脳梗塞とは?
脳の一部の血液供給が、一時的あるいは永久的に減少・消失することにより、神経細胞の不可逆な変化(細胞壊死)をきたした状態。
原因や病態により、アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞、心原性脳血栓症の3つに分類され考えられる。
1、アテローム血栓性脳梗塞
動脈硬化などで血管内に発生したアテローム(脂肪のかたまり)により、脳の動脈が狭窄or閉塞し、脳実質の壊死を起こした病態。
原因と危険因子
- 年齢:加齢により発症リスクが高まる
- 性別:男性のほうがリスクが高い
- 高血圧:最大の原因であり、高いほどリスクが高い
- 糖尿病:高血圧との合併によりさらにリスクが高まる
- 脂質異常:LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)の上昇によるリスク上昇
- 肥満:危険因子と考えられている。
- 喫煙:脳血流の減少、血液凝固亢進、血栓形成促進などを要因として関係しているといわれている。
- 飲酒:アルコール多飲は、血栓の誘発・高血圧の増悪・脳血流の減少をきたすことから、リスクがあるとされている。
アテローム血栓性脳梗塞の好発部位
内頚動脈の起始部や中大脳動脈をはじめとする主幹動脈に多く発生する。
比較的太い血管が閉塞するため、病変が広範囲に及ぶことがある。
主幹動脈とは、脳を血流する複数の太い血管の総称で、下図の動脈が含まれる。
症状
脳虚血発作(TIA)
40%の高率で、TIAの前駆症状を伴う。
片麻痺・失語・視野異常
数時間~数日かけて徐々に症状が進行するため、周囲から血流を得る側副血行路の発達により梗塞範囲が比較的狭くなり、症状が軽い場合も多い。
しかし、アテロームから血栓形成された場合は、急速に症状が進行する。
意識障害、頭蓋内圧亢進症状
重症例では脳浮腫が進行し、脳ヘルニアを起こす場合もある。
2、心原性脳血栓症
さまざまな基礎疾患により、心臓(左房・左室)で作られた血栓が、脳動脈に流れてきて血管を詰まらせ発症する。
原因
- 心房細動(Af)
→心原性脳梗塞の8割の原因。 - リウマチ性心疾患
- 心筋梗塞
→心臓の不規則な運動により血流が停滞し、血栓がつくられやすい。
心原性脳血栓症の好発部位
特に好発部位はないが、比較的太い血管に血栓がつまるため、広範囲に脳細胞の壊死が起こり症状が重くなりやすい。
画像所見としては、皮質や脳深部で梗塞が認められることが多い。
症状
- 重度の片麻痺、失語、視野欠損
比較的太い動脈の閉塞が急激に起こるため、症状の出現や進行も急激。 - 脳浮腫・意識障害
広範囲の脳梗塞では、脳の血流障害により高度の脳浮腫が出現し、重症化しやすい。 - 脳出血
血栓による血流再開の場合、壊死部分の血管に急激に負荷がかかり、破城することで、脳出血を起こす危険性がある。
3、ラクナ梗塞
小さい脳梗塞のことで、400μm(0.4mm)以下の細い脳動脈の閉塞によるものをいい、『直径15mm以下の梗塞』と定義されている。
原因
血管変性や動脈硬化により、毛細血管がさらに細くなり起こる。
そのため、アテローム血栓性脳梗塞と同様の危険因子が上げられる。
ラクナ梗塞の好発部位
ラクナ梗塞とは、穿通枝(せんつうし、穿通動脈とも言う)が詰まることで発生する脳梗塞。穿通枝とは、主幹動脈から枝分かれする細い血管で、脳の深くを血流している。
つまり、穿通枝が栄養する領域である、大脳基底核・視床・脳幹などで脳梗塞が起こる。
症状
小さいため症状が現れない場合も多く(無症候性脳梗塞)、現れても神経症状は軽く、意識障害や大脳皮質症状を伴うことはない。
しかし、何度もラクナ梗塞を繰り返すことで、多発性脳梗塞を起こし、片麻痺や認知症を発症することがある。
脳梗塞の診断
CT
梗塞部位は黒く見える。
発症後5~6時間以内の脳梗塞はCTに現れないので注意。
MRI
数分から、梗塞部位が白い病巣として現れる。
MRA
血管だけを画像にする方法。微細血管は評価困難。
MRIと検査方法は同じで、撮影後して検査室がMRA画像を作ってくれる。