血液検査値の見方①凝固系

目次

血液が凝固するしくみ

凝固系の検査値を見るためには、血液凝固の仕組みを理解しておくことが、とっても重要!
血液は凝固して血栓をつくる一次止血・二次止血と、血栓を溶かす一次線溶・二次線溶の過程があるので、まずは順を追ってみていく。

一次止血

血液が凝固するしくみ1,一次止血イメージ

血管は損傷すると、通常、自らの力で数分のうちに止血をする。
この血液凝固の働きに大きく関与しているのが、血液中にある血小板という血球。血小板は、もちろん傷がない状態では、凝固することはないのだが、傷ができると、血管外にあるコラーゲン組織が血小板に付着するこで、血小板が活性化し、凝固反応が起きる。
活性化した血小板は、傷口に集まり、血栓という塊をつくり、傷口を塞ぐ。
これが一次止血と呼ばれる反応になる。

二次止血

血液が凝固するしくみ2、二次止血イメージ

血小板で作られた血栓では、止血が不十分なので、次にフィブリンという繊維素で傷口をさらに覆う。

血漿中には、フィブリノゲンという凝固因子が存在するのだが、血小板と同じく、そのままでは凝固反応はおきない。
ここで関与するのが、肝臓で生成されたプロトロンビンで、出血がおきると、このプロトロンビンが凝固因子の働きでトロンビンに活性化する。
活性化したトロンビンは、血漿中のフィブリノゲンをフィブリンという繊維素に変えて、これが網状の繊維となり、赤血球を吸着しながら傷口を覆って止血が完了する。

線溶

血液が凝固するしくみ3,線溶イメージ

血液凝固によって、できてフィブリンやフィブリノゲンは、プラスミンという物質によって、いずれは分解されて液体になる。
この血栓が溶けて分解される働きのことを線溶いい、フィブリノゲンが分解される一次線溶と、フィブリンが分解される二次線溶に分けられる。

凝固系の検査値の見方

血小板数(PLT)

血小板は、血管に損傷を受けると、損傷を受けた血管に集まって出血を防ぐ。

基準値:15~34×10⁴/µL

増加体内で血栓が形成されている可能性あり。
脳梗塞・心筋梗塞・四肢動脈血栓など
減少出血傾向
血小板数が異常を認める場合

プロトロンビン時間(PT)

出血が始まってから、肝臓でプロトロンビンが作られるまでの時間。
プロトロンビンは、肝臓で生成されるため、肝機能の指標にもなる。

基準値:9~15秒

延長凝固因子欠乏症、ビタミンK欠乏症
肝機能障害、DIC、
抗凝固剤など
短縮妊娠や高齢など生理的な変動
※特に短縮しても問題はない。
PTが異常を認める場合

プロトロンビン時間(PT-INR)

PTは、試薬によって感度が違い、検査値のバラつきがでてしまうため、国際的に統一しよう!ということで、各試薬ごとに計算式があり、その計算によって、求められた値。
PTが延長すれば、PT-INRも延長する。
ワーファリンのコントロール目的でよく使用される。

基準値:1.0
異常を認める場合は、PTと同じ。

トロンボプラスチン時間(APTT)

トロンボプラスチン(凝固因子)の働きで血液が凝固するまでの時間を測定する。
この凝固時間を見ることで12個の凝固因子のうち、第Ⅰ・Ⅱ・Ⅴ・Ⅷ・Ⅹ・XI、XII因子の働きを知ることができる。

基準値:20~40秒

延長凝固因子欠乏症、血友病A,B
ビタミンK欠乏症
肝機能障害、DIC、ヘパリンの投与
短縮問題なし
APTTが異常を認める場合

Dダイマー

線溶によりフィブリンが分解されて生じた物質のひとつ。フィブリンは血栓の一部なので、フィブリンが分解されたということは、どこかに血栓があることを示す。

基準値:1.0µg/ml

上昇血栓症、DIC、脳梗塞
心筋梗塞、悪性腫瘍、大動脈解離
胸水・腹水、肝硬変など
低下特に問題はない
Dダイマーが異常を認める場合

フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP)

止血のためにつくられたフィブリンやフィブリノゲンがプラスミンによって、分解されて生じたもの。

基準値:5µg/ml

上昇線溶亢進、DIC、血栓症、脳梗塞、心筋梗塞
悪性腫瘍、大動脈解離、肝硬変
腹水・胸水の貯留など
低下問題なし
FDPが異常を認める場合

検査値は、測定方法や測定機器、男女により差があります。
各施設での正常値を確認するようにしてください。

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