血ガスから酸塩基平衡をみる

目次

酸塩基平衡を見るための3つの値

酸塩基平衡をみるとき必要なのはこの3つ!

PH、PaO2、HCO₃

この3つの正常値と、数値が増えたとき、減った時、アシドーシス・アルカローシスどちらに傾くのか覚えれば、血ガスから酸塩基平衡は読むことができる!!

PH(ぺーハー)

PHの正常値は7.4
(正常範囲:PH7.35~7.45)

酸塩基平衡の基本イメージ

PHが7.4より下がるということは…
酸に傾いているからアシドーシス。
PHが7.4より上がるということは…
塩基に傾いているのでアルカローシスとなる。

『酸塩基平衡の基本』をみる

PaCO₂(動脈血二酸化炭素分圧)

PaCO₂の正常値は40mmHg
(正常範囲:35~45mmHg)

CO₂は呼吸で排泄している酸なので、呼吸に異常がある場合に、酸塩基平衡が崩れる!!

酸であるCO₂が
40mmHgより上がるときは…
酸が増えるから呼吸性アシドーシスに傾く。
40mmHgより下がるときは…
酸が減るから呼吸性アルカローシスに傾く。

HCO₃⁻(重炭酸イオン)

HCO₃⁻の正常値は24mmol/L
(正常範囲:21~25mmol/L)

HCO₃は、腎臓で作られる塩基(酸を消す役割)なので、代謝に異常がある場合に、酸塩基平衡が崩れる!!

塩基であるHCO₃⁻が
24mmol/Lより上がるということは…
塩基が増えるので、代謝性アルカローシスに傾く。
24mmol/Lより下がるということは…
塩基が減るので代謝性アシドーシスに傾く。

実際に酸塩基平衡を読んでみる

PH7.32、PaCO₂38、HCO₃⁻18

PH→7.4から下がってるので、アシドーシス
PaCO₂→40mmHgからちょっと下がってるけど正常範囲内。
HCO₃⁻→24mmol/分から下がっているので、アシドーシス。

PHは、アシドーシスになっている。
では、PHをアシドーシスに傾けている犯人は誰だ!?…
HCO₃がアシドーシスに傾けている。
HCO₃⁻は異常ということは、代謝に問題があるということなので
A.代謝性アシドーシスとなる。

PH7.6、PaCO₂25、HCO₃⁻24

PH→上がっているので、アルカローシス。
PaCO₂→下がっているので、アルカローシス。
HCO₃⁻→正常

同じように考えていると
アルカローシスに傾けている犯人はPaCO₂。CO₂が異常になる原因は呼吸にあるので、
A.呼吸性アルカローシスとなる。

PH7.0、PaCO₂80、HCO₃⁻15

PH→かなり下がっているので、アシドーシス
PaCO₂→かなり上がっているので、アシドーシス
HCO₃⁻15→かなり下がってるので、アシドーシス

この時は、呼吸性?代償性?
…どっちも!
呼吸が抑制されて、CO₂を吐き出せず、腎機能も低下してHCO₃が作れず、体にどんどん酸が溜まっていっている状態で、かなり危険。

こんな状態は、代謝性呼吸性(混同性)アシドーシスと言う。

PH7.3、PaCO₂60、HCO₃⁻34

PH→下がっているので、アシドーシス。
PaCO₂→上がっているので、アシドーシス。
HCO₃⁻→上がっているので、アルカローシス。

HCO₃のアルカローシスへの動きへは惑わされずに、今まで通りアシドーシスにしている犯人を捜すと、PaCO₂が増えてアシドーシスへ傾けているので、呼吸性アシドーシスとなる。
では何故、HCO₃⁻がアルカローシスへ動いているのかというと、これは、代償機転という働きによるもので、呼吸に障害がでると、腎臓で働きを代償しようとするため。
この場合、酸であるCO₂が溜まっているので、腎臓では塩基であるHCO₃⁻の産出を増やして酸を減らそうとしている。
アシドーシスになろうという動きを、なんとかして腎臓は食い止めようと働いているのだ。 これを代謝性代償といい、逆に代謝に異常がある場合には呼吸性代償が働く。
A.呼吸性アシドーシス 代謝性代償

PH7.1、PaCO₂24、HCO₃⁻18

PH→下がっているので、アシドーシス。
PaCO₂→下がっているので、アルカローシス。
HCO₃⁻→下がっているので、アシドーシス。

PHをアシドーシスに傾けている犯人は、HCO₃⁻。
ということは、代謝性アシドーシス。
そして、PaCO₂がアルカローシスに傾いているのは、腎臓のせいでアシドーシスになっている酸塩基平衡を補正しようと呼吸で代償しているから!
A.代謝性アシドーシス、呼吸性代償

呼吸性代償と代謝性代償のまとめ

代謝性アシドーシスの呼吸性代償

代謝性アシドーシスの呼吸性代償

代謝に異常が発生した時には、呼吸でCO₂の排出調整を行う。

代謝アシドーシスの場合には、塩基であるHCO₃⁻が少なくなった状態で、体内の酸が過剰になっているため、呼吸で代償するため、酸であるCO₂を呼気からたくさん排出する。

この呼吸性代償は、代謝性アシドーシスが発生してから、数秒のうち、遅くても数分のうちに始まり、呼吸数を増加し1回換気量も増加するよう働く。

呼吸性アシドーシスの代謝性代償

呼吸性アシドーシスの代謝性代償

呼吸の異常が発生したときには、腎臓でHCO₃⁻の産出や排出調整を行う。

呼吸性アシドーシスの場合には、酸であるCO₂た溜まった状態にあるので、HCO₃をたくさん産出するほか、再吸収を増やして、代謝性の代償が起こる。

しかし、この代謝性代償の問題としては、時間がかかること。
呼吸の異常を補う働きをするには、約5日間(正常の腎機能で)という長い時間を要する。

酸塩基平衡をみる補助的な数値

BE(ベース・エクセス)

BEは、Base(塩基)Excess(過剰)の略で、塩基であるHCO₃⁻が正常からどれくらい過剰になっているかを示す値で、HCO₃⁻とともに代謝性異常をみる指標になる。

BE正常値:-2~+2

塩基が不足→BEはマイナスになる
・代謝性アシドーシス(HCO₃⁻低下)
・呼吸性アルカローシスの代謝性代償(HCO₃⁻低下)

塩基が過剰→BEはプラスになる
・代謝性アルカローシス(HCO₃⁻上昇)
・呼吸性アシドーシスの代謝性代償(HCO₃⁻上昇)

例題…PH7.25 PCO₂35 HCO₃⁻15 BE⁻9

BE:-9はまず異常値であり、代謝性因子に問題があることがすぐにわかる。
次に、『マイナス』は、塩基が不足しているということだから、アシドーシスだということがわかる。これは代謝性アシドーシスなのか、代謝性代償なのかみてみると、PHもアシドーシスに傾いているから、代謝性アシドーシスということがわかる。

AG(アニオン・ギャップ)

AGは、アニオン(陰イオン)ギャップ(差)の略語。

人間の身体は陽イオン(Na⁺、K⁺など)と陰イオン(Cⅼ⁻、HCO₃⁻など)があり、陽イオンと陰イオンの和は等しくなるようにできている。

しかし、通常の検査では検出されない陰イオンがあり、この差をアニオンギャップと言う。

AG(アニオン・ギャップ)のイメージ


AG=[Na+]-[Cl⁻]-[HCO₃⁻]
の式でアニオンギャップ求めることができ、正常値は12(正常範囲10~14)なので、これより大きければ、通常測定できない陰イオン(ケトンや乳酸など)が上昇していることを示し、代謝性アシドーシスの原因を予測することができる。

<アニオンギャップが上昇する病態>

  • 糖尿病性ケトアシドーシス
  • 飢餓
  • アルコール性ケトアシドーシス
  • 乳酸アシドーシス(ショック、重症呼吸器疾患、DICなど)
  • 腎不全など
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