PEG(胃瘻)の基本と看護ケア

目次

PEGとは?

経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)とは、腹壁と胃をつなぐ小さな穴(胃瘻)をつくるための内視鏡手術のこと。

この胃瘻には、胃瘻カテーテルやPEGカテーテルと呼ばれる管が通され、ここから胃に直接栄養が投与される。

PEG(胃瘻)の基本と看護ケア

PEGの目的

経口的に必要な栄養を摂取できなくなった患者に対し、直接胃に栄養剤を注入することで、確実な栄養補給を行う。

PEGの適応

  • 嚥下・摂食障害
    ・脳血管障害・認知症のため自発的に摂取できない
    ・神経筋疾患のため摂取不能or嚥下困難
    ・頭部・顔面外傷により摂取困難
    ・咽喉頭・食食道・胃噴門部狭窄
  • 繰り返す誤嚥性肺炎
  • 炎症性腸疾患(クローン病)
  • 減圧療法(幽門狭窄や上部小腸閉塞)

胃瘻カテーテルの構造と種類

胃瘻カテーテルは、胃内の固定部カテーテル腹壁の固定部によって構成されている。
胃内の固定はバルン型バンパー型、腹壁の固定はボタン型チューブ型があり、この組み合わせにより胃瘻カテーテルは4種類の製品に分けられる。

各固定には次のような特徴があるので、メリット・デメリットを考えて患者に適したものが選択されている。

PEG固定のバルン型とバンパー型イメージ

バルン型

  • バルンの蒸留水を抜くことで簡単に交換できる
  • 瘻孔損傷などのトラブルが少ない
  • 耐久性が引く、交換頻度が多い(月1回)
  • バルン損傷による自己抜去を起こすことがある

バンパー型

  • 交換には内視鏡または透視が必要で、手技が難しい
  • 瘻孔損傷などのトラブルが多い
  • 耐久性が高く交換頻度が少ない(6ヵ月に1回)
  • 自己抜去が少ない
PEG腹壁側の固定ボタン型とチューブ型イメージ

ボタン型

  • 体外に出ている長さが短いので、事故抜去が少ない
  • 体動時、邪魔にならない
  • 衛生的
  • 栄養剤投与時、専用の接続チューブが必要

チューブ型

  • チューブの長さがあるので、事故抜去しやすい
  • 体動時、邪魔になりやすい
  • 清潔を保ちづらい
  • 接続が簡単

PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)の3つの方法

PEGの手技には主にプル法、プッシュ法、イントロデュ―サー法があり、近年ではイントロデュ―サー変法も多く用いられている。

いずれの方法も、内視鏡を使用しながら専用のキットで胃瘻チューブを留置する。

プル(Pull)法

口腔から胃まで内視鏡を挿入し、胃瘻造設部位を確認後、腹壁に局麻をして切開する。腹壁の切開部からループをつくったガイドワイヤーを通し、そこをスネアでつまんで内視鏡とともに一緒に口までもっていく。

PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)プル(Pull)法イメージ

口の外にガイドワイヤーが出たら、ガイドワイヤーと胃瘻カテーテルのワイヤーとをしっかり結び付ける。

PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)プル(Pull)法イメージ2

腹壁から出てているガイドワイヤーを引き、胃瘻カテーテルを口→胃を通過させながら体外へと引き出す。

PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)プル(Pull)法イメージ3

プッシュ(Push)法

PULL法と同様に、内視鏡を経口的に挿入し穿刺部から胃内に挿入したガイドワイヤーをスネアでつまんで口から出す。
口の外にガイドワイヤーがでたら、胃瘻カテーテルをかぶせる。

PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)プッシュ(Push)法イメージ1

ガイドワイヤーに沿って胃瘻カテーテルを口→胃へと押し込んで、腹壁外へ押し出す。

PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)プッシュ(Push)法イメージ2

Pull・Push法は、16~24Frの太いカテーテルを挿入できたり、事故抜去のリスクが少ないという利点があるが、胃瘻カテーテルが口腔内を通過するため、創感染のリスクを伴う他、内視鏡の挿入を2回行わなければいけないため、患者への負担も大きい。

イントロデュ―サー(Introducer)法

胃壁固定・皮膚切開し、腹壁にトロッカーを穿刺して、外筒を介して直接胃瘻カテーテルを挿入する方法。

PEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)イントロデュ―サー(Introducer法イメージ1

※胃内の固定部がバルーン型のものが適応。

イントロデュ―サー(Introducer)変法

胃壁固定と皮膚切開後、腹壁に細い穿刺針を挿入。
穿刺針の内針を抜去したら、そこにガイドワイヤーを挿入する。

イントロデュ―サー(Introducer)変法イメージ1

穿刺針の外筒も抜去し、ガイドワイヤーに沿ってダイレーター(拡張器)を挿入する。

イントロデュ―サー(Introducer)変法イメージ2

ダイレーターで穴が十分に拡張したら、ダイレーターを抜去し胃瘻カテーテルを挿入する。この時、胃内固定部のバンパーは伸展させた状態にして挿入する。

イントロデュ―サー(Introducer)変法イメージ3

※胃内の固定部がバンパー型のものが適応。

イントロデュ―サー法およびイントロデューサー変法は、胃瘻カテーテルが口腔内を通過しないので、創感染のリスクが少ないまた内視鏡挿入が一度なので患者への負担が少ない。

胃瘻造設時に行う胃壁固定とは?

皮膚切開・穿刺前に、胃瘻カテーテル挿入部の胃壁と腹壁を縫合し、固定すること。
胃瘻は、胃壁と腹壁の癒着が完成するまで通常1~2週間を要するのだが、この胃壁固定を行うことで、胃壁と腹壁の離開や自己抜去により起こる腹膜炎の合併を予防することができる。

胃壁固定は、イントロデュ―サー法・変法では必須で、Push・Pull法でも合併症の減少が報告されていて、実施が推奨されている。

PEGの絶対禁忌

  • 内視鏡検査自体が絶対禁忌
  • 咽喉頭・食道狭窄で内視鏡が通過できない
  • 出血傾向
  • 急性期のイレウス(減圧目的の手術以外の場合)
  • 胃前壁を腹壁に近接できない状況(腹水、肥満、胃病変など)

PEGの合併症とその対応

皮膚の発赤・潰瘍形成

  • 瘻孔周囲を水道水or生理食塩水で洗浄し、皮膚を清潔に保つ。
  • 真菌(カビ)感染の場合には抗生剤を使用する。
  • 腹壁の固定部の圧迫を緩めたり、ガーゼを挟んだり皮膚への圧迫を解除する。また皮膚保護パウダーを用いる。

不良肉芽

  • 腹壁の固定部を緩める。
  • ステロイド軟膏の塗布。
  • 浸出液や出血が多い場合には焼灼、外科的切除を行う

不良肉芽とは?
肉芽(にくが)とは、外傷や炎症でできた創の治癒過程にできる組織のことで、創傷治癒で重要な役割を成す。
不良肉芽は、感染や異物反応が原因となって形成される『もろい肉芽組織』なので、健康な肉芽の形成を妨げる他、出血などの原因になってしまう。

瘻孔感染

  • 洗浄し皮膚を清潔に保つ。
  • 腹壁の固定部を緩める。
  • 抗生剤を使用する。

瘻孔から栄養剤・消化液の漏れ

  • 栄養剤の注入速度をゆっくりにする。
  • 注入と注入の間の間隔を開ける。
  • 撥水性クリームやワセリンを塗付し、皮膚トラブルを予防する。
  • 瘻孔が開いている場合には、栄養状態の評価を行う。
  • 瘻孔がチューブの圧迫による場合には、腹壁の固定部を緩めたり、サイズ変更のためPEG交換を行う。

カテーテルの自己抜去

  • バルーンの蒸留水が抜けて抜去されたのであれば、再度入れなおすか、バルーンカテーテル(14F)を挿入して、瘻孔が塞がらないよう応急処置を行う。
  • 瘻孔形成前(PEG造設後2~3週間くらい)は、瘻孔閉塞を防ぐ他、出血や胃内容物が腹腔内に漏れて腹膜炎を起こす危険性があるため、早急に医師に報告する。

瘻孔は、数時間で塞がってしまうので、自己抜去時は急いで対応を!!
ただし、カテーテル挿入時に抵抗があるようなら無理に挿入はせず、すぐ医師へに報告する。

カテーテルの汚染や詰まり

  • 栄養剤が残ると細菌が繁殖するため、栄養後にぬるま湯をフラッシュし、汚れを洗い流す。
  • 栄養後にカテーテル内を酢水で満たして3~8時間(栄養と栄養の間)クランプしておくと殺菌効果があるという報告も。
  • カテーテルを交換する。

逆流・嘔吐・誤嚥

  • 栄養剤の投与速度をゆっくりにする。
  • 栄養剤が多すぎる場合には、減量する。
  • 胃を圧迫しないように、投与時・投与後30分以上は30度~90度ギャッジアップする体勢をとる。
  • 胃の機能が低下している場合には、薬剤を使用したり、胃瘻から空腸瘻へ変更を検討する。

便秘・腹部膨満と下痢

  • 栄養剤の量、濃度、温度、速度、間隔を調整する。
  • 整腸剤を使用する。

胃瘻造設前の看護ケア

口腔ケア

胃瘻造設時には内視鏡を口から挿入するため、口腔内の細菌が侵入しやすく、創部感染の原因や誤嚥性肺炎の原因となるため、口腔内を清潔にしておく。

内服薬の継続・中止を確認

抗血小板薬(アスピリン等)・抗凝固剤(ワルファリン・ヘパリンなど)を内服中であれば、術中・術後の出血を予防するため休薬する。休薬の期間は医師に確認し、患者・家族には中止の必要と中止に伴う血栓塞栓症のリスクを十分に説明する。

抗血小板薬や抗凝固剤は、ほとんど症例で中止されるが、血栓塞栓症のリスクが高い患者には中止しないで胃瘻造設術を行う場合もある。

術前検査の確認・実施

PEG造設前の必須検査である、腹部・腹部X線、腹部CTまたは超音波の実施確認、その他血液検査にで出血傾向の評価を行うため、検査値を確認しておく。

胃瘻造設後の看護ケア

観察ポイント

胃瘻周囲の皮膚状態

感染徴候である発赤・痛み・腫脹・熱感がない確認し、異常を認める場合には医師に報告する。

浸出液の有無、色、におい

黄色や緑、ニオイがきつい場合には感染の可能性があるため、異常を認める場合には医師に報告する。

固定部と皮膚との間のゆとり

固定部が皮膚を圧迫しすぎると瘻孔周囲の皮膚炎など合併症を起こすので、固定部と皮膚との間には1~2㎝の余裕をもたせる。

造設1週間までの看護ケア

胃瘻造設後1週間は、瘻孔が完成していない(腹壁と胃壁が癒着していない)ので、特に感染や合併症に注意し毎日のケアを行う!

  1. ステリクロンを使用し、胃瘻中心から外側に円を描くように消毒する。
  2. 固定部と皮膚との間にYガーゼをおく。
    この時、消毒したところは手で触れない。
  3. Yガーゼの上に滅菌ガーゼを置いて、絆創膏で固定する。
  4. カテーテル型の場合は、事故抜去予防のために、ループをつくって滅菌ガーゼで包んで固定する。
  5. 事故抜去予防のため、腹帯を巻く。
    ※この時、胃瘻を圧迫しないよう強く巻きすぎない。
PEG造設1週間までの固定方法

造設1週間後からの看護ケア

  1. 胃瘻の周囲の汚れを、ぬるま湯で湿らせたガーゼや綿棒で丁寧に除去する。
  2. 【2】で落としきれない血液や浸出液など汚れは、泡立てた石鹸でやさしく洗い流す。
  3. 胃瘻カテーテルをクルクルと回転させて、動きがスムーズから確認する。
  4. 洗浄した後の湿りは自然乾燥させる。
    皮膚が過度に乾燥している場合にはクリームを塗付し保湿する。
  5. 事故抜去予防の腹帯を巻き、衣類を着用する。

シャワー浴は造設後1週間、入浴は2週間くらいから可能で、また、胃瘻のフィルム材等で防水処置は必要ないので、お風呂でキレイに洗浄できるならそれでOK!

手順3は内部の固定部が強く固定されすぎていないかの確認で、動きが鈍い場合には、固定部が胃壁に食い込んで埋没している危険性がある!

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