褥瘡ケアに使用する外用薬の効果

目次

褥瘡ケアで用いる外用薬【早見表】

スクロールできます
基剤
分類
保護抗炎症殺菌壊死組織
除去
肉芽
形成
ワセリン油脂性
亜鉛華軟膏油脂性
アズノール油脂性
オルセノン軟膏水中油型
プロスタンディン油脂性
フィブラストスプレー
アクトシン軟膏水溶性
ブロメライン水溶性
ゲーベンクリーム水中油型
カデックス軟膏水溶性
ユーパスタ軟膏水溶性
褥瘡に用いられる軟膏の効果一覧

◎…効果が高い
〇…効果あり
△…効果は少し

基剤の種類と特徴

油脂性基剤

ワセリンを代表するように、油分だけでできているため、水をはじく。そのため浸出液は吸収しないが、適度な浸出液量であれば、創面に留めておくことで、上皮化を促進することができる。

水溶性基剤

吸水力があり、浸出液を吸収するため、浸出液が多い層に用いられる。

乳剤性基剤【水中油型(O/W型)】

読み方:すいちゅうゆがた
その名の通り、水分の中に油も含む薬で、「水>油」のイメージ。
乾燥した創に対し、水分を補給する。適度な湿潤環境を作ることで、肉芽形成を促進させることができる。

乳剤性基剤【油中水型(W/O型)】

読み方:ゆちゅうすいがた
これまた名の通りで、油の中に水分を含む薬で、「油>水」のイメージ。油が多いので、油脂性基剤と同等の保湿力・保護作用がある。補水作用はわずか。(ここでは紹介していないが、リフラップやソルコセチル軟膏)

乳剤性基剤は水と油を合わせた(=乳化した)薬。
水中油型(O/W型)は『Oil in water』の略で、食べ物でいうと牛乳やマヨネーズと同じ組成。
確かにあのゲーベンの滑らかさはマヨネーズに似ているかも!?
ちなみに、油中水型(W/O型)は『Water in oil』の略で、食べ物でいうとバターやマーガリンと同じ組成。

創面を保護する軟膏

ワセリン

ワセリンのイラスト

【特徴・効果】
油脂性基剤。水をはじき、創面を保護することで早期の回復効果が望める。添加物が少なく低刺激。

【適応】
急性期褥瘡(発生確認から1~3週間程度)。発赤・紫斑・浮腫・水泡・びらん・浅い潰瘍の状態で浸出液がないまだ浅い創部に使用する。

【使用方法】
1日1回~数回幹部に塗布または貼付する。

【注意点】
特になし。

亜鉛華軟膏

亜鉛華軟膏イラスト

【特徴・効果】
油脂性基剤。水をはじき、創面の保護作用があるが、少しだけ浸出液も吸収する。
酸化亜鉛の効果により、軽い血管収縮・抗炎症作用がある。これにより、皮膚の回復効果が望める。

【適応】
表皮剥離程度の浅い褥瘡(びらん)。

オムツかぶれで、びらんが発生した場合によく使用される。

【使用方法】
症状に応じて1日1回~数回患部に塗布する。

【注意点】
落ちにくいため、オイルや洗浄剤を使用し落す。

アズノール軟膏

アズノールイラスト

【特徴・効果】
油脂性基剤。水をはじき、創面の保護作用がある。軽い血管収縮作用、抗炎症作用もある。

【適応】
表皮剥離程度の浅い褥瘡(びらん)。

【使用方法】
症状に応じて1日1回~数回患部に塗布する。表面がテカテカするくらいたっぷり塗る。

【注意点】
2回目以降の使用時、接触皮膚炎を起こす可能性がある。

安全なイメージがあるが、「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」によると、アズノールの主成分であるアズレンや基剤として使われるラノリンは、どちらもかぶれの原因になりうる医薬品として報告されている。

肉芽形成を促す軟膏

オルセノン軟膏【2023.4月~出荷停止中】

オルセノン軟膏イラスト

【特徴・効果】
乳剤性基剤(水中油型)で補水作用をもつ。
血管新生作用により肉芽形成作用が強力。落としやすく、塗りやすくよく使用されていたが、現在出荷停止中らしい。

【適応】
肉芽形成される赤色期~白色期の褥瘡。潰瘍創。浸出液は少ない創に用いる。

【使用方法】
潰瘍面を洗浄後、1日1~2回ガーゼなどにのばして貼付。あたは患部に直接塗布。

【注意点】
副作用として、発赤・紅斑・かゆみ・疼痛・刺激感・出血・感染が報告されている。

プロスタンディン軟膏

プロスタンディン軟膏イラスト

【特徴・効果】
油脂性基剤であり、保護・保湿作用あり。
プロスタグランディンが血流を促進し、肉芽形成・上皮化を促進する。

【適応】
肉芽形成される赤色期~白色期の褥瘡。潰瘍創。浸出液は少量~適量の創。

【使用方法】
1日2回をガーゼなどにのばし貼付するか、潰瘍部に直接塗布する。

【注意点】
1日10gを超えると大量投与になるため注意する。局所刺激作用や出血を通内ことがある。
出血している患者には注意する。

フィブラストスプレー

フィブラストスプレー250イラスト

【特徴・効果】
繊維芽細胞増殖因子をスプレーで噴霧する。最も強い肉芽形成・表皮形成促進作用がある。しかし高価。

【適応】
肉芽形成される赤色期~白色期の褥瘡。潰瘍創。

【使用方法】
1日1回、潰瘍の最大径が6cm以内の場合は、潰瘍面から約5cm離して5プッシュ。潰瘍の最大径が6cmを超える場合は、最初のスプレー面にできるだけ重ならないように同様の操作を繰り返す。
スプレー後は、薬をなじませるために必ず30秒程待ってからガーゼ等を貼る!
また、フィブラストスプレーは湿潤環境は作れないため、軟膏やドレッシング材を使用し、湿潤環境を保つ。

【注意点】
10℃以下の冷所保存で保存期間は2週間。

フィブラストスプレーがどれくらい高価なの?
フィブラストスプレー500は、7820.6円/瓶。ということは、保険適応(3割負担)で2346.18円。保存期間が2週間以内なので1ヶ月2瓶必要で、1ヶ月約5000円…。ビックリする程ではないが確かにお高い。ちなみにプロスタンディン30g1本は3割負担で468円でした。

アクトシン軟膏

アクトシン軟膏イラスト

【特徴・効果】
肉芽形成・上皮化促進作用がある。浸出液の吸水効果が高い

【適応】
肉芽形成される赤色期~白色期の褥瘡。潰瘍創。または表皮剥離程度の浅い褥瘡。
特に浸出液が多い創に使われる。

【使用方法】
1日1~2回をガーゼなどにのばし貼付するか、潰瘍部に直接塗布する。

【注意点】
皮膚疼痛を起こすことがある。

壊死組織を溶かす軟膏

ブロメライン

ブロメライン軟膏イラスト

【特徴・効果】
パイナップルからつくられる蛋白質分解酵素により、壊死組織を融解する。

【適応】
柔らかい壊死組織のある黄色期。浸出液が多い創に用いられる。

【使用方法】
ガーゼ・リントなどに適当の軟膏をのばし、潰瘍辺縁になるべく触れないようにして塗布。1日1回交換する。創傷面が正常化し、新生肉芽再生がみとめられた場合には中止する。

【注意点】周囲の正常皮膚へ刺激性があるため、創周囲の皮膚へ付着しないよう注意。周囲の皮膚をワセリンで保護するのも有効。

ゲーベンクリーム

ゲーベンクリームイラスト

【特徴・効果】
銀による抗菌作用あり。水分60%を含み、補水性があるため、乾燥した壊死組織を湿潤させ、剝がれやすくする(デブリしやすくする)効果がある。また、適度な湿潤効果により、肉芽形成効果もある。

【適応】
黒色壊死組織に覆われた黒色期。炎症・浸出液の少ない創。

柔らかいクリームで留まりにくいため、ポケットには適さないが、その他の創部には使いやすい。また、ゲンタマイシンに比べ、耐性菌も生じにくく、長期使用もしやすい。

【使用方法】
1日1回、ガーゼなどにのばし貼付するか、直接塗布する。十分な厚さ(2~3㎜)でたっぶりと塗布する。

【注意点】
浸出液が多い創は、浮腫を起こす可能性があり、適さない。

感染・浸出液を制御する軟膏

感染・浸出液を制御することで、結果的に皮膚の再生を促す効果がある!

カデックス軟膏

カデックス軟膏イラスト

【特徴・効果】
ヨウ素による殺菌作用をもつ。また、高分子吸水ポリマーが使用されており、それほど強くはないが、吸水作用をもち、浸出液や膿を吸収し、患部を清浄化する。それにより、皮膚の再生を促す。

【適応】
柔らかい壊死組織に覆われた黄色期。浸出液が少なくなってきた頃に使用されることが多い。

【使用方法】
患部に3㎜の厚さに塗布する。浸出液の量によって1日1~2回交換する。

【注意点】
ヨードアレルギーは禁忌。ポリマービーズは感染源になりうるため、残さないよう洗浄する。

ユーパスタ軟膏

ユーパスタ軟膏イラスト

【特徴・効果】
ポピドンヨードによる殺菌作用をもつ。マクロゴール、白糖により強い吸水作用がある。
浮腫を抑えることで、肉芽形成作用ももつ。

【適応】
柔らかい壊死組織に覆われた黄色期浸出液が多い創に使われる。

【使用方法】
ガーゼにのばすか、直接創面に塗布する。浸出液の量によって1日1~2回交換する。

【注意点】
ヨードアレルギーは禁忌。創を乾燥させすぎることがある。

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