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硬膜外鎮痛法(エピ)の観察と看護

硬膜外鎮痛法(エピ)とは?

エピ(epi)は、Epidural analgesiaの略で「硬膜外鎮痛法」のこと。

硬膜外カテーテルから麻酔薬やオピオイドなどの鎮痛剤を持続投与し、末梢神経からの刺激伝達を遮断することで、痛みを緩和する鎮痛法。

主に術後の疼痛管理として用いられる。

硬膜外カテーテルの留置部位

エピの挿入部位

硬膜外カテーテルは、脊髄を囲む硬膜の外側にある硬膜外腔に留置される。

挿入時は、まずは穿刺針を椎間から黄色靱帯を超えて、厚み5㎜程の硬膜外腔まで到達させる。そして、針穴から直径1㎜の細いカテーテルを通し、先端3~5㎝を硬膜外腔に留置する。

体外に出たカテーテルは、背中でテープ固定され、先端を肩口から出し、PCAなど専用の注入器につなげられる。

硬膜外カテーテルは、背中から挿入されているイメージが強いが、実は頸椎から腰椎までの挿入可能で、手術部位によって穿刺部位は決定する(下の表参照)。

手術部位と穿刺部位
穿刺部位 麻酔の広がり
胸部 Th5~6 Th1~Th10
上腹部
(胃・胆のうなど)
Th7~9 Th4~Th12
下腹部
(大腸・婦人科領域)
Th12~L1 Th6~L3
鼠経
(ヘルニアなど)
L1~L2 Th10~S5
下肢
(骨折など)
L4~L5 L1~S5

『脊髄神経の働きと構造』を詳しく見る

硬膜外腔は、スポンジ状の軟部組織なので、麻酔薬が上にも下にも同じように広がっていく!
クモ膜下麻酔(いわゆる下半身麻酔)は、脊髄がない第2腰椎(L2)以下からしか穿刺できない。

硬膜外カテーテル挿入の手順

  1. 側臥位(主に右側臥位)で膝を曲げヘソをのぞくように背中を丸める
    エピの挿入
  2. 麻酔科医が背中を触診し、穿刺部位にマーキング
  3. 滅菌手袋を装着
  4. 消毒し、覆布をかける
  5. まずは局所麻酔をする
    ※これは痛い
  6. 穿刺針を目的の硬膜外腔まで刺す
    ※痛みはないが、グっとおされる感じ
  7. 硬膜外腔に入ると、シリンジ内のエアーや生理食塩水がすっと抵抗なく入っていく。
  8. 針からカテーテルを通す
    硬膜外口腔に3~5㎝、皮下に3~6㎝、計8~10㎝が挿入されるとOK!
  9. 穿刺針を抜去
  10. カテーテルから血液や髄液が流出しないか確認
  11. カテーテルを棘突起や肩甲骨を避け、背中でテープ固定する
  12. 終了

硬膜外鎮痛法(エピ)が対象となる手術

エピは、安静時だけではなく、体動時の疼痛が特に強い

で使用されることが多い。

硬膜外鎮痛法(エピ)のメリット

ターゲットを絞って鎮痛効果を発揮できる

硬膜外麻酔は、脊髄やその周辺の神経組織に浸透することで、脊髄神経の分節に応じた鎮痛作用をもたらすことができる。
つまり、胸だけ、腹だけというふうに、範囲を限定して麻酔を効かせることができる。

オピオイドも局所投与できるので、オピオイドの副作用である呼吸抑制や消化管運動の抑制が少なく、術後回復が早い。

術後も持続的に鎮痛効果を得られる

硬膜外カテーテルが入っていれば、持続的に鎮痛剤や麻酔薬を注入することで薬の作用時間に依存することなく鎮痛効果が得られる。

体動時の痛みに対する鎮痛効果に優れている

安静時の痛みのみならず、体動時の鎮痛効果が優れている。

硬膜外カテーテル留置中の合併症

くも膜下腔への迷入

硬膜外カテーテルのクマ膜下への迷入

穿刺で傷ついたり、薬剤注入の刺激でカテーテルが硬膜を貫きクモ膜下腔に迷入すると、脊髄神経が広範囲に麻痺(全脊髄くも膜下麻酔)し、血圧低下や徐脈、呼吸困難をきたし、重篤な場合は呼吸停止する。

硬膜化麻酔では、クモ膜下麻酔の約10倍麻酔薬を投与する!

血圧低下や徐脈に対しては、アトロピン硫酸塩の静注、カテコールアミン(ドパミン、ドブタミンなど)の持続投与が行われる。

呼吸不全から、意識障害や全身の筋弛緩を起こた場合には、直ちに気管挿管や人工呼吸器管理を行う。

硬膜穿刺後頭痛

硬膜に傷が付いた場合、クモ膜下腔から脳脊髄液が漏出することで脳脊髄圧が低下し頭痛がおきることがある。
通常、安静臥床と輸液にて軽快するが、改善されない場合には、自己血を硬膜外に注入することで穴を塞ぐ自己血パッチ療法(ブラッドパッチ)を行うことがある。

局所麻酔薬中毒

局所麻酔薬が投与過剰であったり、血管内に誤注入することで発生する。
「中枢神経症状」として、めまいや耳鳴り、舌~口周囲のしびれなどの症状が起こる。

重症例では循環虚脱を生じ、意識消失、痙攣が生じたり、さらに濃度が上昇すると、昏睡、呼吸停止、不整脈(A-Vブロック、VT、VF)、心停止が生じるため、早期発見と早期対応が重要となる。

カテーテルの切断

患者の体動や、椎体間の硬い組織(骨など)によりカテーテルが圧迫・絞扼すると、体内でカテーテルが切断することがある。

もし切断した場合には、鎮痛効果がなくなり、刺入部から薬液が漏れ出ることがあるため、適宜、刺入部や鎮痛効果を確認する。

カテーテル抜去困難

カテーテルは通常簡単に抜去可能だが、棘突起による圧迫や結節形成により抜去困難となることがある。
そのようなときは、挿入時の体勢(エビのように背中を丸め、ヘソを見るような姿勢)を取り抜去する。

カテーテル抜去時の切断・残存

抜きにくい場合に無理に引き抜こうとすると途中で切れて体内に残ってしまうことがある。
この場合、カテーテルを取り除く手術が必要となるため、抜去後は、カテーテルの先端に損傷がないか確認する。

尿閉・排尿困難

局所麻酔や骨盤神経と陰部神経の麻痺により、尿閉を起こすことがあるため、膀胱カテーテルを留置して対応する。

硬膜外血種

穿刺針やカテーテルで血管が傷つき、自然に止血されないときには、硬膜外血種を起こすことがある。

下肢の知覚障害(痺れ・知覚鈍麻)や運動障害、背部痛などを訴える場合には、医師に相談しCT・MRIなどの検査を実施する。脊髄圧迫の所見がある場合には、手術で血種を除去する。

硬膜外腔感染・硬膜外膿瘍

穿刺針の汚染やカテーテル汚染により細菌感染を生じることがある。

発熱、局所の圧痛、知覚・運動神経麻痺、背部痛などの症状はカテーテル感染の可能性がある。重症化した場合には髄膜炎などを招くため、感染を疑ったら医師に速やかに報告。抗菌剤で治療を行う。

長期留置(5日以上)、糖尿病、じん不全、悪性腫瘍、肝硬変、低栄養、ステロイド、抗がん剤などで感染のリスクは高いまる。

硬膜外血種や膿瘍は、数千~数万例に1例と非常にマレだが、場合によっては、知覚・運動障害が非可逆的となる。

知覚・運動障害

硬膜外麻酔は神経のそばを穿刺し、麻酔薬を注入するため、神経損傷や局所麻酔の毒性などにより知覚障害や運動障害が生じる場合がある。

薬を減量・中止すれば、たいていの場合症状は消失するが、それでも消失しない場合は、血腫や感染の可能性を考える。

硬膜外鎮痛法(エピ)の観察と管理

カテーテル刺入部の観察

感染兆候の有無
カテーテル刺入部や周辺に発赤・痛み・熱感・腫れ・出血などの感染兆候がないか確認する。
固定テープの状態
背中のテープは体動や発汗で剥がれやすいので、剥がれはないか確認する。
また、ドレッシング材の汚染は感染の原因となりうるため、汚染があるようなら交換する。
挿入の長さ
カテーテルが抜けてきていないか挿入の長さをする。

PCAポンプ・接続の確認

接続部にゆるみはないか
PCAポンプの各接続にゆるみはないか、薬剤の漏れはないか確認する。
三活が開通になっているか
OFFになっていれば、患者に薬剤が流れない。
PCA装置に破損がないか
破損防止のため、気泡緩衝材の袋に入れ、キャリングバックに収納しておく。
ベッドから落下しないように、安定した場所に置いておく。
薬剤の残量が正しいか
PCAポンプの計算上の残量と実際の残量が合っているか確認する。
そのため、患者に何度ボーラス投与したのか確認する。

自覚症状・バイタルサインの観察

バイタルサイン
意識障害や呼吸障害、血圧低下、徐脈、尿量減少は、全脊髄クモ膜下麻酔の可能性がある。
発熱・背部痛・刺入部周囲の圧痛の有無
合併症のひとつである硬膜外膿瘍でみられる症状の有無を確認する
下肢の運動障害や知覚障害
硬膜外血腫として下肢の運動障害や痺れがみられるため、症状の有無を観察する。
鎮痛の程度
エピ使用中も患者の疼痛の訴えが強い場合、薬剤が適切に投与できていないことも考えられる。薬剤の残量やカテーテルの破損や屈曲、接続部からの漏れなどがないか確認する。

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