慢性腎臓病(CKD)とは?
腎障害が慢性的に持続しているすべての病態の総称。
比較的新しい疾患概念で、透析や腎移植を要する患者が世界的に増加していることから、アメリカで提唱され世界的に広まった。
慢性腎不全(CRF)より早い段階で発見・治療を開始し、心血管疾患(CVD)や末期腎不全(ESKD)への移行を予防することを目的としている。
末期腎不全の略語『ESKD』と『ESRD』、何が違うの?
ESKDは『end‒stageの、kidney(腎臓) disease(病気)』で、ESRD『end‒stageのrenal(腎臓の) disease(病気)』。ただ腎臓が名詞か形容詞かって違い。どちらも「日本透析医学会透析医学用語集」に載っているからどちらで覚えても良さそう。
CKDのリスクファクター
- 高血圧
- 耐糖能障害、糖尿病
- 肥満、脂質異常症、メタボリックシンドローム
- 膠原病、全身性感染症
- 尿路結石、尿路感染症、前立腺肥大
- 慢性腎臓病の家族・低体重出産
- 加工の健診での尿所見の異常や腎機能異常、腎の形態異常の指摘
- 常用薬(特にNSAIDS)、サプリメントなどの服用歴
- 急性じん不全の既往
- 喫煙
- 高齢
- 片腎、萎縮した小さい腎臓
原因疾患
- 第1位:糖尿病性腎症(40.2%)
- 第2位:腎硬化症(18.2%)
- 第3位:慢性糸球体腎炎(14.2%)
- 第4位:原因不明(13.4%)
CKDの重症度分類
CKDのステージは、腎臓のはたらきを示すGFR(糸球体でどれくらいろ過できているか表す数値で、クレアチニン(Cr)値と年齢、性別から計算して求められる。)によって、G1~G5のステージに分けられる。
また、蛋白尿の程度によってA1(-、+-)A2(+)A3(2+以上)に分類され、GFRが同じ値でも、蛋白尿が増えれば重症度は上がり、死亡・末期腎不全・心血管疾患のリスクが高くなる。
詳細はこちらから↓
日本腎臓学会『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018』
CKDの症状
軽症の場合
自覚症状はほぼない。
中等症の場合
ステージG3になり腎機能が半分になって初めて自覚症状が出現。腎の濃縮力低下による夜間多尿やエリスロポエチンという造血ホルモンの産出低下で腎性貧血や倦怠感を生じる。
高度の場合
尿毒症症状や心不全症状を呈し、呼吸困難や不整脈など生命にかかわる合併症をきたすリスクが高い。
CKDの検査
尿検査
尿蛋白の有無を調べる。
血液検査
血清クレアチニンCr値、性別、年齢から推算糸球体濾過量(eGFR)を計算し、腎機能を評価する。
腎生検
CKDの原因は多岐にわたるため、上記2つの検査では診断が難しく、確定診断と重症度評価のために腎生検を行い、病理組織診断が行われることがある。
CKDの定義・診断基準
- 検査で腎機能障害が確認できる
・尿検査…蛋白尿や血尿+
・血液検査…腎機能障害
・病理…組織の異常を認める
・画像…腎萎縮や多発性胞腎などの画像異常がある。 - GFR値<60ml/分/1.73㎡
上記のいずれかまたは両方が3カ月以上続いているときと定義される。
CKDの治療
CKDの治療は、GFRの低下を予防して末期腎不全への移行を回避すること。また心血管障害を予防し、生命期間の延長とQOLを向上させることが目的となる。
CKDの重症度別に対策や治療が検討される。
生活習慣の改善
喫煙はCKD増悪の因子であり、禁煙を行う。また、適度な飲酒(エタノール60g/日未満)はCKDとの関連はないと言われているが、多量の飲酒は高血圧や電解質異常、CKDや末期腎不全のリスクとなるため避ける。
定期的な運動もCKDの進行予防には有効と言われている。
食事指導
減塩が最も重要で、食塩の摂取量は1日3g以上6g未満が推奨される。食塩制限は血圧および尿蛋白を低下させる。
また、血管石灰化や動脈硬化を予防するため、リンが含まれる食品添加物はなるべく摂らないよう指導する。
高血圧の治療
腎障害の悪化、心血管疾患の予防のためには高血圧治療は重要となり、通常130/80mmHg未満、膿蛋白が1g/日以上の患者では125/75mmHg未満を目標にコントロールを行う。
尿蛋白減少のためには、レニン・アンギオテンシン系阻害薬(RAS阻害薬)が第1選択される。
RAS阻害薬 | |||
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ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬 | ・カプトプリル (カプトリル) ・エナラプリル (レニベース) | ||
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体)拮抗薬 | ・ロサルタン (ニューロタン) ・オルメサルタン (オルメテック) ・アジルサルタン (アジルバ) |
これらの薬で降圧効果が得られない場合には、Ca拮抗薬や利尿薬を併用して降圧を図る。
糖尿病の治療
CKDの原因疾患第1位であり、血糖コントロールでESKDや心血管疾患の発症を予防できる。
HbA1c(JDS値)で6.5%、国際標準値6.9%未満を目標にして、食事療法や運動療法を行い、それでも効果がみられない場合には、血糖下降薬やインシュリン製剤を使用する。
脂質異常症の治療
脂質異常症の治療は尿蛋白の減少にも効果が期待できる。
LDLコレステロールは120㎎/dl未満にコントロールする。食事療法・運動療法による生活習慣の改善と薬物療法(スタチン)の考慮が推奨されている。
貧血の治療
貧血は心血管疾患(CVD)の危険因子でもある。ステージ3G以上によると、腎臓でのエリスロポエチン産出が低下することで赤血球の産出が障害され、貧血を合併する。
Hb11.0g/dl未満(HD患者は10.0g/dl未満)で赤血球造血刺激因子製剤(ESA)の投与を行い貧血の改善を図る。
赤血球造血刺激因子製剤(ESA) | |
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エポエチンα(エスポ―) | 2週に1回、皮下注 |
ダルべポエチン(ネスプ) | 2週に1回、皮下注 |
エポエリンベータペゴル(ミルセラ) | 4週に1回、皮下注または静注 |
骨やミネラル代謝異常(CKD-MBD)の治療
高P血症、低Ca血症、ビタミンDの活性化障害に対して、炭酸カルシウム製剤やビタミンD製剤を投与する。
尿毒症の治療
治療薬であるクレメジンは、尿毒素を消化管内で吸着し、糞便中に排出する。
黒い砂状の薬で、カプセル型・錠剤・細粒がある。