CVポートとは?
皮下埋め込み型カテーテルのことで、中心静脈カテーテルの一種。
皮下に埋め込まれたポートから中心静脈までは、カテーテルがつながるため、経皮的にポートに穿刺することで、中心静脈に薬剤を投与できる仕組みになっている。
CVポートのメリット
- 1回で確実に穿刺できるため、刺し直しがほぼない。
- 皮下に埋め込まれているため、日常生活に支障がない。
- 通常のCVカテーテルのように事故抜去の危険がない。
- 中心静脈カテーテルなので、抗がん剤や高カロリー輸液を投与しても静脈炎の危険性が少ない
- 感染率が低く、長期間使用できる。
CVポートの適応
- 長期的な栄養投与
- 長期間の抗がん剤治療
CVポートの留置部位
鎖骨下静脈、内頸静脈、上腕尺側皮静脈、大腿動脈から挿入され、カテーテル先端は、通常のCVカテーテルと同様に、中心静脈に留置される。
ポートは、前胸部や上腕部の皮下に埋め込まれることが多いが、鼠経部や腹部に埋め込まれることもある。
ちなみに、CVポート埋め込み術は、局所麻酔で30~60分程。
不要となった場合には、同じように局所麻酔で20分程度の処置で摘出することができる。
CVポートの構造
CVポートは、直径2~3㎝の円盤状のポート部分と、薬剤を中心静脈に注入するカテーテルの2つから成る。
ポートの中心にはセプタムというシリコンゴムが埋め込まれており、ポート針(穿刺針)で下部のリザーバータンクまで貫くことで、そこにつながるカテーテルから中心静脈に薬剤を注入できる仕組みになっている。
CVポートの種類(先端の形状)
ロックなどの管理方法が異なるため、患者にどのタイプを使用しているか確認する!
オープンエンド
先端が開放されている一般的な形状のカテーテル。
血液が逆流しやすく血栓が形成することがあるため、フラッシュやロック時はヘパ生で行う。ただし、ヘパリンコーティングタイプの製品は、生食で管理が可能。
非使用時は、4週間ごとに生食10mlでフラッシュを行う
オープンエンドタイプの主な製品はこちら。
- PUセルサイトポート(アルフレッサファーマ)
※ヘパリンコーティングタイプ - セルサイトSTD(東レ・メディカル)
グローションタイプ
カテーテル先端は閉鎖された構造で、側面のスリットから薬剤を注入あるいは血液が吸入される仕組みになっている。
未使用時はこのスリットは閉鎖され、カテーテル先端も閉鎖構造のため、血液の逆流を防止し、血栓が形成されにくい。
そのため、フラッシュやロックはヘパ生ではなく、生食で管理が可能。
非使用時は4週間ごとに生食10ml以上でフラッシュする。
グローションタイプの主な製品はこちら。
- バードポートTi静脈用(メディコン)
- パワーポートMRI(メディコン)
※造影剤も投与可能 - マイクロニードルポート(日本コヴィディエン)
CVポートの穿刺と固定方法
必要物品
- CVポート専用のポート針
- ロックコネクター
- 生食20ml
※グローションタイプの場合 - へパ生20ml
※オープンエンドタイプの場合 - 酒精綿(ポビドンヨード、ヒビテンアルコールなどでもOK)
- 透明フィルム
- 固定テープ
- 滅菌ガーゼ
- 手袋
- 止血用絆創膏
注入前のフラッシュは10ml?20ml?
10mlとする文献もあり、実際に10mlでフラッシュを行う医療機関も多いが、原則的には20㏄でフラッシュするのが正解。
これは、10㏄程度ではもしも、薬液が血管外漏出していた場合に気づきにくいため。
手順
- 物品の準備
- 患者へ薬剤投与の説明を行い、承諾を得る
- 患者確認
- 手指消毒を行い手袋を装着
- ポート針に生理食塩水入りのシリンジを接続しルート内を満たす
- ポート針のクランプを閉じ、清潔なトレイに入れておく
- 患者のベッドサイドへ行き、ポート部を露出する
- 触ってポート部を確認する
- ポートの中心から外側に円を描くように直径10~13㎝の範囲を消毒
- 消毒液が乾燥するまで待つ
- 利き手の反対側の第1・2指でポートを挟むように固定する
- 利き手でポート針をもち、ポートに対し垂直穿刺する
- “コツン”という感触があればOK!
- クレンメを開き、逆血を確認する
- 生理食塩水20㏄をゆっくり注入する
刺入部痛の増強や腫脹の有無を確認する。 - ポート針を固定する
(次項で解説) - 輸液ラインを接続し、滴下を開始する
固定方法
- 翼と皮膚の間に隙間ができて、不安定な場合には、滅菌ガーゼを挟み安定させる。
- 穿刺部位が観察できる透明なポリウレタンフィルムで全体を覆う。
- 根本を固定テープで固定し、さらにループを作り固定する。
CVポート針の抜針とロック
必要物品
- 生食10㏄ ※グローションタイプの場合
- ヘパ生10㏄ ※オープンエンドタイプの場合
※脂肪乳剤、血液製剤の投与後は、20ml以上のフラッシュが必要。 - シリンジ
- 酒精綿
- 絆創膏
- 手袋
手順
- 手指衛生を行い手袋を装着
- クレンメを閉じる
- 接続部を外し、消毒する
- 生食を満たしたシリンジを接続部につなげ、クレンメを開ける
- 生食を注入する
- 固定テープを優しく剥がす
- ポート針を垂直に引き抜く
安全機能付きのポート針は、指で両サイドの翼状部を挟み、パチッと音がするまで完全に畳み込み針を格納する。 - 穿刺部位を圧迫
- 止血後に絆創膏を貼る
CVポートの合併症とトラブル
CVポートの感染
局所感染によりポート周囲に発赤・腫脹・疼痛・硬結を認めることがある。
血流感染により、敗血症に至ることもあるため、CVポート感染と診断された場合には、原則としてCVポートを抜去する。
薬剤の血管外漏出
ポート針がセプタムから外れた場合・カテーテルが破損した場合には薬剤の血管外漏出を起こす。ポート部の痛み、腫脹、発赤、注入時の抵抗、滴下不良を認める場合には、薬剤の漏出を疑い、注入をすぐに中止する。
カテーテルの閉塞・ピンチオフ
血液の逆流がなかったり、フラッシュできなかった場合には、カテーテルの閉塞が疑われる。
閉塞は、血栓やフィブリン形成により起こる。無理に圧をかけると、カテーテルの破損を起こす可能性があるため、力づくで開通させようとせず、CVポートの入れ替えを検討する。
また、ピンチオフといって、カテーテルが鎖骨と第1肋骨に挟みこまれることでも閉塞や損傷が起こる。
血液の逆流がなかったり、患者の体位によって注入する時の抵抗が異なる場合は、このピンチオフが疑い、X線撮影でカテーテル位置を確認する。
ポートの破損・接続部の離脱
ポートに過剰な圧がかかると、タンクが破損したり、ポートとカテーテルの接続が外れる場合がある。
注入困難な場合は、無理に薬液注入やフラッシュをしない。