などの中枢神経症状が出現
低血糖時の対応
低血糖時は、早期発見と適切な対応が重要となる!
入院患者に低血糖症状が現れたら、すぐに血糖測定をして、リーダーや医師に報告して指示を仰ぐ。大抵は、下の指示が出るため、早急に実施して患者の症状や血糖値の回復をチェックする。
- 内服できる場合は、ブドウ糖5~10gを内服
(角砂糖や飴、ジュースでもOK) - 50%ブドウ糖を20mlor40ml静注