肺炎とは?
何らかの微生物(細菌やウイルス)が感染することで起こる、肺実質(肺胞上皮・肺胞腔)の炎症のこと。
肺炎の病態生理
肺炎の原因となる微生物は、主に気道から侵入する。
通常は、咳反射、粘膜繊毛輸送系、肺胞のマクロファージが微生物の侵入を防ぐため働くのだが、この防御反応では処理しきれなかったときに、肺に感染・炎症を起こし発症する。
肺炎の分類
病原微生物による分類
細菌性肺炎
一般的な細菌が感染して起こる肺炎。
肺炎球菌・インフルエンザ菌・黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌など。
非定型肺炎
一般的な細菌以外が感染して起こる肺炎
マイコプラズマ肺炎・クラミジア肺炎・レジオネラ肺炎・ウイルス性肺炎(インフルエンザウイルス・RSウイルス…)など
発症場所による分類
市中肺炎(CAP)
院外で発症した肺炎(入院後48時間以内の発症も含む)。
CAPの原因微生物となるのは、肺炎球菌やインフルエンザ菌、マイコプラズマ、クラミジアなど。
院内肺炎(HAP)
院内で発症した肺炎(入院後48時間以降の発症から)。
HAPの原因微生物となるのは、黄色ブドウ球菌や緑膿菌、肺炎球菌、クレブシエラ、真菌など。
医療・介護関連肺炎(NHCAP)
介護や医療ケアを受けている患者が発症した肺炎。
在宅介護や介護施設に入所している高齢者は、CAPのように誤嚥性肺炎を中心とした肺炎や、HAPのように医療ケアによって生じた耐性菌による肺炎をが混在していることが多い。そのため、適切な治療を行うために、NHCAPという日本オリジナルの区分が2011年新たに加わった。
炎症部位による分類
肺胞性肺炎
肺実質に炎症を起こしたもので、一般的な肺炎はすべてこれに当たる。
肺胞性肺炎は、気管支から炎症が広がることで、炎症が散らばって見える気管支肺炎と、肺葉1つ以上を占める大葉性肺炎(だいようせいはいえん)に分けられる。
間質性肺炎
肺間質(肺胞間の結合組織)に炎症を起こしたもの。
※ページTOPのイラスト参照
肺炎の一般的な症状
自覚症状
- 発熱
- 咳嗽
- 喀痰…炎症により気道内分泌物が増加
- 呼吸困難
- 胸痛…胸膜に炎症が及んだ時
- 発熱に伴う倦怠感、悪寒、食欲不振、関節痛など
臨床所見
- 呼吸数・脈拍の上昇
- SpO2の低下
- 呼吸音の異常(断続性ラ音の聴取)
→呼吸音の聴取を詳しく見る - 炎症データ(CRP、白血球・好中球)の上昇
- 肺の湿潤影
肺炎の検査
細菌学的検査
肺炎は、適切な抗菌薬を選択して治療するために、喀痰検査(グラム染色・培養)・血液培養・尿検査を行い、病原微生物を特定することが重要となる。
血液検査
肺炎による炎症反応や全身状態を評価する。治療前の検査値を把握することで、治療への反応も評価することができる。
必要に応じて、抗体検査(マイコプラズマ、オーム病、クラミジア、ニューモニエ、インフルエンザ、レジオネラなど)を行い、抗菌薬の選択を行う。
動脈血ガス分析
呼吸不全の状態、呼吸性(代謝性)アシドーシスorアルカローシスの評価、酸素投与の要否、酸素投与後の評価のため、血ガスを測定する。
画像検査
胸部X線検査は、肺炎の診断に必須の検査であり、病巣の部位だけでなく、胸水やリンパ節腫脹を評価することができる。
胸部CT検査は、より画像の精度が上がるので、胸部X線では診断が難しい間質性肺炎の診断や他の疾患との鑑別に有効。
肺炎の治療
安静、補液
安静を保ち、全身状態や経口摂取の状況に応じて、補液を行い、脱水や電解質バランスの補正を行う。
発熱に対しては、保温やクーリング、必要に応じて解熱剤を使用する。
気道の清浄化
肺炎は、気道内分泌物の増加により喀痰が増加するので、自己喀痰を促したり、ネブライザーや体位ドレナージ、気管内吸引などのケアを行いながら、気道の清浄化を図る。
抗生剤の投与
血液培養や尿検査で原因菌がわかれば、それに合った抗生剤が選択される。
わからない場合は、予測しながら抗生剤を投与し、その人に合った抗生剤なのか症状や血液データで確認しながら模索しながら投与していく。
酸素療法
酸素飽和度や動脈血ガス値から、呼吸状態を評価し、呼吸不全を認める場合には、鼻カニューレ・マスク・リザーバーマスクなどを用いて酸素投与を行う。
病状にっては、人工呼吸器を使用することもある。
呼吸不全って?
呼吸不全は、血液ガス分圧(PaO2やPaCO2)が異常で、生体が正常に働くことができなくなった状態。数値的には、PaO2が60Torr以下となった場合を言う。