大腸憩室(だいちょうけいしつ)とは?
腸管内圧の上昇により、大腸壁の一部が袋状に外側へ脱出したもの。
大腸憩室の原因と病態
元々腸蠕動が強い人や、食物繊維の摂取低下、便秘などで腸管内圧が上昇すると、大腸壁の弱い部分から粘膜が脱出して憩室が発生する。
好発部位としては、盲腸・上行結腸・S上結腸で発生しやすい。


大腸憩室は、日本人の20~40%に形成されるとされているが、約80%は無症状で経過する。しかし、残り13%で憩室炎、7%で憩室出血を合併し、さまざまな症状を呈し、重症化すると膿瘍形成・穿孔・腹膜炎・腸閉塞を生じる危険性もある疾患。
憩室炎
憩室に炎症や感染が起きた状態のことで、袋状に形成された憩室に便がつまって、そこから細菌感染を起こして発症する。
症状
- 右下腹部痛・左下腹部痛
※上行結腸(右側結腸)の発生がほぼ6割。 - 嘔気・嘔吐
- 便秘
- 下痢
- 発熱
- 腹部膨満感など
憩室出血
憩室内の血管が破綻した状態で、憩室炎の進行や加齢による血管壁の脆弱化、高血圧などが原因となって発生する。
症状
- 腹痛を伴わない突然の下血
大腸憩室の検査
注腸造影検査
直腸から造影剤を注入して、X線透視下で直腸から全結腸、回盲部(大腸と小腸のつなぎ目)までを観察できる検査。
憩室が、大腸壁に1㎝程度膨らんだ袋状の構造として描出される他、合併症である腫瘍・狭窄・瘻孔が観察される場合もある。
大腸内視鏡検査(CS)
内視鏡を肛門から挿入し、回盲部までの大腸粘膜の観察を行う検査。

憩室はポケット状の陥没として観察される。
憩室出血を合併しているときには、活動性の出血やコアグラの付着が認められる場合があり、内視鏡検査と同時にクリップによる止血処置が行うことができる。
腹部CT検査
憩室炎や憩室出血の診断には、造影剤をつかった腹部CT検査が有用。
大腸憩室は、憩室内の噴石や空気を含んだ袋状の構造として描出される。
憩室炎では、憩室周囲の壁の肥厚や膿瘍形成が認められ、憩室出血では稀に造影剤の血管外漏出が認められる。
大腸憩室の治療
合併症がない場合
憩室を発見したが、症状がない場合には憩室炎や憩室出血などの合併症を起こさないよう、食物繊維を多くとるよう食事指導を行い、便通の改善を図る。
憩室炎を合併する場合
経口抗菌薬を投与
炎症が軽度の場合、抗生剤の内服で外来フォロー可能。
絶食・経静脈的抗菌薬の投与
炎症が中等度の場合、絶食・補液管理で腸を休めながら経静脈的に抗生剤の投与を行う。
経皮的ドレナージ
膿瘍形成を伴う場合には、経皮的ドレナージを行う。
外科手術
上記の治療で憩室炎の改善がみられない場合や、合併症を伴う場合、憩室炎を繰り返す場合には、外科手術が適応となる。
手術は、憩室がある結腸を切除して吻合する場合と、結腸吻合後に一時的にストーマを造設する場合がある。
また、汎発性腹膜炎で炎症がかなり強い場合には、病変部を切除後、結腸を吻合せずにストーマを造設するハルトマン手術が行われる。このスト―マは状態が落ち着いてから元に戻すことが可能。

憩室出血を合併する場合
憩室出血が確認される場合には、緊急内視鏡が適応となり、大腸内視鏡にて止血クリップをかける処置が行われる。
内視鏡で止血されずに活動性の出血が続く場合には、腹部血管造影検査(腹部アンギオ)にて、動脈塞栓術も検討される。