腹腔穿刺

目次

腹腔穿刺とは?

腹腔内に穿刺針を刺入する検査。

腹腔穿刺の目的

  • 腹水貯留の有無(※1)や、性状の確認(※2)を行う
  • 腹膜炎などで細菌感染した浸出液を体外へ排出する
  • 腹水貯留により生じる腹部膨満感を軽減する
  • 治療のため、腹腔内へ直接抗生物質や抗がん剤を注入する

(※1)腹水とは?

腹水とは、腹腔内に溜まった液体のこと。健常者でも常に20~50mlの腹水が溜まっているのだが、炎症や血症浸透圧の低下により、多い時には数リットルまで増加する。

(※2)腹水の種類と性状

漏出性腹水

血管内の水分が漏れだし生じる腹水。
原因疾患:門脈圧亢進症、低アルブミン血症、心不全など
腹水の性状:淡黄色/水溶性/透明

滲出性腹水

腹腔内の炎症により生じる腹水。
原因疾患:腹膜炎、腹部悪性腫瘍など
腹水の性状:淡黄色or膿性or血性/粘調/混濁

  • 血性…腹腔内出血、がん性腹膜炎、急性膵炎、絞扼性イレウスなど
  • 乳び…悪性リンパ腫、悪性腫瘍、膵がん、腹部外傷など
  • 膿性…腹膜炎など
  • 胆汁様…十二指腸穿孔、胆嚢穿孔など

腹腔穿刺中の看護ケア

排液量・排液の性状を観察する

排液をいっきに抜くと、血圧低下を引き起こすこともあるので、何時間でどれくらいの量抜くのか医師に確認し、急激なドレナージは避ける。
また、排液の性状を観察し、記録する。

安楽な体位を工夫する

腹水は1~2時間かけて抜くこともあるため、患者に苦痛がないよう自己抜去しないよう注意しながら安楽な体位に調整する。
また、体位によって排液がストップしてしまう場合もあるため、体位を調整する際には排液の流出を確認することも大切。

バイタルサインを観察

排液により、ショックを引き起こすこともあるため、定期的に患者の状態を確認し、バイタルサインの測定を行う。
腹水貯留により、横隔膜が圧迫されていた場合には、腹水の減少によりSpO2や呼吸苦が改善されるため、呼吸状態の観察も大切となる。

腹腔穿刺の合併症とその対応

1、穿刺部から腹水の漏出

穿刺後の圧迫が不十分だと、穿刺部から腹水が漏れだすことがあるため、抜去後もガーゼ汚染がないか確認を行う。

2、腸管損傷による腹膜炎

腹腔穿刺の手技により腸管を気づ付けてしまう危険性がある。
もし、腸管損傷した場合、腸内容物が腹腔内に漏れだし、腹膜炎を引き起こす恐れがあるため、穿刺後の腹痛や発熱には注意する。

3、急激な排液によるショック

腹水が多量に貯留している場合には、一度に2~3L排液することもある。
しかし、短時間で大量に排液すると、血管内から腹膜に体液が移動し、循環血液量が減少し、ショックを引き起こすことがある。
ドレナージチューブについた三方活栓で排液量を調整して一気に排液しないよう注意する。

もしショックになった場合には、すぐに排液を中止し、医師へ報告後、急速輸液や昇圧剤を開始する。

4、穿刺部周囲の皮下出血

穿刺手技で周囲の血管を損傷し、皮下血腫を生じる場合がある。
特に、肝不全の患者や抗凝固剤の内服中の患者など出血傾向を伴っている場合に生じやすいため、皮膚色の変化や腫脹がないか注意深く観察する。

5、腹腔内感染

穿刺時の無菌操作が不十分だと、腹腔内に細菌が侵入して腹腔内感染を引き起こす危険性があるため、無菌操作を徹底する。

腹腔穿刺の部位

腹腔穿刺の部位
  • a…モンロー点:臍と左前腸骨棘を結ぶ線(モンロー・リヒター線)の外側1/3の点
  • b…マックバーニー点:モンロー点の反対側
  • c・d…左右の肋骨弓下
  • e…臍から2.5~5㎝下

a・bは、最も血管損傷が少ない部位で、穿刺しやすい。
c・dは、超音波で部位を確認してから穿刺することが多い。

腹腔穿刺の手順と手技

必要物品

  • 滅菌手袋、滅菌ガウン、マスク、帽子
  • 消毒液、綿球、シャーレ、攝子
  • 1%キシロカイン、注射器10ml、23G針
  • 穿刺針(14~18G:医師の指示を確認)、注射器20ml、三方活栓、エクステンションチューブ、またはこれらがセットになったアスピレーションキット
  • 穴あき覆布、処置用シーツ
  • 検体容器
  • 排液容器
  • 固定テープ、フィルム材
  • エコー、油性マジック(エコー用滅菌カバー)

腹腔穿刺の準備

  1. 患者に検査の目的、方法、注意点を説明し、同意をもらう。
  2. 施行前に排尿を済ませてもらう。
  3. 患者の体位を整える。
    原則仰臥位だが、呼吸苦を伴う場合や、穿刺部位によっては座位や半坐位、側臥位で行うこともあるため、医師の指示に従い調整する。
  4. 穿刺部位を露出させ、衣類や寝具や汚染されないよう処置用シーツを敷いておく。この時、不要な露出は避ける。
  5. バイタルサインのチェックを行い、できれば検査中もモニタリングできるようにしておく。
  6. 手指衛生を済ませ、清潔エリアに必要物品を準備する。

腹腔穿刺の手技

  1. Dr:エコーで穿刺部位を選定し、油性マジックで目印をつける。
  2. Dr:皮膚消毒を行う。
  3. Dr:ガウンを装着し、清潔エリアを確保する。
    Ns:ガウン装着時はガウンテクニックを行う。
    Ns:無菌操作で穴あき覆布を渡す。
  4. Dr:局所麻酔を行う。
    Ns:注射器を無菌操作で渡し、キシロカインを医師が吸いやすいよう、斜め下向きに持ちかまえる。吸い終わったら、麻酔用の23G針を無菌操作で渡す。
  5. Dr:穿刺する。
    腹水流出を確認したら、針をテープやフィルム材で針を固定し、 エクステンションチューブ、三方活栓を接続する。
    穿刺針を長期留置する場合には、自己抜去を防ぐため、穿刺部と皮膚を縫合糸で固定する。
  6. Ns:指示があれば、検体容器に腹水を採取する。
  7. Ns:排液容器にエクステンションチューブを垂らし、テープで固定する。
    このとき、エクステンションチューブの先端が排液容器について不潔にならないよう注意する。
  8. Ns:医師に排液量と排液時間を確認し、排液速度を三方活栓で調整する。
    排液の性状を観察する。
  9. Ns:定期的に患者の状態観察とバイタルサイン測定を行う。
  10. Dr:抜針する。
    抜針部を消毒し、軟膏を塗った滅菌ガーゼで保護し固定し、腹帯をしめる。
  11. Ns:患者の衣類を整え、周囲の環境を整える。

抜針しないで留置しておく場合には、エクステンションチューブや三方活栓が皮膚を圧迫しないようにガーゼ保護して、邪魔にならないよう固定しておく。

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