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降圧剤-種類と作用機序

降圧剤とは?

血圧は心拍出量(1分間に送り出される血液量)と末梢血管抵抗(血管の弾性のこと)で決まる。そのため、心拍出量末梢血管抵抗を減少させることで、降圧効果をもたらすのが降圧剤である。

降圧剤の効果

降圧剤には、Ca拮抗薬、硝酸薬、βブロッカー、RAA系薬(ACE阻害薬・ARB・SAB・レニン阻害薬)、利尿剤など様々な種類があるが、それぞれ作用機序が異ななるため、治療に適した降圧剤が選択されている。

Ca拮抗薬(Caブロッカー)

血管や心臓などの筋肉は、CaイオンがCaチャネル(細胞にあるイオンの出入り口)に流れ込むことで収縮する。
そのため、血管の収縮の原因となる血管平滑筋へのCaイオンの流入を防ぐことで血管収縮を抑制し、血管は拡張して血圧を下がる

カルシウム拮抗薬の作用

降圧剤として主に使用されるジヒドロピリジン系(DHP系)のCa拮抗薬は、血管平滑筋と冠動脈を拡張する作用が強いが、心筋にはほとんど作用しない。

一方、ベンゾジアゼピン系のヘルベッサーやフェニルアルキルアミン系のワソラン非ヒドロピリジン系(非DHP系)に分類され、これらは血管平滑筋よりも心筋への作用が高く、心収縮・心拍数を減弱する作用が強い。
そのため、高血圧症だけでなく、狭心症や不整脈の治療にも使用される。

主なCa拮抗薬
投与経路
ぺルジピン 内・注
ニフェジピン 内・注
ヘルベッサー 内・注
ノルバスク

主な適応症

高齢者や臓器障害を合併した高血圧症
DHP系の薬は、降圧の効果が高く、臓器血流も保つことができる。
そのため、多くの症例で第一選択薬として使用される。
頻脈を伴った高血圧
非DHP系の薬は心筋への作用が強く、心収縮と心拍数を減弱する作用がある。
労作性狭心症・異型狭心症
Ca拮抗薬は末梢血管と冠動脈を広げる効果があるため、冠動脈が狭くなって発症する労作性狭心症に有効。
また、血管の痙攣を抑える作用もあるため、異型狭心症にも有効。

禁忌

非DHP系に限っては心抑制作用が強いため以下の症例では禁忌となる。

副作用

利尿剤

腎尿細管におけるNaの再吸収を抑制することで、尿の排泄を促して循環血液量を減少させる。結果、心拍出量が減り血圧を低下させる。

利尿剤の降圧作用

主な利尿剤
投与経路 種類
フロセミド(ラシックス) 内・注 ループ系
ダイクロトライド サイアザイド系
フルイトラン サイアザイド系
ナトリックス サイアザイド系
類似薬

主な適応

高齢者の高血圧
ループ系利尿薬は利尿作用が強いため、高齢者に投与する場合には副作用に注意しなければならないが、サイアザイド系は少量使用で副作用を最小限にして降圧効果を得られるため、第一選択薬としてよく用いられる。
心不全
ループ系利尿薬は利尿作用が強いため、前負荷を軽減したい心不全の治療として用いられる。
腎不全
フロセミドは腎血流量、糸球体ろ過量を増加させる効果があるため、腎不全の患者にも利尿効果を発揮する。また水分と一緒にカリウムの排泄を促すため、腎不全に合併する高カリウム血症の治療にも有効。
一方サイアザイド系利尿薬は、腎機能障害では効果が発揮されずらい。

禁忌

副作用

ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬

血圧上昇には腎臓にあるRAA系というホルモンが関係してくるのだが、このRAA系の働きの一部であるアンギオテンシンⅠをⅡへ変換させるACE(アンギオテンシン変換酵素)の働きをブロックのがこの薬。

アンギオテンシンⅠからⅡに変換させないことで、どう降圧に関わるのかというと・・・アンジオテンシンⅡは、①血管平滑筋を収縮させたり、②腎臓でのNaや水分の排泄を抑制し、循環血液量を増やすことで血圧を上昇させる作用がある。そのため、アンギオテンシンⅡを作らせないことで血圧を下げることができる。

ACE阻害薬の作用

主なACE阻害薬
投与経路
レニベース
カプトリル
オドリック

適応

心不全/心筋梗塞後
ACE阻害薬には、臓器保護作用があり、心保護作用や予後改善の効果があるとされている。
糖尿病/メタボリックシンドローム
ACE阻害薬にはインスリン抵抗性(インスリン自体の働きが悪くなる)を改善する働きがあり、さらに糖尿病新規発症抑制作用があることが報告されている。
そのため、糖尿病と高血圧症がある患者には、ACE阻害薬または同じRAA系のARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)が第一選択薬として使われる。
脳血管障害慢性期
ACE阻害薬には脳循環調整作用あり。
腎不全
ACE阻害薬には腎保護作用もあり、糸球体内圧の低下やタンパク尿を減少させる作用がある。

禁忌

副作用

β遮断薬(βブロッカー)

心臓にある交感神経系のβ受容体(心収縮増強や気管支拡張を担う受容体)を遮断することで、心収縮力や心拍数を低下させる作用をもつ。
結果、心拍出量を減らして血圧を低下させることができる。

β遮断薬の作用

主な β遮断薬
投与経路 選択性 ISA
インデラル 内・注 非選択性
セロケン β1
メインテート β1
アセタノール β1

※β受容体の選択性による分類

β受容体は、以下3つ受容体がある。
1、主に心筋に存在するβ1受容体
2、平滑筋(血管や肺・肝臓などの臓器)に存在するβ2受容体
3、脂肪細胞に存在するβ3受容体

β遮断薬の中にはこのすべての受容体に作用する薬と、β1受容体つまり心臓のみに選択的に作用する薬がある。上の表でメインテートやセロケンはβ1選択性のβ遮断薬になる。

インデラルのような非選択性のβ遮断薬は、β2・β3受容体も遮断する。そのため、β2受容体遮断による気管支収縮や血管収縮や、β3受容体遮断による、脂肪代謝の抑制が起こる。そのため、喘息発作や末梢循環障害、脂肪代謝異常などの副作用を起こす危険性がある。

※ISA(内因性β刺激作用)による分類

ISA(Intrinsic Sympathomimetic Activity)とは、交感神経が興奮しているときにはβ受容体への刺激を抑制し、興奮していないときにはβ受容体を少しだけ刺激する作用のこと。

この働きをもつISA(+)のβ遮断薬は、適度に交感神経を興奮させた受容体にして心拍出量を低下させすぎないという特徴があり、高齢者や徐脈の患者に適している。
一方で、ISA(-)のβ遮断薬は、心拍出量を減少させたい狭心症や頻脈の患者に適している。

適応疾患

高血圧
交感神経が活性化する若年性高血圧やストレス性の高血圧、頻脈が合併している高血圧甲状腺機能亢進
心不全
負荷がかかっている心臓の仕事量を減らすことができる。
虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)
心臓の酸素供給が減っている中で、心臓の仕事量を減らして酸素消費量を減らすことができる。

禁忌

副作用

【注意!】降圧剤と相互作用がある薬

降圧剤を内服している患者は非常に多く、看護師も持参薬や内服薬としてよく手にする薬のひとつ。
だからこそ、降圧剤と相互作用を示す薬剤には注意しなければならない!

Ca拮抗薬がグレープフルーツと相互作用があることはよく知られているが、 看護師がよくお世話になるNSAIDS(ロキソニンやボルタレン)も、降圧剤の種類によっては作用を減弱させるものがある!

臨床では医師の指示で相互作用がある薬も併用される場合があるのだが、副作用を知らずに投与することは非常に危険なので、相互作用を示す組み合わせは覚えておく!

相互作用を示す組み合わせ

NSAIDS利尿剤/β遮断薬/ACE阻害薬
→降圧効果を減弱
H2受容体拮抗薬(ガスター等)Ca拮抗薬/β遮断薬
→降圧効果を増強
ワルファリンβ遮断薬
→ワルファリン作用の増強
グレープフルーツ(ジュース)Ca拮抗薬
→降圧効果の増強
煙草/アルコールβ遮断薬
→降圧効果の減弱

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