パートや非常勤で働く看護師さんにとって、年収の壁(103万円、130万円)は働き方を制限する要因となっていました。しかし、最近は、この「壁」を気にせずに働けるよう、政府が緩和策を進めています!
この記事では、最新の動向と、まだ残っている課題についてわかりやすく解説していきます。
2024年12月23日 追記
【悲報】結局これ以上働けない!?103万の壁撤廃に向けた最新動向
年収の壁って何?
「年収の壁」とは、収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が増えて、手取り収入が減ってしまう現象のことです。このため、多くの方が「働きすぎると損をするかも…」と感じ、収入を調整してきたのではないでしょうか。
具体的には、こんなラインがあります。
年収103万円を超えると所得税がかかります。(しかし、年収105万円で1000円/年と負担は少ない)
一番問題となるのが、妻の年収が103万を超えると、夫の家族手当の支給が打ち切られる場合があること!月1万もらっていれば、年12万円ですから、ここが問題となる家庭も多いですね。
会社が従業員51人以上で、週20時間以上働き、月収8.8万円(年収106万円)を超えると夫の扶養から外れて、自分で社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する必要が生じます。
例えば、年収108万円の場合、年間15万円の社会保険料が引かれるので103万働くよりも手取り収入が減ってしまう現象が起きます。
小規模なクリニックや施設でない限り、看護師は「106万円の壁」に直面するケースが多いでしょう。
会社の従業員が51人未満でも、年収130万円を超えると夫の扶養から外れて自分で社会保険に加入する必要があります。
年収132万円の場合、約18~21万円の保険料を支払うことになり、結果として手取り収入が減少してしまいます。
夫の税金はどうなるの?配偶者控除の問題
103万までは配偶者控除、103万円を超えても配偶者特別控除が適応されるため、夫の税金がすぐに大幅に増える心配はありません。
年収が150万円以下であれば、103万までの配偶者控除と同じ最大38万円の控除が適用され、夫の所得税や住民税の軽減額も変わりありません。
しかし、年収が150万円を超えると、配偶者特別控除の額が段階的に減少します。その結果、夫の税負担も徐々に増えていき、年収が201万円以上になると、配偶者控除・配偶者特別控除のどちらも適用外となります。
夫の控除額と税負担の変化(妻の年収別)
妻の年収 | 夫の控除額 | 夫の所得税軽減額 | 夫の住民税軽減額 | 夫の税金負担増減額(合計) |
---|---|---|---|---|
103万円以下 | 配偶者控除38万円 | 約7.6万円 | 約3.3万円 | 約10.9万円軽減 |
120万円 | 配偶者特別控除38万円 | 約7.6万円 | 約3.3万円 | 約10.9万円軽減 |
130万円 | 配偶者特別控除38万円 | 約7.6万円 | 約3.3万円 | 約10.9万円軽減 |
150万円 | 配偶者特別控除38万円 | 約7.6万円 | 約3.3万円 | 約10.9万円軽減 |
170万円 | 配偶者特別控除26万円 | 約5.2万円 | 約2.2万円 | 約7.4万円軽減 |
180万円 | 配偶者特別控除13万円 | 約2.6万円 | 約1.1万円 | 約3.7万円軽減 |
190万円 | 配偶者特別控除7万円 | 約1.4万円 | 約0.7万円 | 約2.1万円軽減 |
201万円以上 | 控除なし(適用外) | なし | なし | 約10.9万円増加 |
政府がすでに実施した「年収の壁」の緩和策
政府は、このような「年収の壁」を気にせず働けるようにするため、すでにいくつかの対策を講じています。
106万円の壁の対象が広がる!
2024年10月からは、今まで従業員501人以上が対象であった社会保険加入の義務化が、従業員51人以上の企業に変更されました。この対象拡大は、社会保険の充実という点ではメリットがありますが、手取り収入を上げたいパートにとっては、デメリットの方が大きいように感じます。
一時的な収入増加への配慮
従来は、一時的なボーナスや残業などの収入でも年収130万円を超えると扶養から外れてしまうケースがありましたが、こうした不公平感を軽減するため、一時的に年収が130万円を超えても、「継続的な収入増ではない」と認められれば扶養から外れない制度が、2023年10月から開始されました。
政府が今進めている「年収の壁」緩和策とは?
今までの政策だけでは、「年収の壁」がまだ大きな規制となっている状況のため、政府はより自由に働ける環境を目指して、次のような緩和策を進めています!
(1)配偶者控除(103万円の壁)の見直し
どんな議論がされているの?
- 配偶者控除が原因で、働く時間を制限する人が多いため、この仕組みを変えようという議論があります。
- 配偶者の扶養に入る条件を緩和するか、そもそも配偶者控除を廃止して税制を簡単にするか、などが検討されています。
課題は?
- 配偶者控除を廃止すると税負担が増える家庭が出るため、その影響をどうするかが焦点です。
(2)社会保険のさらなる適用拡大
今後どうなるの?
- 現在は「従業員が51人以上」の企業が対象ですが、51人未満の小規模な会社や事業所も将来的には対象にする案が出ています。
課題は?
- 小規模な事業所では負担が増えるため、企業側の反発や人手不足が懸念されています。
(3)働き方に応じた保険料の負担見直し
何を変えたいの?
- 働いた時間や収入に応じて柔軟に保険料を計算する仕組みが検討されています。
- 例えば、短時間労働の人は低い負担、長時間労働の人は通常通りの負担とする仕組み。
メリットは?
- 収入が増えても急に負担が増える「壁」の影響を軽減できる。
まだ残る課題とこれからの期待
現在、看護師さんが103万円の壁を意識して働くと、1日4時間を週3~4回程度の勤務が限界というのが実情です。物価が上昇する中で「もう少し稼ぎたい」「子どもが成長したから勤務時間を増やしたい」と考える方も多いはずですが、この「壁」が働き方の制約となっています。
今回は、パート看護師さんがより自由に働ける環境を整えるために、解決が期待される課題とその対策についてまとめてみました!
家族手当の見直し
103万円を超えて働くと、夫の会社から支給される家族手当が打ち切られる場合があり、パートで働く看護師さんにとって大きな問題になっています。
実際、年間数千円程度の所得税や住民税の負担よりも、月に約1万円、年間で12万円程度支給される家族手当がなくなる方が影響は大きく、多くの人が「103万円以内」に年収を抑える選択をしています。
家族手当の打ち切りラインは企業ごとに異なりますが、このルールが「稼ぎたいのに稼げない」状況を作り出していることを、政府や企業にも理解してもらい、柔軟な働き方を支援する環境を整えてもらいたいですね!
社会保険加入へのハードル
106万または130万円を超えて夫の扶養から外れると、いきなり社会保険料が年15万円以上かかってきます。(年収150万だと社会保険料は23万円)
この負担がかなり大きく、扶養内で働く大きな原因となっています。
働き損が発生しないような段階的な負担方式や、年収200万以下の労働者に対する負担額軽減策など検討してもらえると、扶養から外れても働きやすいですね!
パート看護師が安心して働ける社会に期待!
103万円の壁や社会保険の加入基準、家族手当の支給条件など、パートさんが自由に働くための『壁』はまだ大きいですね。
しかし、これらの課題を解決できれば、家庭の収入増や働きたい人の意欲をサポートでき、病院の人手不足の改善にもつながるはずです!政府と企業が一体となり、パート看護師が働きやすい制度が整うことを期待したいですね♪