気胸

目次

気胸とは?

肺から漏れた空気が胸腔(胸膜腔)に貯留することで、肺が圧迫されて虚脱した状態。

肺虚脱とは?
肺がつぶれて空気が入らなくなった状態こと。

気胸の病態

自然気胸

1、気腫性嚢胞(ブラ・ブレブ)の形成

気腫性嚢胞とは、肺胞の炎症などで、肺胞壁が破壊されて、肺胞同士がくっついて膨張したもの。そのうち、ブラは、肺組織内で形成されたもので、ブレブは臓側胸膜の間または直下にできたものを言う。
しかし、実際には、X線上での鑑別も難しいため、どちらも『ブラ』と言っている。


気腫性嚢胞(ブラ・ブレブ)の形成イメージ図

2、ブラ・ブレブの破裂により、肺虚脱

ブラ・ブレブが肺胞内圧に耐えられなくなると、運動や外傷に関係なく自然にある日突然破裂する(だから自然気胸という)。肺内の空気が胸腔(胸膜腔)に漏れだすと、空気で肺が圧迫されて肺が虚脱するため、呼吸や胸痛などが出現する。

気胸の病態生理、ブラ・ブレブの破裂により、肺虚脱したイメージ図

自然気胸は若い痩せ型・長身の男性に多くみられる。
理由としては、急な成長に伴い肺も引き伸ばされて破れやすくなるため。

外傷性気胸

外傷(胸部打撲、圧迫、骨折、医療行為など)により、肺または胸膜が損傷し、肺の空気が胸腔(胸膜腔)に漏れ出た状態。自然気胸と同じく、空気により圧迫により、肺が虚脱する。

また、刺傷や爆傷などにより、胸壁に開放創ができると、外気と胸腔が交通し、胸腔内に空気がたまり肺が虚脱する開放性気胸がある。

気胸の症状

自覚症状

  • 胸痛
  • 呼吸困難
  • 咳嗽

身体所見

  • 皮下気腫
  • 呼吸音減弱・消失
  • 打診による鼓音
  • SpO2の低下

気胸の検査

胸部X線やCT検査で、肺の虚脱や空気の漏れ、縦隔偏位を認める。

縦隔偏位とは?
まず、縦隔とは肺、胸椎、胸骨にかこまれたトコロで、左右の肺の間の部分のこと。気胸で空気が漏れて胸腔内に空気が溜まっていくと、縦隔は圧迫されて、どんどん健側側に移動していく。この縦隔が正常な位置から健側にズレた状態のことを縦隔偏位と言う。

気胸の重症度

X線やCT検査で、気胸の診断がつくのとともに、重症度を判定することが出来る。

軽度肺尖が鎖骨の上にある状態
項目軽度と高度の中間
項目肺が全虚脱、または全虚脱に近い状態

気胸の重症度

気胸の合併症

緊張性気胸

肺または胸膜の損傷によって、一方弁が形成された結果、吸気が胸腔内へ一方的にどんどん漏出し、胸腔内圧の上昇により呼吸不全を来たす。
胸腔内圧の上昇に伴い、肺が完全に虚脱し、横隔膜が下がり、縦隔偏位、静脈還流も障害され、循環不全からショックに移行する場合もある危険な状態。

緊張性気胸の病態イメージ図

血気胸

胸腔内に空気だけではなく、血液が貯留した状態。
血液が貯留する原因としては、外傷によるもののほか、肺が虚脱するときに胸膜の血管癒着部が剥離し、出血することがある。

出血による貧血や血液低下を起こす場合があり、緊急性が高い場合には緊急手術の適応となる。少量の出血であれば胸腔ドレナージにより空気や血液を排出し治療を行う。

再膨張性肺水腫

虚脱していた肺が、治療により一気に再膨張すると、肺血流が著しく増加して、血管が引きの伸ばされる。それにより、血管透過性が亢進し、肺胞へ血管成分が漏出することで、肺水腫が起こる場合がある。

通常再膨張後、1時間~数時間で発症する。
再膨張性肺水腫が発症した場合には、呼吸困難な泡沫状痰、呼吸困難やSpO2の低下がみられるため、治療開始時は、注意して観察する。

気胸の治療

保存治療

軽症の場合は、外科的処置はせずに、安静と経過観察となる。

胸腔ドレナージ

トロッカーカテーテルを胸腔内にドレーンを挿入し、低圧持続吸引器に接続して胸腔内に溜まった空気や血液を排泄する。

『胸腔ドレーン(1)目的と挿入部位』参照

胸膜癒着療法

胸腔ドレナージで改善しない場合に、胸腔内に直接、胸膜癒着薬(パシバニール)を入れて、わざと炎症させることで側壁胸膜と臓側胸膜を癒着させる方法。

炎症させるので、2~3日痛みと発熱を伴うことがある。

肺部分切除術

胸腔ドレナージなどで改善しない場合や、再発を繰り返す場合、両側気胸では病変部位(ブラ・ブレブ)の肺部分切除術が行われる。
この場合、侵襲の少ない胸腔鏡下手術(VATS:バッツ)で行うことが多い。

気胸の観察ポイント

気胸の状態や重症度を確認

気胸にも自然気胸、外傷性気胸、緊張性気胸、血気胸などさまざまな病態があり、また肺の虚脱の程度や出血の程度によっても治療方針や起こりうる合併症のリスクが異なるため、まずは患者の病態を把握する。
X線・CT検査、血液検査の確認、患者の自覚症状や呼吸状態などを把握する。

呼吸状態の観察と適切な酸素投与

患者の呼吸様式、呼吸数、SpO2値、胸郭の動き(左右差)、呼吸音、呼吸困難感など呼吸状態の観察を行い、治療による症状の変化を確認していく。
気胸の治療は、X線やリークなどを確認しながら、持続吸引器→ウォーターシール→クランプ→ドレーン抜去と段階を踏んでいくが、特にこの段階を踏んだ直後には、呼吸状態が変化しやすいため、特に注意して観察し、異常を認めれば、すぐに医師へ報告する。
気胸により換気障害を伴い、酸素投与している場合も多いので、酸素投与している場合には適切な方法で適切な量投与できているか呼吸状態と合わせて適宜確認する。

疼痛コントロール

気胸による痛みやドレーンに挿入に伴い胸痛を生じることが多い。
痛みは横隔膜の運動を妨げて、換気量を低下させたり、不安・不眠といった問題も生じてくるため、適宜鎮痛剤を使用し、疼痛コントロールを図る。

合併症の出現に注意する

血気胸や再膨張性肺水腫の合併症の危険性があるため、呼吸状態を含め全身状態の変化に注意して観察する。
特に再膨張性肺水腫は治療開始後1時間~数時間で発症するため、排液量と合わせて注意深く観察する。

胸腔ドレーンの観察

看護技術ー胸腔ドレーン(2)観察ポイント
看護技術ー胸腔ドレーン(3)合併症とトラブル参照。

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