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胃がん

胃がんとは?

胃粘膜上皮から発生する悪性腫瘍。
胃壁の粘膜層~粘膜下層にとどまる悪性腫瘍を早期胃がん
胃壁の固有筋層まで達する悪性腫瘍を進行胃がんに分類される。

胃がんの原因

胃がんの危険因子

胃がんの発生機序は明らかとなっていないが、食事(高塩分)、喫煙、糖尿病、肥満は胃がんの発生に関与していると考えられている。

ヘリコバクター・ピロリ感染

胃粘膜が胃炎や萎縮を起こすと、胃の粘膜が腸の粘膜のように変性する、腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)が発生し、そこから胃がんへと移行するとされている。
この腸上皮化生が発生する原因として、ヘリコバクター・ピロリ菌(H.pylori)の長期感染が関係することが明らかになっている。
H.Pyloriは、潰瘍の原因にもなる菌で、感染に気が付くことが出来れば、内服治療で除菌することができる。

胃の解剖学的区分

胃の解剖学的区分

胃は、小彎(しょうわん)と大彎(だいわん)をそれぞれ3等分にし、ぞれぞれを結んで3つの領域に分けられる。

U:上部
M:中部
L:下部
(E:食道)
(D:十二指腸)

また、胃の全周は、前・後・小湾・大湾の4つの領域に分けられる。
検査結果や医師のカルテでは、略語で病変部位が記載されていることが多いので、ノートなどにまとめて、確認できるようにしておく!

前壁:Ant
後壁:Post
小彎側:Less
大湾側:Gre
全周:Cire

『胃・十二指腸の構造と働き』を詳しく見る

胃がんの分類

肉眼的分類

胃癌のステージ分類は、生検の結果など総合的に評価しなければいけないが、肉眼的分類は、X線検査や内視鏡などの肉眼的所見から早期に判定でる。
病期は、0型~5型の6つに分類でき、0型(表在型)は、さらに5つに分類される。

胃癌肉眼的分類

胃壁の深達度による分類

胃壁の深達度(深さ)を表すものとして、T分類という分類方法がある。
『胃がんの取り扱い規定』により、カルテ等には、これまた略語で記載される。

T1:粘膜(M)・粘膜下層(SM)にとどまるもの
T2:固有筋層(MP)・漿膜下層にとどまるもの
T3:漿膜に接しているか、腹腔に露出しているもの
T4:他臓器転移に浸潤しているもの
TX:分類不能

M・SMまでのT1だけは、早期胃がんに分類されるが、MPまで深達するT2以上はすべて進行胃がんに分類される。

胃癌の分類

ステージ分類

がんの深達度(T分類)や、リンパ節転移の数から総合的に、胃がんのステージが分類され、治療方針が決定する。
胃癌の病期は、ⅠA、IB、ⅡA、ⅡB、ⅢA、ⅢB、ⅢC、Ⅳの8つに分類される。

胃癌ステージ分類
リンパ節転移

深達度
N0
なし
N1
1~2個
N2
3~6個
N3
7個以上
T1 ⅠA ⅠB ⅡA ⅡB
T2 ⅠB ⅡA ⅡB ⅢA
T3 ⅡA ⅡB ⅢA ⅢB
T4(SE) ⅡB ⅢA ⅢB ⅢC
T4(SI) ⅢA ⅢB ⅢC ⅢC
肝・肺・腹膜
遠隔リンパ節に転移

胃がんの症状

早期胃がん

症状がないことが多く、検診で発見される場合が多い。
症状がある場合は、潰瘍に伴う心窩部痛上部不快感などの訴えが多い。

進行性胃がん

胃癌の転移経路

リンパ節転移
がんがリンパ管に湿潤すると、リンパ管を通って、遠隔の臓器へ転移する危険性がある。そのため、進行胃がんの場合、胃の周囲だけではなく、胃の後ろや膵周囲のリンパ節も切除するのが基本となる。
血行性転移
リンパと同じく、血液に乗って胃につながる臓器…例えば肝臓や肺、皮膚、脳などに転移する危険性がある。
腹膜転移
胃で発生したがんが進行すると、胃壁の外側まで浸潤し、腹腔内にがん細胞がまき散らされる。この状態は、種を巻くように多数のがんの塊が認められることが多いため、腹膜播種(ふくまくはしゅ)とも呼ばれる。
1個でも腹膜転移が発見された場合には、腹腔内にたくさんの『がんの種』があることを意味しているため、ステージⅣと診断でき、完治する可能性はほぼゼロとなる。

胃癌の治療

内視鏡的治療

EMR(内視鏡的粘膜切除術)
適応:深達度T1の中でも、粘膜(M)にとどまる2㎝以下のがんが適応。
方法:内視鏡を挿入し、生食でがんを隆起させ、ワイヤーをかけて焼却切除する。
EMR
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)
適応:粘膜(M)にとどまるがんで、EMRでは切除が難しい大きい腫瘍が適応。
方法:内視鏡を挿入し、EMR同様に、生食などの薬液でがん隆起させ、電気メスで粘膜下層を観察しながら、腫瘍を剥離、切除する。
ESD

外科的治療

胃全摘術
がんが胃全域に及んでいる場合や、リンパ節転移が多く、幽門や噴門を残すのが不適当な場合に行われる手術で、再建方法はいろいろあるが、ルーワイ法が最も用いられる。
この時、リンパ節郭清を目的として、脾臓を同時に摘出することがある。
胃全摘術
幽門側胃切除術
がんが胃の下部・中部に限局しているもので、根治手術を目的として胃の2/3切除とリンパ節郭清を行う。
最も多く用いられる再建方法は、残った胃と十二指腸を直接つなげるビルロードⅠ法と、空腸をつなぐルーワイ法。
幽門側胃切除術
噴門側胃切除術
胃の上部に限局するがんの場合に行われる手術で、胃の1/2程度を切除する。
再建方法は、食道の残った胃を直接つなげる方法があるが、逆流性食道炎をおこしやすいため、食道と胃の間に、空腸を一部もってきて繋げる空腸間置法を行うことが多い。
噴門側胃切除術
拡大手術
胃のみならず、胃の遠くのリンパ節や膵臓、脾臓、大腸、肝臓などの広い範囲を切除する方法。
リンパ節転移が多かったり多臓器への浸潤がある場合、根治するために行われる。
姑息的手術(こそくてきしゅじゅつ)
がんの根治が不可能な場合に、症状の改善や延命目的で行われる手術のこと。
もちろん全身状態や生存期間なども考慮して、必要だと判断された時のみ行われる。
経口摂取が困難な場合や転移で腸閉塞を起こしている場合には、バイパス術が行われたり、延命に目的で、がんの減量手術(がんを出来る限り切除する手術)を行う場合がある。

化学療法

延命のための化学療法
手術適応のないステージⅣや、手術してもがんが残っている場合には、延命のために、化学療法を行う。
術後補助化学療法
根治切除が行えても、ステージⅡ~ⅢA、Bの場合、術後1年間TS-1(抗がん剤)を内服する。内服した場合には、5年生存率が70%→80%になることが明らかになっている。

胃切除後の観察と看護

術後合併症の観察

胃切除だけに限らないが、手術の侵襲により、呼吸器合併症術後出血腸閉塞縫合不全などの術後合併症を起こす危険性があるため、それぞれのリスクが高い時期は、特に注意深く観察する。

胃切除後は、膵液漏に注意する

胃切除では、術中操作により膵臓を損傷し、膵液漏を起こす危険性がある。
膵液は消化作用があるため、放置しておくと周囲の組織を融解し腹腔出血を起こすこともある。
そのため、ドレーン排液や腹部症状を観察することが重要で、ドレーン排液が白濁または、赤ワイン色に変化したり、すっぱい臭いがしてきた場合には、膵液漏を疑い、すぐに医師へ報告する。

腹腔ドレーン(2)観察ポイント参照

その後の対応としては、採血でアミラーゼの値測定、CT検査で確認を行うことが予測される。出血など起こしていなければ、適切にドレナージを行うことで、膵液漏はほとんど場合自然に治癒する。

ダンピング症状の観察

食事が開始されたとき、注意が必要な合併症。
胃切除後の10~30%でみられる合併症なので、ダンピング症状の予防と、症状の観察をしっかり行う。

早期ダンピング症状
食後30分以内に現れる、循環血液量低下による症状や消化器症状のこと。
今までは、胃・十二指腸で食べ物が徐々に薄まりながら消化吸収されていたが、胃切除後には、高張な(薄められていない濃度の高い)食べ物が、小腸に流れ込むため、高張液投与時と同じような原理で、細胞外液の腸への移動が起こる。
すると、循環血液量が減少したり、消化管ホルモンの分泌亢進、蠕動運動の亢進が起こり、多くの症状が出現する。

循環血液量低下による症状…眩暈・冷汗・倦怠感・動悸・頻脈など
消化器症状…下痢、悪心・嘔吐、腹痛、腹部膨満感など
後期ダンピング症状
食後2~3時間で出現する低血糖症状のこと。
胃切除後は、急速に小腸に食べ物が流れ込むため、糖分(炭水化物)を多く摂取した場合には、一過性に高血糖状態となり、それに伴いインスリン分泌が亢進する。インスリンがしばらく出続けている間に、低血糖になってしまい症状が出現する。

低血糖症状…脱力感、めまい、冷汗、頭痛、手指の痺れなど

ダンピング症状予防のための対応

逆流性食道炎の観察

手術で、今まで逆流を防いでいた噴門や幽門が切除されると、胃液・膵液・胆汁などの消化液が食道に逆流しやすくなる。
消化液が食道に逆流すると、炎症を起こし、胸やけ・背部痛・心窩部痛・嚥下障害などの症状が出現するため、食事摂取も困難になってしまう。

逆流性食道炎が起きた場合には、食直後はもちろん、就寝時も臥床は避ける必要があり、セミファーラー位をとるよう指導する。
内科的治療として、プロトンポンプ阻害薬やH₂ブロッカーを投与する場合があり、症状が強い場合には、逆流防止のため再手術を行う場合も稀にある。

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