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腰椎穿刺とは?
腰椎のくも膜下腔にスパイナル針を穿刺し、髄液の一部を採取する検査のこと。
腰椎穿刺はルンバールとも呼ばれる。
スパイナル針って?
内筒と外筒のある長い針のことで、穿刺したら内筒を引き抜いて外筒だけを留置し、髄液を採取できるようになっている。
腰椎穿刺の目的
- 髄膜炎を疑う時、髄液内の細菌を調べる
- 悪性腫瘍の腫瘍マーカーを測定する
- くも膜下出血が疑われる場合、髄液内の血液を調べる
- 髄膜炎や悪性腫瘍の髄腔内播種の対する治療として、くも膜下腔に直接薬剤を注入する
- 髄液圧(頭蓋内圧)を測定する
- 減圧の目的で髄液の排除を行う
髄液の正常と異常
性状
- 正常:無色透明
- 細菌感染:白濁(白血球の増加)、黄色(蛋白の増加)
- 出血:血性
髄液圧(頭蓋内圧)
- 正常:70~180mmH₂O(初圧)
- 異常:200mmH₂O以上→頭蓋内圧亢進
髄膜炎やくも膜下出血の場合に上昇する。
腰椎穿刺の禁忌
- 頭蓋内圧亢進が重度な場合。
※脳ヘルニアを誘発する危険性があるため - 腰椎穿刺部に感染や病変がある場合
※細菌が穿刺部からくも膜下腔に入り込む危険性があるため - 出血傾向が強い場合
腰椎穿刺の合併症
- 局所麻酔による副作用:嘔気・嘔吐、アナフィラキシーショック
- 穿刺による神経損傷:下肢の痺れ、麻痺、歩行障害
- 脳ヘルニアによる症状:意識障害、呼吸障害、呼吸停止
- 髄液圧の変化による症状:頭痛・嘔気・嘔吐
- 穿刺部からの感染:髄膜炎による発熱、激しい頭痛・嘔吐
腰椎穿刺の方法
必要物品
滅菌穴あき覆布、圧棒、スパイナル針、滅菌手袋、三方活栓、局所麻酔、消毒液、消毒用綿球・シャーレ、10㏄シリンジ、23G注射針、滅菌スピッツ3本、膿盆、攝子、処置用シーツ、絆創膏(ワセリン、ゲンタシンなど)
検査手順
- 検査の方法・目的を説明し同意を得る。
- 検査前に排尿を済ませてバイタルサインを測定する。
- 滅菌スペースに必要物品を準備し、検査の環境を整える
- 患者の体位を整える
・ベッド端に身体を寄せ、側臥位にする
・両膝を曲げて両手で抱え、顎を胸につけてもらう
・背中をエビのように丸くし、肩と骨盤が斜めに倒れないようにする。 - 処置用シーツを引く
- Dr:消毒
Ns:消毒液を渡す - Dr:滅菌手袋を装着する
- Dr:局所麻酔
Ns:局所麻酔を無菌操作で渡す - Ns:患者の体位が崩れないよう、肩と腰臀部を支える
- Dr:スパイナル針をL3~L4間またはL4~L5間に穿刺
Ns:穿刺時には、押されるような感覚があることを患者に説明。
穿刺後には初圧の確認、神経症状の確認を行う - Ns:医師の指示により、頸静脈の圧迫を行う(クエッケンステット試験)
- Dr:髄液圧の測定、髄液の採取
Ns:髄液圧の確認、髄液の性状を確認する。
患者の症状を確認する - Dr:抜針後、滅菌ガーゼで穿刺部を圧迫。
- Dr:髄液漏れがなければ、軟膏とガーゼ、テープにて固定。
- Ns:Drに安静の指示を確認
- Ns:患者に検査終了と安静時間をつたえる。
腰椎穿刺時の看護ケア
- 腰椎穿刺は、脳ヘルニアの進行により意識障害や呼吸停止を引き起こす危険性もあるため、バイタルサインや頭蓋内圧亢進症状(頭痛や嘔吐)などの注意して観察する。
- 脳ヘルニア意外にも、穿刺により神経損傷や、局所麻酔によるアレルギー症状などの合併症を引き起こす危険性もあるため、検査中・検査後も適宜症状の観察を行う。
- 腰椎穿刺後は髄液圧が低下し、頭痛を生じやすいため、髄液圧が戻るまで絶対安静となり、体位は枕を外し、水平位で通常1~2時間の安静を保つ。
その後の24時間もできるだけ安静にして過ごすよう説明する。 - 検査後の入浴は原則禁止で、翌日から穿刺部位や症状に異常がなければ可能となる。
- 患者にとって『腰から針を刺す』恐ろしい検査であり、不安を抱きやすいため、検査中も進行状況を適時説明し、少しでもリラックスできるよう介助する。